34/44
次期当主格たち5
「静龍。やはり、艮宮だったな」
と虎牙から声がかかり、静は、
「そのようね。結果後手に回ってしまったけれど」
と答えた。
飛鳥の様子が気にかかって仕方がない。
「鬼脈へは行くつもりか?」
「この頃は実践が足りていないし、行く可能性はあると思っている。鬼脈を満たす土の気には、私たち碧羅の木の気が有効だと思うし」
「后直々に鬼退治か?麒鞠の次期王は随分と、自信があると見えるな」
「自信?」
「婚外交際を公言して后を自由にする。手元に置いてはおかないのだ。自分の元に必ず帰って来るという自信があるのだろう?麒鞠の次期王には、どれほどの手管があるものなのか、気になってやまない」
虎牙はすっかりからかい口調でそう言うのだが、静は、相手をする余裕がなかった。
「虎牙、誰彼構わずに吹聴するのは懸命じゃないと思うけれど。婚姻には様々な形があるものだし」と静が言うと、虎牙は口笛を吹く。
「そんな言葉が静龍から出てくるとは。婚姻の何たるかを、お前から聞くことになるとは思わなかったよ」
と言うのだった。まさか寛麒とは正式に婚姻をしていない、と言えるわけもない。
そのとき、
「静」
柔らかな声音が名前を呼び、静は反射的にそちらに視線をむけてしまう。考えるよりも先に動いてしまってから、視線の先にいる飛鳥と璃蛇の存在を認める。
「飛鳥」




