次期当主格たち2
「本題は端的だ。鬼脈が乱れ、魑魅魍魎が吐き出されてきている。根の国の封印が解かれたようだ」
麒鞠王の言葉に、場内がざわめいた。
「なんと。艮宮の根は作用していないのですか?」
と朗麒。
「艮宮の根、丑の根は失われている。坤宮と艮宮、両方の根が失われた今、両宮には一切の封印がない状態だ」
「やはりこれも、流行りの原因不明の喪失なのでしょうか」と寛麒は皮肉めかして言うのだった。坤宮や未の根の件もまだ解決されていないのだから、無理もない。
「辰の根と戌の根がありますが、そちらはどうでしょうか?」
と朗麒はちらりと静の方を一度うかがったあとで、言う。婚姻が行われた直後からの騒動だ。朗麒が静をいぶかしんでも仕方がない。静が口を開く前に、麒鞠王が、
「辰の根は邦龍殿、郭鳥殿と共に封印を行ったばかりだ。そう簡単に解けるとは思わない。戌の根に関しては、虎煌殿、晶亀殿が無事だと報告してくれている」
「左様ですか。では当面の動きとしては」
「悪鬼や魑魅魍魎を滅せよですか」
と寛麒が鷹揚な調子で言う。語る内容と調子が合っていない、と静は思った。
「その通りだ。そして、可能ならば鬼脈に入り、流れを整えなければならない」
「鬼脈に入る?」
思わず静は声を出してしまってから、しまった、と思う。
静の方へ、王を始め、寛麒や朗麒、麒鞠の親戚や、長老、兵長などの視線が一様に向いたのだ。
「すみません、とてつもないことだと思いまして」
と素直な感想を述べると、王は言う。
「その通りだ。ただ人が入ったならば、無事にはすまないだろうな」
艮宮と坤宮とをつなぐ鬼脈は、各宮から流れる気脈のうち、最も複雑な流れを取るとされている。
神獣の加護を受けていない者が入り込めばひとたまりもない。根の国へと引きずり込まれてしまうだろう。ゆえに封印されているのだ。
「では、誰がそこへ」
とまで言いかけて、静ははた、と思いとどまる。この場にいるのは、麒鞠の者たちばかりだ。
中でも王や、寛麒、朗麒は、現王や次期王格。気軽に中宮から出るのは叶わないだろう。
しかし、ただ人の入れない場所となれば、神獣の加護を受けている五家の者しかない。血族の者すべてが加護を受けるわけではないし、人数は限られている。
となれば、今ここにいる者の中で動けるのは、静に他ならないのでは?と思った。




