神獣たちの初夜7
「静の髪や皮膚からはほのかに気は感じられるが、その、内部に残っているかどうかは」
皆まで言わずに、より強く抱きしめてくる。
「もう、していないって言っているのに!」
「人か、神獣なのか」
「どちらも」
「そんなことがあるとは、にわかには信じられない。ましてや麒鞠の者は手が早いと、虎牙が言っていた」
虎牙が白露の者で、静や飛鳥とは昔馴染みの関係である。
他四家からすれば、麒鞠は特別な存在ゆえに、様々な噂話が麒鞠にはある。これまではその真偽を気にすることもなかったが、実際には玉石混交なのかもしれない、と静は思った。
「なら、確かめてみたらいいのに」
静が飛鳥の耳や横髪へ手を伸ばすと、飛鳥の身体がビクッと動くのが分かった。飛鳥は首を横に振る。
「もし、ここで重ねたら、もっと苦しくなるのは分かっているんだ。こうして逢瀬するほかないならば、いつか限界が来るに違いない」
「次期麒鞠王は、私たちの仲を認めている。ここに来るように言ったのも、寛麒自身だし」
「寛麒、と呼んでいるのか」
呼び方一つをとっても、事情を知らない飛鳥は、寛麒と静がより親密になったと感じるのだろう。飛鳥に真実を知らせないのは難しいと感じた。心眼を持つ飛鳥に偽りは無意味だ。
「あの方はそう、友人あるいは兄だと思う」
「けれど、静の夫だ」
吐き捨てるように飛鳥は言った。
「両家の腕輪交換は行われていないの。だから正式に言えば、私たちは夫婦ではない。これは寛麒の用意した偽物」
静の言葉に飛鳥は、瞠目する。静は偽物の腕輪を揺らしてみせた。
「なぜ?そんなことが許されるのか?」
「本来ならば許されないでしょうね。でも、これは真実。本物の腕輪には呪がかかっていて、私たちに襲いかかって来た。つまり、この婚礼式では、何者かの謀略があったということ」
「呪。なぜそんな。怪我はないか?」
飛鳥は静の手を取り、裏表とそして注意深く調べていく。
「大丈夫、私もそんなやわではないし。式では、つける前に隠したから」
「静がやわでないことは、重々承知している。しかし、心配なんだ」
静と飛鳥は指を重ね、手を取り合う。飛鳥の気は温かく、そしてときにとても熱い。
「ありがとう。飛鳥、私はあなたには隠しごとは出来そうにない。だから、明かすけれど。内密にして欲しいの。紗紅那の人たちにも、勿論、他の家の人たちにも」
そうして静は、飛鳥に詳しい事情を話すことにしたのだ。




