第五話 訓練後
訓練が終わって、部屋に戻る。
夕方の寮は妙に静かで、さっきまでの号令が嘘みたいだった。
「おいアルト」
ベッドに腰を下ろしたユリウスが、ニヤニヤしながら言う。
「お前ら、実はオーラの訓練したことあんだろ」
「ねぇよ、マジで。今日が初めてだ」
「ほんとか〜?」
ユリウスは疑っているというより、面白がっているだけに見える。
「それにしてもカイのオーラ、やばかったな」
「そうだな」
アルトは短く返して、息を吐く。
「……負けてらんねぇ」
ユリウスが嬉しそうに頷く。
「そういうとこ好きだわ」
「お前の“好き”軽いな」
「軽いのが俺!」
話しているうちに、ふと気づく。
「……そういえばアイゼンいないけど、どこ行った?」
ユリウスは当たり前みたいに言った。
「あいつは書庫。あそこが巣だ」
「巣って」
「頭良いとかなんとかで、書庫の出入りが自由なんだよ。教官に気に入られてる」
「まぁ……見るからにだもんな」
アルトが言うと、ユリウスが笑った。
「だろ? あいつ、絶対文字食って生きてる」
アルトが笑いながら言う
「そりゃ頭良くなるわけだ」
⸻
アルトは一度、言うか迷ってから口を開いた。
「ユリウス、頼みがある」
「ん? なんだ?」
「俺にオーラの制御、教えてくんねぇか」
ユリウスの目がぱっと光る。
「お、アルトやる気になってんな。いいぜ!」
調子がいい。
でも、こういう時のユリウスは頼りになる——気がする。
「じゃあ早速だ。オーラ出してみてくれ」
アルトは丹田を意識して、訓練場で教わった通りに息を整えた。
……が、うまくいかない。
出たと思ったら薄い。
次の瞬間には、ふっと消える。
感覚だけが残って、形にならない。
ユリウスは、さっきまでの笑い顔を引っ込めて、真面目に言った。
「訓練の時も思ったけどよ……アルト、オーラの出力が不安定だ」
「低いっていうか、勝手に途切れるっていうか……変だな」
「変、ってほどか?」
アルトは手を握ったり開いたりしながら言う。
「うまく制御できない感覚はあるけど、最初ってこんなもんじゃないのか」
「んー…」
ユリウスは顎をさすりながら、首を傾げた。
「……まぁ、俺の教え方が下手なだけかもしれねぇけど!」
「そこ自信持つなよ」
「わりぃわりぃ、けど本当にわからなくてな」
アルトは笑いそうになって、でも笑い切れなかった。
自分の中の“何か”が、うまく噛み合ってない感じがする。
「明日、教官に聞いてみるか」
ユリウスが頷く。
「それがいい。ついでに俺も聞く。俺ももっと強くなりたいし」
「お前はまず声量を——」
「それは置いとけ!」
その夜は、それで終わった。
眠る前、アルトはもう一度だけ丹田に意識を落としてみるがやはり変わらなかった。
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