第四話 オーラ
訓練場は駐屯地の端にあった。
アルトたちは訓練場で整列させられていた。訓練は戦闘型も非戦闘型も一緒に行い、男子も女子も分けない。
教官が前に出る。
「では訓練を始める。今日からの者も多いだろう」
「訓練は基礎組と元素組の二つに分けられる」
「この場に集まった者は基礎組だ」
寮に入った時期などで訓練の進度が分かれており、アルトたちは基礎訓練組に回された。
アルトがユリウスに小声で聞く。
「おいユリウス、いつから訓練やってんだ?」
「俺が寮に入ったのは一ヶ月前くらいだな。むずいぞぉー? オーラの制御は」
「なんだよオーラって」
「お前、オーラ知らねぇのか!?」
教官の声が飛ぶ。
「おいユリウス! 私語を慎め」
「なんで俺だけ……」
——オーラとは元素とは関係なく、全ての人間が持っているとされるエネルギーだ。
丹田を起点に手や足、全身に巡らせることで身体を強化できる。
教官が続ける。
「新規のものはオーラを感知することから始める」
「他の者はいつも通りオーラの制御訓練に入れ!」
「おいアルト頑張れよ!」
「おう、まかせとけ」
教官は淡々と説明を続けた。
「ではまずオーラに関してだが、身体強化だ。個人差は出るが、纏うことでパワーやスピードを上げることができる」
「オーラは丹田を起点に全身に流すのがセオリーだ」
「私がオーラを出す。まずはそれを感じろ」
教官の体から青い揺らぎのようなものが溢れ出す。
これがオーラなのだとアルトは知覚した。
「フンッ」
教官が拳を突き出した瞬間、風圧が走った。
オーラがあってこその芸当だろう。
「これがオーラだ」
「まずはあぐらをかけ。そして丹田に意識を集中し、オーラを感じろ」
「感の良い者は感じられるだろうが、普通は難しい」
「私がお前達の背中に、オーラを纏った手を当てる。そこからお前達のオーラを呼び起こす」
順番に手が当てられていく。
体の奥で何かが目を開くような感覚がした。
「これがオーラか!」
アルトは思わず声を漏らした。
僅かだが確かに、オーラを体に纏っている。
「ほぉ。自力でオーラを感じたか」
オーラを人の手助けなく感知できる者は、そう多くない。
「おぉ! やるなぁ。見ろよアイゼン!」
ユリウスが嬉しそうに叫ぶ。
そのとき、少し奥がざわついた。
「おいなんだアイツ!」
「なんだあのオーラ量……!」
「すごい……」
視線の先にいたのはノアだった。
ノアの体から、教官と同じくらいのオーラが溢れている。
(オーラを感知できるようになった人間には、オーラが“見える”。)
教官も思わず声を漏らす。
「なんと、この段階ですでに私と同じオーラ量か……」
イレギュラーだと、教官は笑ってしまった。
ユリウスが唖然とする。
「アルトに続いてノアもか!」
「あいつら凄いな! にしてもノアのオーラ量……オーラ制御始めたての俺でさえ格の違いがわかっちまう」
アイゼンが淡々と返す。
「才能というやつだ。諦めろ」
「アイゼン! お前悔しくないのか!」
「俺はお前みたいに暑苦しくないんだよ」
ユリウスとアイゼンが言い合っている間、アルトも同じことを思っていた。
ノア、お前やっぱすげーな。
でも——。
アルトはノアに声をかける。
「ノア、お前やっぱすげーな! でも俺だって負けねぇぞ!」
ノアがちらりとこちらを見る。
大げさな反応はない。けれど、目だけが少し細くなった。
ユリウスがすぐ乗ってくる。
「いいぞアルト! その調子だ! 俺も負けねぇ!」
アイゼンは肩をすくめた。
「お前はまず声量を制御しろ」
「うるせぇ!!」
教官の怒号が落ちた。
「ユリウス、貴様! 何度言えばわかる! 貴様は制御に集中しろ!」
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