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第4話:死屍累々の果てに

北摂大学のキャンパス、昼下がりの並木道。

また一人、若き特攻隊員が散ろうとしていた。

少し離れたベンチで、ヨースケはスマホをいじりながらその光景を横目で見ていた。

視線の先には、モデル体型のK-POP美女、ジウン。

そして、その前で直立不動になり、顔を真っ赤にしている男子学生。

「……言ったな」

ヨースケは小さく呟くと、手元の缶コーヒーをあおった。

心拍数は変わらない。結果は、今日の天気予報より確実にわかっているからだ。

ジウンが何かを話し、ぺこりと頭を下げる。

そして次の瞬間、彼女は満面の笑みで男子学生の肩をバンと叩き、「ほなまた後でな!」と大きく手を振って去っていった。

残されたのは、魂の抜けた男子学生だけだ。

数分後。

彼はふらふらとした足取りで、ヨースケのいるベンチまで歩いてきた。

同じサークルの後輩だ。

「……ヨースケさん」

「おう、お疲れ」

ヨースケは、まるで戦場から生還した部下を迎える古参兵のように、ベンチの隣を空けた。

後輩はドカッと座り込むなり、両手で顔を覆った。

「ジウンに、振られました……秒殺でした」

「せやろな」

「いや、振られたんはいいんです。覚悟してたし……でも、あいつおかしないですか?」

後輩は納得がいかない顔で、ジウンが消えた方向を指差した。

「振った直後に『今日の課題、見せてなー!』って、めちゃくちゃ笑顔で言うてきたんですよ? 普通、気まずくなるでしょ? 何があかんかったんやろ……もしかして、僕のことおちょくってるんですかね?」

振った相手に対して、あまりにも「通常運転」。

そのジウン特有の**「距離感のバグ」**に、後輩はプライドを傷つけられる以前に、情緒を破壊されていた。

ヨースケは静かに溜息をつくと、後輩の背中をポンと叩いた。

「お前、勘違いしてへんか」

「え?」

「ジウンはお前をおちょくってるわけでも、嫌いで振ったわけでもない。ただ『恋人判定』が出なかっただけや。あいつは友達としてのお前は好きなんよ」

ヨースケは空を見上げた。

そこには、かつて自分も通った道がある。そう、二度も。

「だからな、振られたからって気まずくなってお前が離れていったら、ジウンは普通に悲しむ。『なんで急に冷たなったん?』ってな」

「そ、そんな……殺生な……」

「ええか、よう聞け」

ヨースケは居住まいを正し、眼光鋭く後輩を見据えた。

それは、ジウンという魔性の女の隣で「親友」というポジションを死守し続ける、歴戦の猛者だけが放てるオーラだった。

「ジウンを喜ばせるにはな、振られてからが本番なんや」

「ふ、振られてからが……本番……?」

後輩が呆然と復唱する。ヨースケは力強く頷いた。

「そうだ。告白して振られる、そこまではチュートリアルや。そこで腐らず、翌日も今まで通り、いや今まで以上に『最高の友達』として接する。ジウンが一番求めてるのはそれや。それができて初めて、あいつの隣に立つ資格が得られる」

ヨースケの言葉には、血の滲むような実感がこもっていた。

彼は今まさに、その「本番」を何年も戦い抜いている最中なのだから。

「す、すげえ……。ヨースケさんがなんでいつも一緒にいられるのか、わかった気がします」

「わかったら顔を洗ってこい。明日は普通に『おはよ』って言え。それが攻略の第一歩や」

(まあ、俺もまだ攻略完了してへんけどな)

心の中でそう付け加え、ヨースケは立ち上がった。

そろそろジウンから「お腹すいた、学食行こ」というLINEが来る頃だ。

彼は「執事」の顔に戻り、愛すべき主人のもとへと歩き出した。

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