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第11話:被害者の会の決起と、鬼教官の誕生


北摂大学の学園祭、「北摂祭」の季節が近づいていた。

キャンパスが活気づく中、大学近くのカフェでは、ある秘密組織の定例会が開かれていた。

組織の名は**「フレンズ」**。

構成員は現在8名。

全員が、ハン・ジウンに告白し、そして「友達でいよう!」と明るく振られ、なおかつ彼女を憎めずに友人関係を続けている男子学生たちである。

「……というわけで、今年の学祭についてやけど」

タピオカミルクティーと台湾カステラを囲みながら、議長を務める男子学生が口を開いた。

彼は**「副会長」と呼ばれている。

なぜ副会長なのか。それは彼が、この組織で唯一「2回告白して2回散った」**という、名誉ある(?)実績を持っているからだ。

「俺たちが崇拝するジウンちゃんと、ヨースケが『K-POP双子ダンス』を披露するのは知っての通りだ。そこで提案がある。俺たちフレンズも、バックダンサーとして参加したい」

ざわつく構成員たち。

「えー、俺ダンスとか無理やって」「運動音痴やし、公開処刑になるんちゃうか?」

賛否両論、弱気な意見が飛び交う。

その時だった。

「お待たせー! 台湾カステラのプレーン、追加やでー!」

元気な泉州弁と共に、エプロン姿の店員が現れた。

この店のアルバイト店員であり、この組織の絶対的中心、ジウン本人である。

「あ、ジウンちゃん! ありがとう!」

「……で、今の話聞いてたんやけどさ」

ジウンはトレイを置くと、ニカッと太陽のような笑顔を見せた。

「それ、めっちゃええやん!!」

その一言で、会議室(カフェのテーブル席)の空気は凍りつき、そして熱狂へと変わった。

「え、マジ!? ジウンちゃんが良いなら……」

「ウチらのダンスでステージ盛り上げてくれたら、最高やわ! さすがフレンズ、わかってるなぁ!」

ジウンのキラキラした瞳に見つめられ、否定できる男などこの場にはいない。

こうして、バックダンサー計画は強制的に可決された。

ちなみに、この組織の**「終身名誉会長」**にはヨースケが任命されているが、本人は頑なに就任を固辞している。

「俺はお前らとは違う(まだ諦めてない)」というプライドと、「これ以上ジウンの被害者を増やしてはならない」という良心の間で揺れ動いているからだ。


***


翌日から、キャンパスの片隅で**「地獄のダンス特訓」**が始まった。

「ちょっ、そこ! 動きが遅い! ワンツー、ワンツー!」

「もっと腰入れて! K-POPはキレが命やで!」

ジウンはジャージ姿で仁王立ちし、竹刀(の代わりにメガホン)を持って指導する鬼教官と化していた。

彼女の要求レベルは高い。妥協は一切ない。

その横で、ヨースケは見本を見せるように、流れるような動きで踊っている。

ダンスが得意なヨースケの動きは、ジウンと完全にシンクロしており、プロのアイドルのようだ。

「はぁ、はぁ……死ぬ……」

「足が……もつれる……」

床に倒れ込む副会長たちフレンズのメンバー。

ヨースケは踊りながら、彼らに同情の視線を送った。

「お前ら、ほんま無理すんなよ……。水分ちゃんと摂れよ……」

「ヨースケ……お前、すごいな。このテンションのジウンちゃんに毎日ついていってるんか……」

「まあな。慣れとは恐ろしいもんや」

ヨースケのステップは軽やかだが、その背中には歴戦の猛者の哀愁が漂っていた。


***


一方その頃、理系の実験室。

外の喧騒とは無縁の静寂の中で、ソヨンと先輩は学祭の準備を進めていた。

「先輩、今年の化学ショーの目玉、『象の歯磨き粉(過酸化水素水の分解実験)』の配合比率、これでどうでしょう」

「うん、完璧だねソヨンさん。ヨウ化カリウムを触媒にすれば、反応速度も申し分ない。あのモコモコ泡が一気に噴き出す様は、きっと子供たちにウケるよ」

ソヨンが白衣姿でフラスコを愛おしそうに眺める。

「ふふ、楽しみです。泡の広がり方が、まるで生き物みたいで……可愛いですよね」

「ああ。君の計算通りの美しい反応だ」

二人は顔を見合わせ、穏やかに微笑み合う。

「……あの、先輩。学祭のシフトが終わったら、一緒に他の模擬店も回りませんか?」

「えっ、あ、うん! ぜひ。僕も誘おうと思ってたんだ」

ビーカーとフラスコに囲まれた空間で、静かに、しかし確実に化学反応(恋)が進行していた。

***

外からは、ジウンの怒号と、K-POPの重低音、そして男たちの悲鳴が聞こえてくる。

今年の北摂祭は、例年以上に騒がしくなりそうだった。


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