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第3話:小規模依頼Ⅱ「SNSバトルの火ぶた」

デジタルの海に火蓋を切る双子の挑戦──。

ライバル企業とのSNSバトルを通じて、彼らの“本物の技術”がどれほどの力を持つのか、今こそ世界に見せつけます。

 町角の清掃を終えたあと、ミナとレンは撮影した映像をSNSに投稿するかどうか悩んでいた。けれど、あの瞬間の感動を誰かと共有したいという思いが勝り、レンが編集を担当し、ミナが投稿文を添える形で、動画を公開した。


 ——「派手じゃないけど、私たちなりのやり方で、キレイを届けました。」


 ハッシュタグには、まだ使われていない「#地味チート掃除術」という言葉が添えられた。


 すると、わずか数日後のことだった。「ブライトブラシ社」の公式アカウントから挑戦状ともいえる投稿が行われた。


 ——「新時代のプロ掃除術を見せつけよう。#ブライトブラシチャレンジ」


 ハイテンポの音楽に乗せ、最新鋭の自動清掃機が動き回る映像。床はみるみる光を取り戻し、壁も輝きを増す。画面の隅には“1日でここまで”と大きな文字が踊り、視聴者を煽るようなナレーションが続く。


 動画は瞬く間に5万回再生を記録し、コメント欄は称賛の嵐。企業の看板としては文句なしのスタートだった。


 その一報を受け取った双子は、少しの戸惑いとともに肩を並べ、互いの目を見つめ合った。


「やっぱり、来たね……」


 ミナの声は震えていたが、そこには決意の輝きが宿っていた。


「負けないよ。私たちのやり方で、本物を見せよう」


 レンは静かに頷き、スマートフォンを取り出した。


 翌朝、双子は地元の小さな神社へ向かっていた。依頼内容は「拝殿の古びた灯籠を清掃し、補修も同時に行ってほしい」というもの。地味ながら手間のかかる仕事だ。


 カメラはまず、夜明け前の神社を捉える。薄暗い拝殿には、長年のほこりが積もり、灯籠の銀箔はくすんでいる。


 ミナは深呼吸し、小瓶を取り出す。


「洗浄魔法、発動」


 彼女の手元にかすかな光が集まり、ほこりだけを選んで舞い上がらせる。その瞬間、カメラがスローモーションに切り替わり、舞い散る灰色の粒子が一粒ずつ銀箔から離れていく光景を映し出す。


 コメント欄にはすぐに「美しい…」「なんて繊細な技術だ」など賛辞が並んだ。


 続いてレンの番。彼は灯籠の亀裂に手を当て、ゆっくりと魔力を注ぎ込む。


「補修開始」


 木と金属が融合するような光の波紋が広がり、亀裂は瞬く間に消失する。カットインで『Before/After』の比較映像が挿入され、修復前と後の差が視覚的に強調された。


 ここで画面は再びリアルタイムに戻り、二人が笑顔で会釈する様子を映す。


 ——「誰でもできると思うな。#地味チート掃除術」


 ミナのナレーションとともに、タグが打たれた。


 動画は公開後24時間で10万再生を突破し、フォロワー数は倍増。コメントやシェア数は瞬く間に膨れ上がり、地元のニュースサイトでも取り上げられるようになった。


「すごい…。私たち、ここまで届いたんだね」


 映像の終わり、レンが画面を指さしながら呟く。


「まだまだこれからだよ。もっとたくさんの人に、地味チートの魅力を広めよう」


 彼らのSNS戦略は、広告費ゼロで本物の技術を競うスタイル。見る者に“手間をかける価値”を感じさせ、かつてない反響を呼んだ。


 夜、自室でデータを整理しながら、ミナはふと思い立つ。


「次は、もっと大規模な依頼にも挑戦したい」


 レンはディスプレイに映るコメント欄を眺め、静かに微笑んだ。


「その時が来たら、また一緒に頑張ろう」


 双子の地味チート掃除術は、今まさに大きな波を起こし始めている。

動画公開から一夜明け、双子のフォロワーは飛躍的に増加しました。

派手な演出ではなく、地味な掃除術の価値を問いかけるスタンスが、多くの心を掴んでいます。

次回【第4話:サブエピソードⅠ「旅館に宿る想い」】では、老舗旅館での仕事を通じて、掃除に込められた“記憶”と“絆”を描きます。どうぞご期待ください!

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