表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/39

12話。四天王ゴルドから偉大な魔王だと認められる

 通信網によって、冒険者の集団が侵入してきたことを知った私は、すぐさま現場──オーガ族の村に急行したわ。


 ただ登場するだけでは芸が無いので、戦いの場に飛び込む際には、輝くダイヤモンドダストを身に纏った。


 お父様──大魔王ベルフェゴールの登場シーンは、迫力があって格好良かったものね。少しでもあの感じに近づける工夫ね。

 これで、美しくも強大で恐ろしい魔王を演出できる筈……さぁ、どうよ?


「魔王だと? ハッタリだ!」

「お前みたいな小娘が、魔王なものか!」

「ちょおっ!?」


 思わず、ズッコケそうになる。

 敵を薙ぎ倒し、ゴルドたちを回復魔法で救って

て見せたというのに、冒険者たちのこの反応はなんなのよ?


 う~ん、どうもこの世界の人間にとって私は、小柄で弱そうに見えるみたいね。

 そんな私が魔王を名乗っても、もしかして説得力が無い……?


「だが、相当な魔法の使い手だぞ、油断するな!」


 冒険者たちは警戒して身構える。

 それで、一応、私の面目は保たれた。

 配下たちの前でバカにされたら、魔王としての威厳が台無しよ。


「魔王様、なぜ、こちらへ?」


 ゴルドは呆然としていた。


「もちろんあなた達、オーガ族を助けに来たのよ。水晶玉通信網は、そのために用意したのだしね」

 

 魔石を狙って人間が【魔の森】に侵入してくるなんて、魔王が侮られている証拠だわ。

 きっちりお返しして、新たなる魔王であるこの私の恐怖伝説を広めるのよ。


 そうすれば、今回みたいにバカにされることは無くなる筈!

 私はぐっと拳を握りしめた。


「この通信網は、我らを御自ら救援するための物……!」 

 

 ゴルドは何やら声を震わせていた。

 

「おい、小娘! 口を閉じて一言もしゃべるな! こいつらの命が惜しいならな!」

「ま、魔王様!」


 冒険者たちは人質にしたオーガたちの喉元に、短剣を突きつけた。オーガたちは悲痛な声を上げる。


 ふん。しゃべるなですって……


 魔法の発動にはトリガーとなる呪文が必要。それで、私の魔法を封じようという魂胆でしょうけど。


 残念。オーガたちなら、もう助けたわよ。

 

 パチンと指を鳴らすと、冒険者たちの足元から極寒の冷気が噴き上がる。彼らの半数近くを人質ごとカチンコチンの冷凍状態にした。


「……なにッ!?」


 その場の全員たちから、どよめきが上がった。


「ふっふん! 登場と同時に、時間差で発動する氷魔法を仕込んでおいたのよ!」

「人質ごと攻撃するとは!? な、何を考えておられるのだ!?」


 ゴルドが私に怒りをぶつけてきた。


「これしか方法が無かったのはわかるが、き、貴様ぁ……ッ!」

「問題無いわ。凍らせただけで、命に別状は無いから。魔法を解けば、みんな元通りになるわよ」

「はっ? なっ、なんだと……?」


 ゴルドは私の言葉をすぐに理解できなかったようで、意外そうに目を瞬いた。


「ふっ、あなたもこの魔王アンジェラの四天王の1人なら悪の美学について、ちゃんと理解しなさい」


 私は声高く叫んだ。


「悪のカリスマたる者、配下は決して見捨てない! 何があろうと守り抜くのよ!」


 きっ、決まったぁあああッ!

 大勢の冒険者たちの前で、この大見得を切ってみたかったのよね。やっぱり、決め台詞は敵の前で行ってこそよ。


 また一つ夢が叶って、私は内心、喜びに打ち震えた。

 最近は、【水の聖女】とか不本意な名声が広まって、あまり魔王ムーブができていなかったから、喜びはひとしおよ。


「魔王様……!」


 回復したオーガ族たちが、感動に身を震わせていた。

 配下たちからの尊敬の視線は気分が良いわ。


「あ、あなたというお方は……!」


 ゴルドも、輝く瞳で私を見つめている。

 

「はっ、調子に乗るな! この程度の状態異常なんざ!」


 ヒーラーが、自信満々で氷漬けになった仲間に回復魔法を浴びせたけれど、なんの変化も無かった。


「か、回復魔法が通じない!?」

「ただの【凍結】状態じゃないのか!?」


 彼らはそれがよっぽど意外だったようで、動揺している。

  

「当然よ。これは魔王である私が生み出した永久に溶けない呪いの氷だもの。【水の聖女】の力でもなければ、回復は不可能よ!」

「まさか本当に魔王……!?」

「殺せ! コイツを殺せば魔法は解ける!」


 魔法使いたちが、私に向かって火炎弾を発射してきた。

 同時に、剣士たちが裂帛の気合いと共に突っ込んで来る。


【氷盾】(アイスシールド)!」


 私は火炎弾を氷の盾を生み出して弾き返した。

 この盾には、魔法を反射する効果があるわ。


「ひぁああッ!?」


 自らが放った炎に焼かれた魔法使いたちは、地面を転がる。


 私は剣士たちの斬撃を躱しながら、彼ら全員に拳を叩き込んだ。

 剣士たちは、うめき声を上げて、その場にうずくまる。


「ふん! あなたたちごとき、【絶対零度剣】(アブソリュートゼロ)を使うまでもないわ」


 私は鼻を鳴らして、魔王の決め台詞その2を放った。


「この強さ、なっ、なんなんだお前は……?」


 ズタボロになった冒険者たちが、私を見上げた。


 あっー! その目、その目よ! 絶対悪にして絶対強者として、恐怖の眼差しで見られるのって、最高だわ!


「だから言ったでしょ。この私こそ、新たなる魔王アンジェラだって!」


 私は胸を反らして、ドヤった。


「あなたたちは、全員、奴隷にして死ぬまでこき使ってあげるわ!」

「……なんだとッ!?」


 冒険者たちは、絶望と驚愕に大きく目を見開く。

 逃げようとしていた者もいたけど、私が足を凍りつかせて妨害した。


「この私から、逃げられるとでも思ったの?」

「あっ、う、うぉ……!」


 魔王からは逃げられないのがお約束だと、知らなかったのかしら?

 冒険者たちは、恐ろしさに声を上擦らせた。


「私の大事な配下を殺しに来たのだから、当然よね? 命があるだけ、感謝しなさい!」

 

 私は闇の回復魔法【ダークヒール】を、腰を抜かした少女冒険者に放つ。

 傷を癒やされた彼女は、意味がわからない様子で、キョトンとしていた。


「だけど、か弱い女の子だけは帰してあげるわ! 街に戻って他の者に伝えなさい。魔族を狩ろうと魔の森に踏み込む者は、誰であろうと、この私が許さないってね!」

「ひぃ、やぁああああ……!」


 行きなさいと顎をしゃくると、少女は脇目も振らずに逃げ出した。


「ふふっ。これで私の恐怖伝説が、聖王国中に──いえ、やがて世界中に広がるわね」


 よしよしと、私は頷く。

 悪のカリスマである私が侮られるなんて、決してあってははならないことだわ。


 いずれ、この私の名前を聞くだけで、誰もが震え上がるような状況を作ってやるのよ。

 そう決意を新たにした時だった。


「魔王アンジェラ様……」


 ゴルドがなにやら厳かな様子で、その場に片膝をついて――。

お読みいただき、ありがとうございました!

少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、


『ブックマーク』登録と、下にあるポイント評価欄【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読み頂きありがとうございます!!
少しでも面白いと思って下さった方は

ぜひ「ブックマークに追加」をしていただけると嬉しいです!!


小説家になろう 勝手にランキング
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ