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18 帰還と始動

※この項には「性別」に関して若干センシティブな会話が含まれています。ご不安のある方は次話の19 返事に飛んでください(話としては繋がると思います)。

「ユウリちゃん、今回もちゃんと生きてたな。偉い偉い。飴ちゃんあげる」

 無事に帰還したカナトは、聞き覚えのある台詞を吐きながらニッと笑った。その手にはやはり、いつもと同じように飴が握られている。ユウリは素直に手を差し出して受け取ったが、その飴を思わずむむ、と見つめてしまった。

「なぁ、カナト」

「ん?」

「私は、カナトの目には、そんなに子供っぽく映ってるのか?」

「へ?」

 カナトは意外なことを言われたというようにきょとんとした。

「なんで?」

「だって、最初にこの飴くれたとき、子どもに好評だって言ってたし」

(それにちゃん付けで呼ぶし……)

 思っていたことは半分しか言葉にならなかったが、言わんとしていることは伝わったらしい。カナトは考えるように少し上に視線を逸らした。

「別に子どもとして扱ってる気はねぇけど。もし俺があんたを子どもだって思ってたら、殿下に言ってオウギとの訓練なんてやめさせてる。だがまぁそうだな、女の子扱いはしたほうがいいだろうとは思ってる」

「女の子……」

 子どもか大人か、ではなく、男か女か。そういう区分に晒されることが少なかったユウリはカナトの発言に戸惑ってしまう。間近でとても「女の子らしい」ことがユウリにもわかるような妹のユナを見ていたのもあって、ユウリはどうしても自分を女らしいと思うことができない。それなのにカナトは自分を「女の子」として扱おうとしている。それは心がちぐはぐになるような複雑な気分だった。

 黙っていると、カナトが大げさな溜息をついた。

「あのなぁユウリちゃん。あんたはよくわかってねぇみたいだから言っとくけど、『男女分け隔てなく接する』ってことと、『性別を区分せずにないものとして扱う』ってのはまったく別の話なんだぜ」

「え?」

 ユウリは思わず顔を上げた。カナトの言うことが難しく感じて首を傾げる。

「性別ってのは子孫を残すためのシステムだ。どんなに残酷だろうとその事実は変えられん。だからその事実を完全に無視してないものとして扱うなんてのは無理な話なんだ。生まれ持った身体の構造の違いもあるし、それによって必要に応じて区分されることもある。まぁだからこそいろんな悩みや問題が出てくるもんだが。あんたは女の子扱いされんのに抵抗あるのかもしれんが、俺の中ではそれは必要な線引きなんでな。そういうもんって思ってもらうしかない」

 カナトはいつもの笑みを潜め、至極真面目な顔で言う。いつものおおらかな彼を見慣れているせいか、その表情は少し厳しくさえ見える。それでユウリは思い出した。初めてカナトと会った日、ユウリが「女扱いされない方が気が楽だ」と話したときに彼が一瞬見せた鋭い目を。今話されたことは、あのときからカナトが思っていたことだったのかもしれない。

 叱られたような気分になって沈んでいると、カナトは頭を掻いた。

「まぁなんだ。はじめにも言ったが俺ら殿下の陣営は男所帯だからな。そもそも女の子の扱いなんて慣れてねぇんだよ。オウギにしごかれたあんたならわかると思うけど。だからなんか不都合があんなら正直に言ってほしいって話だ。言ってくんねぇとわかんないこともあるからさ」

 こんな言い方するつもりなかったんだがなぁ、と小さくぼやくカナトをユウリはぽかんと見つめてしまった。結局カナトの言葉は、ユウリのことを心配するが故に出たものだった、ということのようだ。

 そのままじっと見つめていると、カナトは困ったような笑みを見せた。

「あんたは本当百面相だな。あんま顔に出すぎるのも考えもんだぜ?」

 そこにはもうユウリを咎めるような響きはなく、いつものカナトの調子に戻っていた。

「話は終わったか」

「ぅおうっ!?」

 急に響いた声に飛び上がったカナトが背後を見ると、憮然とした表情のオウギが立っていた。

「なんだオウギか。脅かすなよ」

「話が終わるのを待ってただけだ」

「あっそ」

 カナトは一瞬げんなりとしてみせたが、すぐに表情を改めた。

「それで、殿下は?」

 先ほどまで皇子リトのもとにいたはずのオウギに尋ねる。オウギは表情を変えないまま告げた。

「ああ。今後のことを話すから、ユウリには戻ってもらうと」

 ユウリは腹の底がうそ寒くなるような感覚を味わったが、丹力をこめ直した。

「わかった」

 応えると、オウギは軽くうなずいた。

「あとカナト、お前も呼ばれてる」

「え、俺?」

「ああ。そして俺も。ジグもまた呼び戻されているそうだ」

「……全員集合?」

 カナトは片眉を上げたまま表情を止めた。そんな顔をしてしまうほど珍しい事態ということだろうか。だがオウギはあくまでも淡々と告げる。

「殿下に考えがおありなんだろう。とにかく行くぞ」

 こうして三人は連れだってリトの待つ執務室へと向かうことになった。


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