第九十七話 最強スキル『光刃剥奪(ラディアントディスペル)』
レイモンドさんのロングソードが眩い光を放つ。
その光は剣の周囲に広がり、波動となって空間全体を震わせた。
「これが……最強スキル……?」
俺は盾を構えながら、その異様な気配に息を呑む。
光の波動が次第に収束し、剣先へと集中していく。
【スキル情報】
名称:光刃剥奪
効果:光の波動で敵を切り付けることで、敵の装備や能力をレベルダウンさせる。
「これで終わりだ!」
レイモンドさんが一歩前に踏み込み、ロングソードを振り下ろした。
その瞬間、剣先から放たれた光の波動が一直線に俺を襲う。
「くっ……!」
俺はとっさに体を捻り、その攻撃を間一髪で回避した。
しかし――。
「えっ……!」
光の波動が、手に持っていた槍の先端に触れる。
その瞬間、槍が眩しく輝き、形状が変化していくのが見えた。
「これは……!」
慌てて槍を確認すると、そこには見覚えのある形があった。
それは、俺が最初に手に入れたFランクのアイテム――「ひび割れた槍」だった。
「元に戻った……!」
(このスキル……装備を元に戻すのか!?)
槍がFランクに戻ってしまったことで、彼のスキルの恐ろしさを理解する。
「さすがです、天城くん」
レイモンドさんが再び剣を構え、次の攻撃の準備を始めていた。
「君の動きは見事です。しかし、このスキルを防ぎきれますか?」
その言葉とともに、剣先から再び光の波動が放たれる。
「くっ……!」
俺は盾を構え直し、再び回避の動きに入る。
「これを受けたら……!」
レベルダウンする――それだけは避けなければならない。
しかし、レイモンドさんの動きは速く、光の波動が次々と俺を襲う。
盾で防ぐことも考えたが、波動の力がどれほどの影響を及ぼすのか分からない以上、それも危険だった。
(装備だけじゃなく……俺自身がレベルダウンさせられたら終わりだ!)
「天城くん、さあ、どうします!」
レイモンドさんがロングソードを大きく振り回す。
その剣先から放たれた光の波動が、今度は扇状に広がり、広範囲を覆う。
「しまっ――!」
俺は跳躍してその範囲から逃れようとしたが、光の端が足元をかすめた。
その瞬間、靴に装着していた「蒼狼の戦靴」が淡く輝き始める。
「またか……!」
足元の感覚が変わり、動きが重くなる。
確認すると、靴もまたFランクに戻ってしまっていた。
「これは……本当に……!」
再び光の波動が迫り来る。
盾で受け流しながら必死に動くが、心の中に焦りが募る。
(盾も無力化された……このままじゃジリ貧だ……!)
「次です」
レイモンドさんの目が鋭く光る。
剣の光が増していく。まったく衰えを見せない。
光の波動は攻撃する度に広がり、俺の周囲を埋め尽くそうとしている。
回避の限界が近づき、息が荒くなっていく。
(あのスキルに正面から立ち向かうのは無理だ。どうすれば……)
必死に考えを巡らせるが、レイモンドさんの圧倒的な攻撃の前では、あらゆる手段が霞んで見える。
「さて、そろそろ終わりにしましょう」
レイモンドさんの剣がさらに強く輝き始めた。
その光は、これまでの波動とはまったく違う規模と力を放っている。
剣を高く振り上げ、空間全体が眩い光に包まれる。
(どうする……どうすればいい!?)
絶体絶命の状況に追い込まれながら、俺は次の手を必死に模索した――。




