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第九十五話 本気で殺しにくる


教会の裏庭に足を踏み入れると、そこには手入れの行き届いた芝生が広がっていた。


穏やかな空気に包まれているはずのその場所が、今は不穏な緊張感に満ちている。


「ここで戦うのか……」


俺は周囲を見渡しながら、手に持った槍を握り直した。


その先には、ロングソードを構えたレイモンドさんが立っている。


「天城くん」


彼が静かに口を開いた。


「もう一度言います。君が私の持つ最強スキルを受け継ぐには、一つ条件がある。それは、私を倒すこと」


「……わかりました」


彼はわずかに微笑みながら続ける。


「私は神父でありながら、まだまだストレンジャーとしての経験の方が長い。そして、数々の戦場を生き抜き、仲間たちと戦い抜いてきました」


彼の声には、重みがあった。


「ストレンジャー同士で、秘技を受け継ぐのであれば、その相手方は引き継ぐに相応しい実力を持っているべきです」


「……」


「だからこそ、剣で語り合おう、天城くん」


その言葉に、俺の背筋がピンと伸びる。


「遠慮はいりません。全力で来なさい」


次の瞬間、彼の目が鋭く光り、低く静かな声で続けた。


「そうしないと……死ぬよ?」


その言葉に、俺は思わず冷や汗を流した。


(この人……本気だ)


俺は深呼吸をし、マジックバッグから装備を取り出し始めた。


槍、盾、靴、アクセサリー――すべてを装備し、戦闘態勢を整える。


【装備】

1.槍:天狼の槍(A級)

効果:物理ダメージ+40%、追加攻撃時にダメージ増幅


2.盾:金剛の盾(A級)

効果:魔法無効化、物理ダメージ軽減


3.靴:蒼狼の戦靴(A級)

効果:移動速度+20%、ジャンプ力+30%


4.アクセサリー:生命の指輪(S級)

効果:自動回復スキル、再生能力付与


装備を整えた俺を見て、レイモンドさんは少しだけ微笑んだ。


「ほう……なかなか良い装備です」


その言葉が終わると同時に、彼の姿が霧のように消えた。


「えっ……!?」


次の瞬間、風を切る音とともに、彼がこちらに突進してくる。


「いくぞ!!」


ロングソードの一撃が、槍の柄に直撃する。


「くっ……!」


衝撃で体がよろめく。


彼の一太刀一太刀が重く、そして速い。こちらが反撃しようとする隙すら与えられない。


「どうしました! その程度か! 天城くん!!」


レイモンドさんが声を上げながら、さらに攻撃を畳みかけてくる。


鋭い剣の軌跡が目の前で光り、盾で受け止めるたびに腕が痺れる。


なんとか距離を取ろうと後退するが、その隙を与えないようにレイモンドさんが一気に間合いを詰めてくる。


「くそっ……!」


槍を繰り出して牽制しようとするが、彼はロングソードでその攻撃を弾き返す。


そのたびに、金属音が響き渡る。


「どうしました! この程度ですか!!」


「まだ、これからです!」


俺は盾を構え直し、槍を低く構えて再び突進する。


だが、レイモンドさんは素早く剣を振り上げて受け流し、さらなる一撃を加えてくる。


「はあっ!」


槍の先端が彼の剣に触れた瞬間、強烈な力で押し返される。


「ぐっ……!」


後退しながら体勢を立て直そうとするが、その間に彼が再び距離を詰めてくる。


「はあああっ!!」


レイモンドさんの渾身の一撃が放たれる。


鋭い剣先が、空気を切り裂きながら俺の方へと迫ってくる。


(まずい……!)


盾で必死に防御するが、その衝撃に耐えきれず、体が吹き飛ばされた。


「うわあっ!!」


背中から教会の壁に激突し、全身に鈍い痛みが走る。


「がっ……」


息を整えながら体を起こすと、レイモンドさんはロングソードを肩に担いで立っていた。


「降参、しますか?」


その言葉に、思わず息を呑む。


(この人、本気で俺を殺そうとしている)


だが、それは同時に――。


(本気で自分の最強スキルを俺に託そうとしてくれているんだ)


その思いが胸に広がり、俺は再び槍を構えた。


「まだ……終わりません!」


その言葉に、彼は少しだけ微笑みを浮かべた。



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