表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

92/226

第九十二話 どこのチートハーレムなろう小説の主人公

祝賀パーティが終わり、俺は家路につきながら静かに夜空を見上げていた。


『アカツキ・ブレイド』の幹部たちや仲間たちに祝福され、次の目標を与えられたことで胸の中に新たな炎が灯っている。


(世界遠征のダンジョン討伐隊か……)


壮大すぎる話に、期待と不安が入り混じる。


(でも……もっと強くならないと)


S級ダンジョンで得た経験と、ランクBに上がったことで得た身体能力ボーナス。


俺はそれを全て《攻撃的生産職》に特化して振り分けた。


戦うための攻撃力、アイテム錬金のための器用さ、そして運。


この成長ビルドは、自分の戦い方にぴったりだと確信している。


攻撃的生産職、俺独自の職業クラス……そうだ、このスタイルを《バトル・クラフター(戦闘創造職)》と定義しよう。


「頑張るぞ……!」


心の中で小さく呟き、拳を握りしめた。その時、スマホが振動する。


「リナ……?」


画面にはリナからのメッセージが届いていた。


『今日はありがとね! また一緒にダンジョン配信しよ!』


「こちらこそありがとう。もちろん、やらせて欲しい!」


俺は短く返信を打ち、少しだけ笑みを浮かべた。


(次はどんな冒険になるだろうか……)


※ ※ ※


パーティが終わり、私、橘リナは自分の部屋で椅子に座っていた。


カメラやドローンのパーツが散らばった部屋は、『ダンジョン配信者エンジェル』である私らしい雑多な空間だ。


「はあ……」


思わずため息をついて、机の上のスマホを見つめる。


先ほど送ったメッセージの返信をもう一度読み返す。


『こちらこそありがとう。もちろん、やらせて欲しい!』


(そっけない……! もう少し何かあるでしょ!?)


そう思っていると、スマホが再び振動する。


画面に映るのは親友で女性ダンジョン配信者のアイカの名前だ。


『リナ~! お疲れ! 今日はパーティだったんでしょ?』


ビデオ通話が始まると、画面越しに明るい声が響いた。


アイカは私と同じくダンジョン配信者で、人気のあるストリーマーだ。


「うん、パーティだったよ。楽しかった……けど、なんかモヤモヤする」


『モヤモヤ?』


アイカが画面越しに首を傾げる。


「実はさ、最近気になるストレンジャーがいて……」


その言葉に、アイカの目がキラキラと輝いた。


『まさか、この前一緒に冒険してた、あのS級ボス討伐メンバーのカレ?』


「えっ、何で分かるの?」


『分かるに決まってるじゃん! あんた、配信でめっちゃイチャイチャしながら、私のパートナーとか言っちゃってたし!』


「そ、それは……!」


私は頬を赤らめながら視線を逸らした。


「でも、どうアプローチしても全然落ちないんだよね」


『えっ、それ本気で言ってる? あのリナが落とせないって、そいつどんだけ変わり者なの!?』


アイカが信じられないという顔で声を上げる。


「私だって分かんないよ。いっぱいおしゃれして、可愛くしてるのに全然見てくれてなさそうだし……」


『えー、ありえない! 女性ダンジョン配信者の中でも最強美少女で屈指のリスナー数を誇るリナが、そこまでいうなんて、その男、罰当たりにも程があるわ!』


「そう思うでしょ?」


私はふてくされながら椅子に座り直す。


「もちろんリスナーのみんなのことは大好きだけど、最近……他に大好きな人ができたーって感じでさぁ。どうしよう……」


『ひゅ~! そのカレ、どんだけ幸せ者なの!?』


「そうなのかなぁ……」


『で、カレにはどこまで言ったの?』


アイカがニヤニヤしながら尋ねてくる。


「どこまでって……他の子と私、どっちとるの? とまでは言った」


『おおおお〜!! いいね〜〜! で、結果は?』


「有耶無耶にはぐらかされた」


『オイオイ、どこのチートハーレムなろう小説の主人公だよ!!』


「何それ? なろう?」


『いやこっちの話! だったらさぁ、思い切って……押し倒しちゃえば?』


「ええっ!?」


突然の大胆な提案に、私は思わず声を上げた。


『だって、リナの魅力なら一撃でしょ? おっぱい大きいし!』


「た、確かにDカップはあるけど……って、や、やめてよ! そんなの私にはできな……」


そう言いかけたが、ふと鏡に映った自分の姿が目に入った。


「いや……こうなったら……女の武器、使ってみるか!!」


呟きながら立ち上がり、鏡の前で自分の体を確認する。


「……やるの初めてだけど!!」


少し恥ずかしくなりながらも、出るところはしっかり出ている自分のプロポーションに自信を持つ。


ただ……客観的に見て、『はい、あーん♡』事件や『ハイディング密着』事件などなど、リナは天城に《かなりのアプローチ》をしてきた経緯があるはずだが、本人にはその自覚はないようだ。


『その調子、その調子〜!! だってリナ、グラビアのオファー来たことあるっしょ、断ったけど』


「うん、まあね。だから私、かなりいけてると思うんだけどな」


手で胸やお尻を触りながら、小さく呟いた。


『これは落ちるのも時間の問題ですな! リナの身体を好きに触れるなんて、そのカレが羨ましい〜!!』


「いや、言い方」


私は、スマホ越しに笑うアイカを見ながら、小さく呟いた。


(……次こそ、ちゃんと伝えてみようかな)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ