第九十話 私たちの誰を選ぶの/選ぶんですか!?
リナ、朱音、リン。
三人の美少女に取り囲まれた俺が焦る中、
空気を読まずに社会人ストレンジャーたちが酔っ払い状態で俺に絡んできた。
「天城、さっきからずっと思ってたんだけどよ」
ずずいっと隣に来た討伐隊攻撃班のリーダーが、酒の勢いでにやりと笑いながら尋ねてきた。
「お前、この3人のうち誰が彼女なんだ? まさか全員か?」
「えっ!?」
その言葉に、俺は手に持っていたグラスを落としそうになった。
俺の周りに集まってきていた他のギルドメンバーたちも興味津々でこちらを見つめている。
「ち、違いますって!」
慌てて否定しようとしたその時――。
「私です!」
「違う! 私よ!」
「そ、それなら……私だって……!」
リナ、朱音、リンが同時に声を上げ、手を挙げて火花を散らした。
周囲が一瞬静まり返る。
「お前、本当にモテモテじゃねえか……」
「ハーレムか!? ハーレムなのか!? クソっ! 羨ましすぎるぞ……!!」
社会人ストレンジャーたちがなぜかショックを受けたように塞ぎ込んでしまう。
慌てる俺を尻目に、
「そうだ、だったら、あの続きをしましょうよ!」
リナが、にっこりと微笑む。
「そうですね。リナと私、どっちを取るのか決めてもらいましょう」
朱音がそれを受けて提案する。
「えっ……!?」
俺が驚いていると、その話を聞いたリンが小さく手を挙げた。
「今なら……私も間に合いますよね?」
「いやいや、何の話をしてるんだ!?」
「じゃあ私から!」
リナが自信満々に胸を張る。
「まず、サポートは私が一番得意! 一緒に配信もできるし、絶対に楽しいよ! お金だってあるし、一緒にいろんなところに行ける!」
「いや、お金は関係ないだろ……!!」
「それに……どうしてもっていうなら、メイド服とか着てあげる!」
「着なくていいから!!」
リナの大胆すぎる発言に俺は突っ込まざるを得ない。
「次は私!」
朱音が真剣な表情でこちらを見つめた。
「学校のクラスメイトとして、私だってしっかりアシストできる。一緒にダンジョンも楽しく潜れるし、それに私の方が小さい頃から天城くんのこと知ってるんだから!」
「それは……まあ、そうだけど……!!」
「お昼にお弁当を作るって約束もしたでしょ? お、お、お嫁さん……になる自信もあるんだから!」
「え、お嫁さん……!?」
朱音の発言に、俺も言った朱音も顔が真っ赤になる。
「えっと……じゃあ私も……」
リンが恥ずかしそうにしながらも、一歩前に出てきた。
「一緒にS級ダンジョンをクリアして絆ができました。そして……天城さんのアシスト魔法なら、私が一番得意です!」
「それは確かに……」
「あと……天城さんのためならどんなことでもします! どんなコスプレだってするし、ツンデレになれと言われたらやってみます!!」
「ええっ!? コスプレ!? ツンデレ!? なんでそうなるんだよ!?」
リンの突拍子もない発言に、今度は俺は思わず突っ込んだ。
とにかく三人は全く引き下がらない。
周囲のストレンジャーたちは固唾を飲んでその様子を見守っている。
「「「さあ、誰を選ぶの/選ぶんですか?」」」
「いや、えっと、その……」
三人のタイプの異なる美少女からのアピールに、俺は押されまくってしまう。
「「「さあ、早く!!」」」
う、う……!
言葉が何も出ず、焦っていると……。
「そうよ。天城くんのこと、まだ信用できないわね」
朱音も腕を組んで言う。
その時。
「天城! そこにいたか!」
酔っ払ったイザナが笑いながらこちらに歩み寄ってきた。
そして、突然肩を組んできて俺を引っ張る。
「ちょ、イザナさん!? さ、酒臭い!! 何ですか急に!」
「いいじゃないか、こっちで一杯付き合え! いやあ、今日は本当に最高の祝賀会だ!」
「いや、俺、まだ未成年です!! ちょっと――」
三人の視線を背に受けながら、俺は強引に連れ去られる形となった。
(た、助かったのか……?)
※ ※ ※
引っ張られて連れて行かれたのは、パーティ会場のVIPスペース。
イザナとその側近のみが使用していたところだ。
「いやぁ天城よ! さいっこうのパーティだなぁ!!」
酒の勢いがあるのか、イザナはそこに俺を誘い、ソファに座らせた。
「まあ、はい……」
「よし、この場所なら、《盗聴》スキルを持っているストレンジャーからも盗み聞きされる恐れもなさそうだな」
「え……?」
気づけば、消音魔法があたりに展開されている。
イザナがかけたのだ。
「まさかイザナさん、さっきのって……」
「いや、演技半分、酔っ払い半分だよ。これで君と真剣な話をできるね」
「真剣な話……?」
「君にだけ、伝えたい」
真面目な表情でイザナは語り始める。
「ランク分類不能の、大魔導士スペシリアが封じ込めたと言われている古代のモンスター」
「えっ……」
その言葉に、体が硬直する。
「世界に4つ点在する、封じられた禁忌のダンジョンの攻略だ」
「スペシリア……!? 古代のモンスター……!?」
その言葉に俺は衝撃を受けた。




