第八十六話 S級アイテム《合成の竈》
「イザナさん!」
俺は叫びながらイザナの元に駆け寄った。
「何だ、天城?」
「攻略作戦を閃きました。俺が単独でもあの竜に特攻できるよう、補助魔法をかけてくれる魔導士をお願いします!」
「特攻だって……!?」
イザナは一瞬だけ考え込むような素振りを見せたが、すぐに頷いた。
「具体的に何を求める?」
「耐猛毒特化、俊敏性向上、耐熱効果、攻撃力UP、防御力UP、士気向上、自動回復……全部です!」
その言葉に周囲がざわついた。
そんな高レベルの魔導士がすぐに見つかるのか――誰もがそう考えたその時。
「私、やれます!」
小さな声でそう答えたのは、僧侶タイプのリンだった。
「リンさん……?」
驚く俺に、彼女はまっすぐな目で頷いた。
「補助魔法なら、全部できます! 私、そういうのが得意なんです」
「確かに、彼女なら、全ての条件を満たしているな」
イザナが首肯します。
「まさか……でも、ありがたいです!」
リンが高校生ながら討伐隊に選ばれた理由が、ここでようやく理解できた。
補助魔法のスペシャリスト――確かに、彼女のスキルはそれだけの価値を持つ。
「天城、彼女に任せてみるか?」
イザナが俺に尋ねる。
「お願いします、リンさん!」
そう答えると、彼女は嬉しそうに笑みを浮かべた。
「任せてください、天城さん!」
リンと俺は、少しの間、後方に下がり攻略作戦の準備を開始した。
「……最凶のドラゴンを討伐するための、最強のドラゴンスレイヤーを作る!」
俺は意気込みながら、マジックバッグから次々とアイテムを取り出した。
【取り出したアイテム一覧】
1.聖剣エクレール
ランク:A級武器
効果:光属性ダメージ+60%、追加範囲攻撃
2.邪竜斬りの宝刀
ランク:A級武器
効果:ドラゴン系モンスターへの特攻ダメージ+50%
3.疾風の鎌
ランク:A級武器
効果:2回攻撃スキル付与、攻撃速度+20%
4.会心の毒針
ランク:A級武器
効果:クリティカルヒット確率大幅上昇、基礎攻撃力大幅低下
5.乱れ撃ちの弓
ランク:A級武器
効果:8連続攻撃可能、命中精度大幅低下
6.必中ポーション
ランク:A級アイテム
効果:攻撃の命中精度を大幅上昇
7.合成の竈
ランク:S級アイテム
効果:複数の武器やアイテムを合成し、新たな装備を作成する。
「もし……! まずはこれだ……!」
俺は、S級アイテム《合成の竈》を手に取る。
その黒光りする竈は、不思議な輝きを放っている。
「合成のベースは……聖剣エクレールにする!」
光属性の範囲攻撃を持つエクレールは、巨大なボスモンスターに大ダメージを与えるために最適だった。
さらに、合成スロットの数が多いのも選んだ理由だ。
俺は次々にアイテムを竈の中に放り込む。
【合成手順】
1.聖剣エクレール(ベース)
2.邪竜斬りの宝刀
3.疾風の鎌
4.会心の毒針
5.乱れ撃ちの弓
6.必中ポーション
竈の中で輝きが強まり、アイテムが次々と吸い込まれていく。
その様子を見ながら、俺は汗を拭った。
(これで……理論上は、最強のドラゴンスレイヤーが作れるはずだ!)
その間にも、イザナたちはゼルガルムの猛攻を必死に防いでいた。
毒ブレスが再び吐き出され、盾を構えたタンクたちが正面でそれを受け止める。
「スイッチ! 次のタンク、前に出ろ!」
「了解!」
イザナの指示で前衛が交代するも、
毒の威力は凄まじく、何人かのメンバーが倒れて脱落していく。
「くそっ……持ちこたえろ!」
イザナの声が響く。
「天城さん……急いでください!」
リンの悲痛な声が届くたび、胸が締め付けられる。
その時、竈が一際大きな光を放ち、静かに収まった。
「できた……!」
竈の中から取り出したのは、全く新しい姿をした剣だった。
【新たな武器情報】
名前:ドラゴンスレイヤー:エクレール・アルファ
ランク:S級武器
効果:光属性ダメージ+80%、ドラゴン系特攻+60%、16回連続攻撃、範囲攻撃、必中効果
最強の武器を手にした俺は、後方から駆け出す
「リン! 俺にさっき頼んだバフを全力でかけてくれ!!」
「はい! わかりました!」
俺は、ギルドメンバーたちに声をかける。
「みんな、攻略作戦開始だ! ゼルガルムの首を取るぞ!」
その言葉とともに、俺はドラゴンスレイヤーを握りしめ、前線に向かった。




