第八十四話 【封印の解放:改】で見出されるクズアイテム
俺がマジックバッグから取り出したのは、淡い青い光を放つ小瓶――S級アイテム「ハイ・エリクサー」だった。
【アイテム情報】
名前:ハイ・エリクサー
ランク:S級アイテム
効果:パーティメンバー全員の体力を全回復し、状態異常を全て解除する。
「これで……!」
俺は瓶の封を開け、その中の光を解き放った。
瞬間、青白い光がパーティ全体を包み込み、暖かい感覚が全身を駆け巡る。
「なっ……!」
「これは……体が……!」
「た、助かった……のか……!?」
倒れていたアタッカーたちが次々と立ち上がり、動きを取り戻していく。
「まさか全員、猛毒デバフから復帰したのか……?」
驚きの声を上げたのはイザナだった。
彼は目の前で奇跡のような回復を目にし、唖然としている。
「天城……お前、今のは……」
「ハイ・エリクサーです。今なら、全員で立て直せます」
そう答えると、彼は少しだけ微笑んだ。
「そうか……お前はやはり、私が信じた通りの素晴らしいストレンジャーだ」
リンがこちらに駆け寄ってきた。
「天城さん……!」
その瞳には感動の色が浮かんでいる。
「すごい……こんなすごいアイテム、初めて見ました……!」
「リンさんたちが後方で控えてくれているおかげです。回復役がいてくれるから、躊躇なくアイテムを使えます」
そう答えると、リンは嬉しそうに笑みを浮かべた。
(これも全部、《過去視》スキルツリーを解放できたおかげだ)
俺は少しだけその時のことを思い出す。
※ ※ ※
箱根の博物館の古代遺物像によって《過去視:改》までスキルツリーを解放した俺は、まずジャンク商会に足を運んだ。
馴染みのマッチョな店主が、俺の疲労した顔を見るなり、心配そうに声をかけてくる。
「おいおい、大丈夫か? 最近、なんかやつれてねえか?」
「大丈夫です。ところで、またジャンク品を全部買い取らせてください」
俺の言葉に、店主の表情が曇る。
「すまねえな……実はついこの間、おまえさんと似たようなことを言ってきたストレンジャーがいてよ、そいつに溜まってた倉庫のクズアイテム、全部売り払っちまったんだ」
「えっ……」
驚きとともに、残念な気持ちが胸に広がる。
「そうですか……残念です」
ジャンク商会を後にしながら、俺は心の中で疑問を抱いた。
(俺と同じく、何の役にも立たないゴミアイテムを大量に買い取っただって……?)
「でも……気にしていても仕方ない」
俺は自宅に戻り、これまで進化に失敗したFランクのクズアイテムを再検証することにした。
膨大な量のクズアイテムは、あまりに量が多すぎて捨てるに捨てられない。
もちろん部屋の中に置いておくこともで着ないから、マジックバッグにずっと収納していた。
その「真なるゴミアイテム」たちを一つずつ取り出し、《過去視:改》を使う。
「《過去視:改》!」
スキルツリーを進めたことで、《過去視:改》は従来より飛躍的に性能が向上していた。
「えっ……!」
スキルの発動回数が減り、疲労も少なく、進化までの時間が劇的に短縮されている。
その便利さに思わず声が漏れた。
「めちゃくちゃ便利じゃん! これでエナドリやゼリー飲料を買い込む必要もないな……!」
何十、何百という膨大なクズアイテムを、マジックバッグから取り出しては検証、取り出しては検証、とひたすら続ける中、ついに――。
「これは……!」
目の前のアイテムが光を放ち、形を変え始めた。
【封印の解放:改】
アイテム名:ハイ・エリクサー
ランク:S級アイテム
効果:全体回復、状態異常解除
「S級アイテム……!」
それは「ハイ・エリクサー」と名付けられた超レアアイテムだった。
※ ※ ※
回復した仲間たちはそれぞれが武器を構え直し、再び戦闘態勢を整える。
「天城、本当にありがとう……お前がいなければ全滅していた」
イザナが俺に感謝の言葉を伝える。
「俺は……できることをやっただけです」
そう答えると、彼は微笑みながら隊列を整える。
その光景を見たボスモンスター、ゼルガルムが低く笑った。
『小童よ。お主は今までの人類よりは歯ごたえがありそうだ』
その言葉には、余裕と好戦的な興味が滲んでいた。




