表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

81/226

第八十一話 S級ダンジョン第一層

目の前に広がるS級ダンジョンの入り口――その名も「深淵の霧穴」。


ゲートの奥には深い霧が立ち込め、足を踏み入れる者の視界を奪うような不気味さを放っている。


「これが……」


俺はその異様な光景に息を呑む。


「ここは『深淵の霧穴』。内部は視界を妨げる毒霧が充満し、魔物たちが巣食う危険地帯だ」


イザナが簡潔に説明する。その声には緊張感が込められていた。


「毒霧……」


「毒耐性の装備を忘れるな。さらに、出現する魔物もA級からS級相当の強さだ。全員、気を引き締めろ!」


イザナの言葉に、ギルドメンバーたちが一斉に頷く。


俺は胸元に手をやり、自分が装着しているネックレスを触った。


【装備アイテム】


名称:アンチポイズン・ペンダント

ランク:A級

効果:毒耐性+30%、状態異常「毒」を無効化


これは、イザナからの事前アドバイスに従ってショップで購入したものだ。少々高価だったが、毒霧の中での戦闘には必須だった。


「この装備があるだけで、少しは安心できるな……」


ネックレスに触れながら、俺は軽く息を整えた。


ダンジョンの中は、濃密な霧が視界を遮った。


足元の地面はぬかるんでおり、湿った空気が肺にまとわりつく。


「全員、隊列を維持しろ!」

「サポート役、位置につけ!」


イザナの指示のもと、統率された隊列が組まれる。


俺はその中で中央付近に位置し、後方支援の役割を担うことになった。


(視界が悪い……ここで戦闘するのか?)


前方から響く足音とともに、異様な唸り声が霧の中に響く。


「敵だ! 全員、構えろ!」


イザナの声と同時に、霧の中から巨大な影が現れた。


その正体は、全身を棘で覆った獣型のモンスターだった。


【敵情報】


名前:ブラッドスパイン・ビースト

ランク:A級モンスター

HP:500/500

スキル:毒棘飛散、狂奔突進


「毒棘に気をつけろ! 前衛、防御を固めろ!」


ギルドの防御役が盾を構え、突進するブラッドスパイン・ビーストの動きを受け止める。


その直後、棘が飛散し、周囲のメンバーが素早く回避行動を取った。


しかし、俺の目の前にも棘が飛んでくる。


「くっ……!」


咄嗟に金剛の盾を構え、棘を弾き飛ばすことに成功したが、衝撃で体がよろめいた。


「こいつ……硬いな……」


モンスターの分厚い皮膚に剣や槍が弾かれるたび、攻撃班が息を切らしているのが見える。


「魔法班、準備を急げ!」


イザナの号令により、後衛が攻撃魔法を発動。


「《フレイムランス》!」


炎の槍がモンスターの腹部を貫き、その巨体がついに崩れ落ちる。


ぐるるっ……!


断末魔の声を上げ、モンスターは地面に倒れ込んだ。


「次、来るぞ!」


霧の中から別のモンスターが現れる。


今度は、半透明の体を持つ人型の魔物だった。


【敵情報】


名前:ミラーファントム

ランク:A級モンスター

HP:300/300

スキル:幻影生成、光反射


「幻影に惑わされるな! 本体を見極めろ!」


霧の中で複数の幻影を生み出し、攪乱してくるミラーファントム。その幻影の一つが突然こちらに飛びかかってきた。


「本体か……!」


槍で迎撃しようとしたが、幻影は霧散してしまい、攻撃は空を切る。


「違う! 他を探せ!」


イザナの指示により、ギルド全体が本体を探し始める。後衛が放った魔法も、なかなか本体を捉えられない。


「これ以上、時間をかけるな!」


俺は意を決して、蒼炎の魔杖を手にした。


「《ブルーフレア》!」


青い炎が広範囲に広がり、複数の幻影を焼き尽くす。


その中の一つが苦しむように叫び声を上げ、本体であることが判明した。


「今だ! 攻撃班、叩け!」


本体が露わになった瞬間、剣や槍が一斉に飛び交い、ミラーファントムが霧散した。


「よくやったぞ。天城くん」


イザナが労りの声をかけてくれる。


「いえ、そんな。チームとして当然のことをしたまでです」


俺は本心でそう答えた。


「この後も、キミの活躍に期待しているぞ」


そう言ってイザナは俺の背中をポンと叩いた。


モンスターを次々と蹴散らしながら、俺たちはダンジョン内を進んでいく。


濃密な霧が立ち込める中、周囲の状況を常に警戒しながらの移動だった。


「こっちだ。フロアの探索はほぼ終わった。次のルートを探すぞ」


イザナが指示を出すと、探索班が動き出す。


しばらくして、誰かが声を上げた。


「階段だ! 地下に続いてる!」


その声を聞き、俺たちは慎重にその場所へ向かった。


「全員、階段を降りる準備をしろ。警戒を怠るな」


イザナの指示のもと、俺たちは隊列を整えながら階段の前に立った。


濃霧はさらに深まり、地下へと続く階段の奥からは不気味な気配が漂っている。


「行くぞ」


その言葉とともに、俺たちは階段を降り始めた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ