表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

73/226

第七十三話 起死回生のコール



「どっちを取るの?」

「どっちと一緒にいるんですか?」


リナと朱音が、俺を挟む形で同時に問いかけてきた。その目には真剣な光が宿り、俺の返事を待っている。


(くそっ……これは……究極の選択すぎるだろ!)


顔から冷や汗が滲むのを感じながら、なんとかこの状況を切り抜けようと頭をフル回転させるが、二人の視線が鋭すぎて何も考えられない。


「天城くん、私は天城くんと一緒にいれば、どんな冒険でも安全に終えられるって確信してるの!」

「それは私だって同じです! 天城くんは学校でも誰よりも努力してるし、私が知ってる天城くんは本当に信頼できる人なんです!」


「でも、私のサポートがあるから、天城くんはあそこまで活躍できたんだよね?」

「サポートも大事だけど、そもそも天城くん自身の力がすごいんです!」


二人が譲らずに俺を巡って言い合いを続けている。


(なんとか……なんとかしないと!)


その時、不意にスマホが振動した。


「!?」


思わず、スマホを取り出して画面を確認する。


そこには見覚えのあるアカツキブレイドのギルドマークが表示されていた。


(これって、まさか……!!)


「ちょっと電話だ!」


俺はスマホを耳に当て、通話ボタンを押した。


「イザナ=カグラだ」


電話越しに低く落ち着いた声が響く。


その声を聞いた瞬間、俺は無意識に背筋を伸ばした。


「!! あ、天城蓮です!」


「突然の連絡で申し訳なかったね。今日の新宿支部での事件のことを、直接キミから聞き取りたいんだ。もし時間があれば、今から本部ビルまで来れるかね?」


「は、はい、わかりました!」


「感謝する。待っているよ」


通話が切れ、俺はスマホをゆっくりと下ろした。


(これで……この場を潜り抜けられる!)


俺は申し訳なさそうに顔を作りながら、二人に向き直った。


「ごめん! イザナさんから急ぎの呼び出しがあって、今すぐ本部ビルに行かなきゃならないんだ!」


「えっ、ギルドのトップから!?」リナが目を丸くする。


「そんな大事な用事なんですか?」朱音も心配そうに尋ねる。


「ああ、本当にごめん! また今度ゆっくり話そう!」


二人に一礼すると、俺はその場からダッシュで離れた。


「俺、急ぐから……!!」


※ ※ ※


蓮が去った後、リナと朱音は顔を見合わせた。


しばらくの沈黙の後、リナが口を開いた。


「……せっかく天城くんと話せるチャンスだったのにね」


「そうですね。でも、あれだけ急いでいるなら仕方ないです」


二人は同時にため息をついた後、リナが提案する。


「ねえ、私たちも時間あるし……お茶でもする?」


「……いいですね。天城くんトークで、意気投合できそうです」


「じゃ、天城くんの話をネタに、一緒に盛り上がろう!」


二人は微笑み合い、近くのカフェへと向かった。


※ ※ ※


「失礼します」


俺は本部ビルの最上階にある応接室のドアを開けた。


広々とした部屋の中央には、ギルドリーダーのイザナ=カグラが静かに座っていた。


「ようこそ」


イザナが落ち着いた声で迎え、俺に席を勧める。


「早速だが、ハザマ支部長のことについて、謝らせて欲しい。本当にすまなかった」


イザナは深く頭を下げた。


その姿に、俺は慌てて手を振った。


「いえ、いいんです! 頭を上げてください!」


イザナは顔を上げ、俺を真っ直ぐに見つめた。


「……そう言ってくれてありがたい」


少しだけ微笑んだ後、イザナは続けた。


「これは、お詫び代わりというわけではないが、キミにお願いしたいことがあって、来てもらったんだ」


「え……?」


俺が目を見開く中、イザナの声には新たな緊張感が滲んでいた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ