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第六十八話 正体を表したリーダー

「これが……叡智のクリスタル……」


シンジが呟きながら、クリスタルをじっと見つめている。その表情には明らかに異様な執着が宿っていた。


「これさえあれば……ダンジョンの謎を解き明かすことができる……!」


クリスタルを手に取りながら、彼の声は次第に熱を帯びていく。


「そうなれば、俺は支部長どころか……さらなる地位に……!」



しかし、次の瞬間、俺は静かに口を開いた。


「えっと、シンジさん。この財宝を発見したのは俺です」


「……何?」


シンジがクリスタルから目を離し、驚きと警戒が入り混じった表情でこちらを見た。


「なので、俺の手柄として、ギルドには申請したいと思います。いいですよね?」


「お前……何を……」


その反応を無視するように、俺はさらに話を進めた。


「シンジさんに見届けていただけて助かりました! よし、これで俺もどこかの支部の支部長くらいにはなれるかな!」


わざと明るく冗談めかした調子で、俺はツカツカツカ、と部屋の奥まで進む。


そうして、クリスタルの前で再び振り返る。


シンジの表情は完全に引きつっていた。


「このクリスタルも、みんなに知られると奪われるかもしれません。マジックバッグに収納しておかないと……」


そう言いながら、俺はクリスタルに手を伸ばした。


しかし、その瞬間――


「……っ!」


不意に全身を襲う鋭い殺気。その感覚に、俺は反射的に身を翻した。


「くっ!」


次の瞬間、俺がいた場所には鋭利なブロードソードが突き刺さっていた。驚き向き直った先には、冷たい目で俺を見下ろすシンジの姿。


「シンジさん……?」


俺がその名前を口にすると、シンジは忌々しげに舌打ちをした。


「くそっ……完全にスキをついたはずだったが……忌々しい。お前のそのこざかしい【靴】の効果か。俺の刺突を避けるなんてな」


彼の視線が一瞬だけ俺の足元――蒼狼の戦靴に向けられる。その目には、もはや信頼や穏やかさの欠片も残っていなかった。


「シンジさん……どういうことですか?」


「どういうことも何もねぇよ。お前がバカだから、俺だけを連れてきて、今はここに誰もいねえ。だから、ここで何が起こっても、知られないってわけだ……くくく」


シンジがブロードソードを構え直し、冷たい笑みを浮かべながら続けた。


「さっきのひと刺しで死んでりゃあ痛みも感じなかったろうに。不幸なやつだぜ……」


その口調には、最初に見せた穏やかさの欠片も残っていない。


「さあ、さっさとそのクリスタルをよこしな」


(……ついに本性を表したな!! エドガーの仇!!)


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