第六十七話 隠し財宝 叡智のクリスタル
古代遺跡のダンジョンの一室。
シンジと二人きり。
俺は徐に口を開いた。
「シンジさん、少しお話があります」
彼は目を細めながら耳を傾ける。
「実は俺には、《過去視》というスキルがあります」
「過去視……?」
シンジが眉をひそめ、興味深そうに聞き返す。
「はい。このスキルの能力は単純です。1秒前の過去を見るだけ。最初はまったく役に立たないゴミスキルだと思っていました」
「それで……?」
少し困惑したような表情を浮かべるシンジ。
「ですが、スキルの特性を理解し、使い続けることで、過去を深く掘り下げることができるようになりました。そして――」
俺は一呼吸置いて言葉を続けた。
「今回のラヴァトロル戦で使用したA級アイテムも、全てこの過去視で《進化》させたものです」
「A級アイテムを、過去視で進化させた……?」
シンジが驚きと興味を隠せない声を上げる。その目が、俺の手元のマジックバッグに向けられる。
「ええ。このスキルは、過去に埋もれて失われたアイテムの本来の姿を呼び覚ますことができるんです」
その言葉に、シンジは深く頷いた。
「なるほど……あのアイテムの強さも納得だ」
「ですが、今日はそのスキルの話をした理由が他にあります」
俺の言葉に、シンジが改めてこちらに顔を向けた。
「この部屋には隠し通路があります。その奥には財宝が眠っている――俺の《過去視》でその姿を見ました」
「何……!?」
シンジの表情が一変する。驚きと期待がその顔に浮かんでいた。
「ただし、今はその通路が塞がっていて、財宝にたどり着けません」
「財宝が……本当に?」
「ええ。ただ、こういった価値の高い財宝をむやみにみんなに知らせるわけにはいきません。それに、俺のスキルについても、たくさんのギルドメンバーがいる中では明かしたくなかったので……」
「だから、こうして私にだけ話をしたというわけか」
シンジが納得したように頷く。
「信頼できるシンジさんだから話しました」
その言葉に、シンジは小さく微笑みを浮かべた。
「そうか……分かった。なら、早速その隠し通路を暴いてくれ」
「了解です」
俺は部屋の中央から少し歩き、古代遺跡の壁を見上げた。
俺は槍を構え、シンジに伝える。
「ここに……通路が隠されています」
「頼むぞ、天城くん」
シンジが期待に満ちた声で言う中、俺は槍を力強く壁に突き刺した。
「……っ!」
ガラガラと音を立てて壁が崩れ、その奥に新たな空間が現れた。部屋の中に差し込む光がその空間を照らし出し、煌々と輝く財宝が姿を現す。
部屋の奥には、一つのアイテムが鎮座していた。それは、淡い青い光を放つ美しい結晶だった。
名前:叡智のクリスタル
種別:特殊アイテム
ランク:A+
説明:使用効果は不明。古代ダンジョンの謎を紐解く貴重なものだとされている。現在の技術では解析されていない。
「おお……!!」
シンジが光り輝くクリスタルを見つめ、言葉を失っていた。その表情には驚きと興奮が入り混じっている。
「叡智のクリスタル……まさか、こんなものが存在するなんて……!」
彼が呟きながら一歩近づき、クリスタルを手に取る。その手元で淡い光が揺らめき、神秘的な輝きが部屋全体を照らした。
「これは……間違いなく古代の遺物だ。解析もされていない、希少すぎるアイテム……」
シンジの声はかすかに震えていた。
「素晴らしい……」




