第六十六話 蓮の作戦
「このエリアのマッピング情報、全て確認しました!」
「了解。すぐにシンジさんに伝えてくれ」
ギルドメンバーたちの声が、静かなダンジョン内に響く。戦闘が終わり、平穏を取り戻した空間で、俺は黙々と周囲を見渡していた。
エドガーの仇を目の前にしながらも、どう動くべきか迷っている自分がいる。
「リポップモンスターが確認されたエリアがあるみたいだ」
「隠し通路の可能性についても調べておきます!」
「シンジさん、この壁、怪しいと思いますが……どうします?」
そんな会話が周囲から聞こえてくる。その中で、俺は「隠し通路」という言葉に反応した。
(隠し通路……だって!?)
脳裏に閃きが走る。
(そうだ、これなら……)
俺は考えを巡らせながらリナの方へ向かい、小声で耳元に囁いた。
「リナ、ちょっと頼みがある」
「ん? 何?」
リナが不思議そうに顔を寄せる。
俺はさらに声を潜め、ある依頼をリナに伝えた。
「うん、わかったけど……天城くん、どうするの?」
リナが少し心配そうに尋ねてくる。
「ああ、ちょっとやることがあるんだ」
そう言い残すと、俺は足早にその場を離れた。
(急がないと……)
ダンジョン内を駆け巡りながら、俺は《過去視》を使う。
目指すのは……。
※ ※ ※
「よし、あらかたこのダンジョンの情報は収集できたな」
シンジの号令がかかる。ギルドメンバーたちが手を止め、集まり始めた。
「そろそろ撤収するか」
その言葉を聞いた瞬間、俺は急いでシンジの元へ駆け寄った。
「シンジさん! 少し話があります!」
「どうした、天城くん?」
シンジが振り返り、穏やかな表情で応じる。
「シンジさん、少し耳を貸していただけますか」
「ああ、構わないが……」
シンジが不思議そうに顔を寄せる。その瞬間、俺は声を低く潜めて耳打ちした。
「……」
囁かれた内容に、シンジの目が一瞬で鋭さを帯びた。
「それは……本当かい?」
「はい、間違いありません」
俺が頷くと、シンジは少しの間考え込んだ後、周囲に視線を向けた。
「みんな、少しここで待っていてくれ!」
「えっ、でも……」
メンバーたちが戸惑う中、シンジは短く言葉を切り出す。
「大丈夫だ。天城くんと少し確認したいことがあるだけだ」
その言葉に、メンバーたちは不承不承ながらも頷き、俺とシンジは二人で古代遺跡ダンジョンの奥へと進んだ。
そこは、ダンジョンの奥深くにある一室。
薄暗い空間には古代文字が刻まれた石壁があり、どこか重々しい空気が漂っている。
しかし、その空間には目立った仕掛けも装飾もなく、どこか拍子抜けするような雰囲気だった。
「本当に、ここに隠しエリアが?」
シンジが周囲を見渡しながら尋ねてくる。その声には疑念が混じっていた。
「はい。間違いありません」
俺は冷静に答えた。
「このダンジョンのデザインテーマは古代遺跡。そしてこの部屋は、おそらく昔は宝物庫だったと思われます」
その言葉に、シンジは改めて部屋の隅々まで目を向けた。
「確かに、この部屋は何かを保管していたような形跡があるな」
「今は何もないように見えますが、俺にはわかります」
「なんのことだい?」
「この奥に、財宝が眠っていることが」
「そんな……ここもすでにマッピング済みで、そんな情報なんてなかったぞ……」
「すぐに分かります」




