第五十九話 B級ダンジョンのモンスター
カイ副支部長に与えられた情報をもとに、俺とリナは最近出現したというダンジョンゲートの前に立っていた。目の前に広がる黒いゲートは、重々しい威圧感を放ち、周囲の空気がわずかに歪んでいるように見える。
「これ、B級ダンジョンみたい……」
リナがゲートを調べながら呟いた。
「私たちにはオーバーレベルだけど……大丈夫?」
「関係ない」
俺は一言だけ答え、ゲートに向かって一歩踏み出した。
「行こう」
「そういうと思った♡」
リナが笑顔を浮かべながら言う。
「マジックバッグ貸してくれたら、サポートするからね!」
「頼む」
軽快な会話を交わしながら、俺たちはゲートを潜った。
ダンジョンの中は、古代遺跡をテーマにしたデザインだった。両サイドには苔むした石の壁がそびえ立ち、所々に亀裂が入っている。天井は高く、淡い光が隙間から差し込んでいるが、それでも薄暗さが全体を包んでいる。
「おお〜、雰囲気出てるなぁ」
リナが周囲を見回しながら感嘆の声を上げた。
「これは配信映えしそう……よし、そろそろ配信を始めちゃおっかな」
「しっ! リナ、あれを!」
俺がリナを制すると同時に、遠くから響く足音が聞こえてきた。
「え?」
リナが目を細めて前方を凝視すると、薄暗いダンジョンの奥からモンスターたちが姿を現した。
現れたのは、B級モンスターの一団だった。それぞれの姿は異なるが、共通して体が大きく、鋭い牙や爪を持つ。
【モンスター情報】
モンスター名:トライフェング・ウルフ
種別:敵モンスター
ランク:B
HP:150/150
攻撃力:45
説明:古代遺跡に生息する大型の狼型モンスター。素早い動きと強力な牙で敵を追い詰める。
【スキル】
1.影の咆哮:範囲内の敵を恐怖状態にする
2.狂奔の牙:一定距離を突進しながら攻撃する
「これは……強敵だね」
リナが呟く。
「ああ。でも」
俺は一歩前に出た。そして、そのままモンスターに向かって走り出す。
「関係ない!!」
ダダッと駆け出す音がダンジョン内に響く。俺の動きに驚いたリナが慌てて叫んだ。
「ちょっと!? 私じゃなくて今度はキミが先走るの!?」
彼女の声を背中に受けながら、俺はモンスターの一団に突撃していった。
走りながら、俺はA級アイテムを装備する。
【装備アイテム】
1.【蒼狼の戦靴】(Aランク/移動速度+20%)
2.【天狼の槍】(Aランク/物理ダメージ+40%)
「さあ、行くぞ!」
俺の胸には、不思議な確信があった。目の前のモンスターたちに怯むどころか、倒せると信じていた。
(これは……過去視スキルを使い続けてきた自信か?)
(それとも、ボスモンスターやブラッククロウズとの死闘を経た経験からだろうか?)
(いや、あの夢で見た魔導士に感化されたのかもしれない……)
いずれにせよ、今の俺には迷いはなかった。
最前列のトライフェング・ウルフが鋭い牙を剥き出しにして突進してきた。
「まずは一匹!」
俺は天狼の槍を振り上げ、力強く突き出した。
「ぐあっ!」
槍の刃がウルフの胸元を貫き、その体が床に倒れ込む。同時に、槍の追加効果が発動し、周囲のモンスターに衝撃波が広がる。
複数のウルフが衝撃波に巻き込まれてダウンする。
「よし、次!!」
俺はすぐに槍を構え直し、さらに狼の集団へ突き進んでいく。
「天城くん……すごい……!」
「リナ! サポートは任せた!」
後方で見守っていたリナへ叫ぶ」
「了解! 配信も最高に盛り上げるからね!」




