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第五十七話 いざ、新宿区支部へ

朝の光が差し込む中、俺は重たいまぶたを開けた。布団の中でぼんやりと天井を見上げながら、昨晩の夢の余韻を探る。


(何か夢を見た気がする……けど、思い出せない)


断片的なイメージだけが頭に残っていた。暗闇の中、自分が魔導士のような姿になっていた気がする。


(なんだったんだ……あれ)


考えても分からず、頭を振って布団から抜け出した。


時計を見ると、すでに家を出る時間が迫っている。


(いけね、今日は新宿区支部に向かう日だ)


マジックバッグを確認し、必要なものを詰め直してから家を出た。


1時間後。


ギルド『暁の刃』新宿区支部のビルの前。


高層ビルの立派なエントランスが、ここが一流ギルドの拠点であることを主張している。


「天城くん、相変わらずかっこいいね!」


元気よく話しかけてきたのは、リナだ。彼女はいつもと変わらない明るい笑顔を見せている。


「今日も一緒に冒険しよ♡?」


「それ、リナの配信の決め挨拶じゃないか……」


俺が呆れながら返すと、リナは舌をぺろっと出して可愛く笑った。


「てへ、バレたか」


その仕草に、周囲を行き交う人々の視線が自然と集まっている。俺は少し気まずそうにリナに声をかけた。


「ほら、天城くん」


「え?」


「ほらほら!」


「な、なに……?」


リナが腕を組みながらじっとこちらを見つめている。その仕草に戸惑っていると、彼女が少し不満そうに言った。


「もー! 私が天城くん今日もかっこいいねって言ったんだよ? てことは、わかるよね?」


「いや、本当に何が何だか……」


はぁ、とリナはため息をついて、


「リナちゃん、今日も……?」


「あ!」


リナが嬉しそうに顔を近づけてくる。


こ、これは……


言うしかないのか……!?


「リ、リナ、今日も……か、可愛いな」


「はい、正解! そのとーり。私も可愛いでしょ?」


彼女がウィンクしてみせると、俺は軽く溜息をつきながら呟いた。


「相変わらずだな、リナは……」


そんなやり取りを経て、俺たちは新宿区支部のビルに入った。高級感のある内装に、受付の女性が丁寧な笑顔を浮かべて対応してくれる。


「イザナさんの紹介で参りました。天城蓮と申します」


俺がそう告げると、受付の女性は軽く頷き、データを確認する。


「はい、確認しました。それでは応接室にご案内いたします」


俺たちは案内に従い、エレベーターで高層階へと向かった。エレベーターを降りると、広い廊下を進み、応接室に通された。


応接室はシンプルながらも洗練された空間だった。大きな窓から街を一望できる景色が広がり、中央には高級感のあるソファとテーブルが置かれている。


(ここに、あのエドガー殺害犯が来る……)


俺は心の中で呟いた。犯人――シンジ・ハザマは、俺のことを知らないはずだ。しかし、彼がどんな行動を取るか分からない。


(相手は仲間を陥れてのし上がった狡猾な冒険者だ。何が起こるかわからない。警戒しておかないと……)


緊張したまま、A級アイテムが入ったマジックバッグをギュッと握りしめた。


「天城くん、大丈夫?」


隣でリナが心配そうに尋ねてくる。


「ああ、大丈夫だ」


俺が短く答えると、リナは軽く肩を叩いて励ましてくれた。


「リナちゃんがついてるから安心してね!」


「……ありがとう」


やがて、応接室のドアが静かに開いた。


「お待たせしました」


低い声とともに、一人の男が入ってきた。その姿を見た瞬間、心臓が跳ねる。


「キミがイザナさんに紹介されたという、天城蓮くんか?」



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