第五十二話 ダンジョン配信者の武器
「ほらほら、どうしたの? 黙ってちゃ分かんないよー!」
リナは俺の制止を全く無視して、研究者たちとストレンジャーを鋭い目つきで睨みつけながら前進する。その声には、挑発的な響きが混ざっている。
「畑で栽培してた魔薬草をぜーんぶドレイン魔法で魔物に与えて枯らせちゃって、しかも危険で凶暴なモンスターに無断で進化させてさぁ! 全部冒険者ギルド違反だよ!! それで市場を独占してお金儲けようだなんて……アンタたち、最低ね!」
彼女の言葉に、研究者たちは顔を引きつらせ、ストレンジャーが険しい目を向けてきた。
「こいつ……命が惜しくないのか?」
ストレンジャーが低い声で呟きながら剣を抜く。その鋭い刃が光を反射し、周囲の空気が一気に張り詰める。
「見られたからには生かしておくわけにはいかない。ここで全て片付ける」
研究者たちも同時に杖を構え、呪文の詠唱を始める。彼らの目には明らかな敵意が宿っていた。
「ヤバい!!」
物陰から状況を見ていた俺は、リナの無謀な行動に慌てて飛び出した。すぐにA級アイテムを装備し、戦闘態勢を整える。
【装備アイテム】
1.【蒼狼の戦靴】(Aランク/移動速度+20%)
2.【天狼の槍】(Aランク/物理ダメージ+40%)
3.【金剛の盾】(Aランク/魔法無効化)
「リナ! キミは逃げろ!」
俺は叫びながらリナの前に立ちはだかった。
「ここは俺がなんとかする!」
その言葉に、リナは驚くどころか、ニヤッと笑みを浮かべた。
「天城くん、ありがと。心配してくれて。でも、大丈夫」
「え?」
「この、一見無謀すぎる私の行動……実は狙い通りだから」
「な、なんだって!?」
俺が困惑していると、リナは両手を広げて笑顔を浮かべながら言った。
「とゆーわけで、リナ親衛隊のみんなー! 見てくれたよね?」
リナの周囲に複数のドローンが浮かび上がり、そのカメラが彼女の全身、顔のアップ、そして研究者たちやストレンジャー、檻の中の魔物たちをバッチリ映し出していた。
「悪ーい奴らがいまリアルタイムで悪ーいことしようとしてるトコ、配信中でーす!」
ドローンがカメラを切り替えながら、工場内の全景を捉える。研究者たちの顔、モンスターの檻、作業台に置かれた怪しげな試験管やビーカーが映し出され、全てが世界に向けて発信されている。
「廃墟配信、初めてだけど……これ、同接、最高記録狙えちゃうかも!」
リナが楽しそうに言う一方で、研究者たちは顔色を変えた。
「そ、そんな……全て、バレてしまっただと!?」
「まずい……これが拡散されたら……!」
ストレンジャーが激しく舌打ちしながら周囲を見渡し、研究者たちを急かす。
「逃げるぞ!」
彼らが慌てて逃げようとした瞬間、俺は蒼狼の戦靴の力を発動させ、一気に間合いを詰めた。
「そうはいかない!」
足元が風を切り、俺の体が疾風のように前進する。そのスピードに驚いた研究者たちが後退する間もなく、俺は天狼の槍を振り抜いた。
「はあっ!」
槍の刃がストレンジャーの足元を掬い、彼を転倒させる。同時に、槍の追加効果が発動し、衝撃波が研究者たちを吹き飛ばした。
【天狼の槍】
種別:武器/槍
ランク:A
説明:鋭い刃と高い攻撃力を持つ武器。スキル発動時に追加ダメージを与える能力を持つ。
【付与効果】物理ダメージ+40%、スキル発動時追加ダメージ
「ぐあっ……!」
ストレンジャーと研究者たちが床に倒れ込む。その様子を見たリナが駆け寄り、ドローンのカメラに向かってピースをした。
「やったな! リナ!」
俺は息を整えながらリナに声をかけた。彼女は笑顔を浮かべながら答える。
「言ったでしょ? サポートするって!」
リナと俺はアイコンタクトを交わし、勝利の手応えを感じた。その横では、ドローンが撮影を続け、配信のコメントが次々と流れていた。




