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第四十九話 過去視スキルによる犯人追跡

「さあさあ、これでいいかい? 精がつく食べ物と飲み物をたっぷり用意しておいたよ」


老婆が店内から運んできたのは、たくさんの食料とポーションだった。それを俺はマジックバッグに次々と詰め込んでいく。


「ありがとうございます。本当に助かります」


その横では、リナが感心したようにマジックバッグを眺めている。


「天城くんのマジックバッグってすごいよね。いろいろ詰め込めるし、全然重そうじゃないし……」


「まあ、確かに便利だけど……食料入れるって本来の用途じゃないよな」


リナの真剣な言葉に、俺は軽く笑って返した。


「さっきの過去視で見た映像だけど……」


俺は枯れた畑を見つめながら、リナに語り始めた。


「夜中に、一人の男がこの畑に侵入してきた。そして《生命力吸収ドレイン》って魔法を使って、この魔薬草の生命力をすべて吸い取ったんだ。その力は一匹の魔物に吸収されて、魔物は一回り大きくなって……それで、男と一緒にその場を去っていった」


リナは目を丸くしながら俺の話を聞いていた。


「そんなことが……」


小さく呟いたリナが、俺の顔をじっと見つめる。


「天城くん、すごいね。そんなことまで分かっちゃうんだ……全然ゴミスキルじゃないじゃんね」


そう言いながら、小さな声でぼそっと漏らした。


「カッコいい……」


「え?」


「う、ううん! なんでもない!」


慌てて首を振るリナに、俺は首を傾げながらもそれ以上追及するのはやめた。


「でも、その過去視で見た犯人、暗がりの中で人影と魔物だけだったんでしょ?」


「まあ、そうだな」


「だとしたら……手がかりが広すぎて、どうやって探していいか迷っちゃうね。魔物をダンジョンの外でも使役できるのって、《魔物使い(ビーストテイマー)》か《死霊使い(ネクロマンサー)》くらいだよね。その線から当たってみる?」


リナが首を傾げながら提案してくる。その冷静な分析に感心しつつ、俺は首を横に振った。


「いや、犯人の痕跡を追う方法はある」


「えっ?」


リナが驚きの声を上げる中、俺は続けた。


「さっきの過去視、時間にして大体1週間前くらいだった。だったら、その犯人が出て行った道を、片っ端から《過去視》で辿っていけばいい」


「道を辿る……?」


「ああ。俺がやるのは、犯人が去っていった方向を追い続けることだ。過去視で道を視て、少しずつ逆再生みたいにして、ルートを探してやる」


「そんな……だって、そのスキルってなんどもなんども使用して、気力も体力も使うんだよね?」


リナの顔が不安そうに曇る。


「天城くん、倒れちゃうよ!?」


彼女の言葉には、純粋な心配が込められていた。それでも、俺は静かに首を振る。


「それでも構わない。俺がやれることならなんだってする」


リナの目を見ながら、俺は言葉を続けた。


「今、初めて自分のゴミスキルが役に立ってるんだ。絶対にこの機会を無駄にしたくない」


「天城くん……」


リナが小さく呟いた後、拳を握りしめて顔を上げた。


「よし! わかった! だったら私もとことんサポートするよ!」


「リナ……」


「ありったけの回復ポーションを準備しておくね。それに、疲れたら私の膝枕も!」


そう言ってリナが冗談っぽく笑う。その無邪気な笑顔に、思わず俺もフッと笑みを漏らした。


「ありがとう。助かるよ」


「任せて! 天城くんがやるなら、私も全力で協力する!」


「さあ、始めるか」


俺は畑の外れに立ち、犯人が去っていった方向を見つめた。あの時、犯人と魔物がどの道を通ったのか――その足跡を、スキル《過去視》で辿っていく。


「……《過去視》!」


スキルを発動し、視界が歪む。その瞬間、少し前の道の様子が浮かび上がる。そこには、足跡のようなわずかな痕跡が残っていた。


「よし、見えた。次だ」


俺は再びスキルを発動し、少しずつ犯人の痕跡を遡っていった。


「天城くん、無理しないでね! 言ってくれたらすぐにマジックバックから回復ポーションを渡すから!」


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