第四十五話 ゴミスキルへの追求
ギルドリーダーの真剣な視線が、まるで心の奥まで見透かしてくるように感じる。
「えっと……」
「そういえば、私も気になってたかも!」
隣のリナが、唐突に話に割り込んできた。
「だって、天城くんのアイテム、全部A級だったでしょ? あんなの、普通の冒険者じゃ絶対集められないよ!」
リナの興奮気味の声に、俺は内心で溜息をついた。
(なんでこんな時に余計なことを……)
少しだけ躊躇したが、嘘をつくわけにはいかない。俺は静かに答えた。
「……家の近くにあるジャンク商会と、D級ダンジョンで見つけました」
「ジャンク商会? D級ダンジョン?」
イザナが眉をひそめる。驚きと疑問が混ざった表情だ。
「そんなところにA級アイテムがあるはずがない。いったいどういうことだ?」
さらに深掘りされ、俺は覚悟を決めて続きを話した。
「実は……ランクFのゴミアイテムになっていたものたちを、俺のスキルで蘇らせたんです」
「スキルで蘇らせた……?」
イザナはさらに興味を示し、身を乗り出してきた。
「どういうことだ? キミが持つスキルというのは……?」
イザナは手元の書類を確認しながら続ける。
「入団書類によれば、キミのスキルは《過去視》。1秒前の過去を見るという……正直に言うと、あまり役に立たないスキルだ」
ギルドリーダーからはっきりとそう言われ、俺は苦笑した。
「これでどうやってF級のガラクタをA級レアアイテムに?」
「すみません、深くは言えません。でも、今言ったことは本当のことです。店から盗んだり、人から奪ったものではありません」
俺の答えを聞いたイザナは、しばらく沈黙した後、小さく頷いた。
「……そうか。分かった。信じよう」
イザナは模擬戦で戦った男――ウォルターに目を向けた。
「キミの闘志は、このウォルターが証明してくれているからな」
ウォルターがペコリと会釈する。
「彼の戦い方は見事でした。スキルやランクに関係なく、その覚悟は本物です」
その言葉に、イザナは微笑みを浮かべながら続けた。
「キミはそのスキルを自分なりに工夫し、応用して素晴らしい力を発揮することに長けているようだな。諦めないその力、我がギルドでも期待しているよ」
隣のリナが、腕を組みながら少し不満そうな顔をしている。
「そんな秘密、私には教えてくれなかったんだ」
「……別に秘密にしてたわけじゃない」
「私たちってそんな仲だっけ?」
「いや、まだ会って間もない単なる知り合いだけど!?」
「えー? パートナーなんだから、もっと何でも教えてくれてもいいじゃん!」
リナがむくれた顔をしている中、突然思い出したかのように言った。
「だって、私パンツまで見せてあげたのに!」
「はぁ!?!」
俺は全力で声を上げた。同時にイザナが驚きの声を漏らす。
「パ、パンツだと……!?」
「いやいや、誤解です! 誤解ですから!!」
俺は必死に否定しながらイザナに向き直る。
「リーダー、これは本当に違うんです!」
「何が違うのか、具体的に説明してもらおうか」
イザナの視線が冷静に見えつつも、どこか興味深そうなのが怖かった。
「リナ! 今すぐ訂正しろ!」
「ふふっ、冗談だよ! でも、いい感じにリラックスできたでしょ?」
リナが笑顔でウィンクすると、俺は力が抜けて肩を落とした。
「……いったい、なんなんだよ」
イザナは軽く咳払いをして場を整えた。和やかだった空気に、リーダーとしての威厳が戻ってくる。
「ともあれ、天城、リナ。これからギルドの一員として、大いに期待している」
その言葉に、俺たちは同時に頷いた。新たな一歩を踏み出したという実感が広がる中、俺はふと別のことを考えた。
「あ、そうです」
俺は意を決して口を開いた。
「一つお伺いしたいのですが」
「なんだ?」
イザナが興味深そうに眉を上げる。
「アカツキブレイドのメンバーリスト……できれば顔写真付きのものは見れたりしますか?」
「ギルド名簿ということだな?」
イザナは少し考え込むように視線を落とした。
「それなら私の権限で閲覧許可を出そうと思えば出せるな」
「それを見せてもらうことはできませんか?」
俺がそう尋ねた瞬間、イザナの表情が僅かに変わった。目が薄く、険しくなる。




