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第四十三話 巨大ギルド本部ビル

試験会場のホールには、冒険者たちの緊張が漂っていた。結果発表を待つ中、俺もリナも口を開かず、ただ掲示板に表示される名前のリストを見つめていた。


(頼む……)


試験の疲労がまだ残る体を支えながら、静かに自分の名前を探す。そして――。


「やった……!」


俺の名前がリストに載っているのを見つけた瞬間、思わず拳を握った。


「私も! やったー!」


隣でリナが飛び跳ねるように喜んでいる。彼女も見事に合格を勝ち取ったようだ。


「天城くん、見て! 私たち二人とも合格だよ!」


リナが俺の腕を掴みながら、嬉しそうに笑う。その眩しい笑顔につられ、俺も自然と口元が緩んだ。


「本当に……やったな」


しばらくの間、俺たちはその場で喜びを噛みしめた。試験の疲労も一気に吹き飛び、胸の中に達成感が広がる。


「天城くん、絶対いけると思ってたよ!」


リナが満面の笑みで言ってくる。


「いや、リナの方がすごかっただろ。模擬戦の動きとか完璧だったし」


「そんなことないって! 天城くんの戦いだってすごかったよ!」


その明るい声に、俺は小さく苦笑した。


「それにしても……今回の合格倍率、100倍だったんだって!」


「……100倍?」


俺は耳を疑った。試験官からも説明があった通り、今回の入団試験には数千人もの応募があった中で、合格者はわずか数十名だった。


「そんな試験に二人とも受かるなんて、すごくない?」


「……まあ、そうだな」


自分がその中にいるという実感が湧かないまま、リナの明るい声に引っ張られるように喜びを感じ始めた。


そんな中、ホールの端で肩を落として帰っていく冒険者たちの姿が目に入った。


「……あれ?」


帰っていく彼らを見て、ふと思い出す。


(模擬戦の時、俺を煽ってたオーディエンスたちか……)


試験に落ちた彼らは、今とは打って変わって落胆の色を隠せない。その姿を見て、胸の中に妙な感情が芽生えた。


(あの時、彼らは俺を笑ってたけど……)


「天城くん、何ぼーっとしてるの! 次、次!」


「……ああ、分かった」


翌日、俺たちは『暁の刃』の本部ビルへと向かった。高層ビルのエントランスは、威圧感と洗練されたデザインが入り混じり、明らかに一流のギルドの本拠地だと分かる。


「ここで……入団式をやるのか」


俺は緊張を隠せず、深呼吸を繰り返していた。


「ねえ、ここ撮影OKかな?」


隣でリナがキョロキョロしながら尋ねてくる。


「いや、ダメだと思うぞ……」


「そっかー。残念! 絶対映える場所なのになー!」


リナは少し残念そうにしながらも、すぐに笑顔を取り戻した。


俺は改めてビルの上層階を見上げた。このビルの最上階には、『暁の刃』のギルドリーダーがいるらしい。これから俺たちは入団式に参加し、正式にギルドメンバーとして迎えられる。


(エドガーを殺した冒険者――)


脳裏には、過去視で見た彼の記憶が蘇る。彼の記憶に刻まれた裏切り者たちの顔、装備、そしてギルドのマーク。どれも忘れることはない。


(この何千人ものメンバーがいるという巨大ギルドの中で、あいつらを見つけられるのか……?)


不安と焦りが胸を掠める。それでも、俺は心の中で静かに誓った。


(必ず見つけてやる。エドガーの無念を晴らすんだ。たとえ偽善であっても)


「むぎゅ」


突然、頬に鋭い痛みが走った。


「いって! 何するんだよ!」


振り返ると、リナがニコニコしながら俺の頬をつねっていた。


「なんか緊張してたから、リラックスさせてあげたんだよ!」


「リラックスどころじゃないって……!」


俺が文句を言うと、リナはいたずらっぽい笑顔を浮かべた。


「それとも、ほっぺにキスのほうがよかった?」


「……!?」


リナがピンク色の唇を尖らせてくる。その仕草に、俺は完全に言葉を失った。


「ふふっ、冗談だよ!」


そう言って彼女が笑うと、俺は肩を落として溜息をついた。


「いったい、なんなんだよ……」




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