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第四十二話 入団模擬戦③(決着)

全身に広がる痛みを無視し、俺は槍を杖代わりにしてゆっくりと立ち上がった。視界はぼやけ、息が荒い。それでも、足はまだ動く。


「もう降参するか?」


男が剣を下ろしながらこちらに声をかけてきた。その顔には余裕の笑みが浮かんでいる。


「まあ、降参しても心配することはない。模擬戦は勝敗だけが審査の全てではなく、途中の戦いもしっかり評価として――」


「……御託はいいから、さっさと再開しますよ」


俺の言葉に、男が一瞬だけ目を見開いた。


「何?」


「それとも、負けるのが怖いんですか? 手練のギルドメンバーさん」


そう挑発すると、男の口元が好戦的な笑みを浮かべた。


「いいだろう」


彼は剣を構え直し、目に光を宿した。


「どちらかが気を失うまで、勝負だ!!」



男が一気に間合いを詰め、再び剣スキルを発動させた。その刃が青白い輝きを放ち、音を切り裂くような速度で迫ってくる。


「《ウィンドブレード》!」


風の刃が空気を揺らしながら襲いかかる。俺は蒼狼の戦靴の力で間一髪でかわし、素早く距離を取った。


「どんどん行くぞ!!」


男が冷静に呟きながら剣を構え直す。その余裕ある態度が、彼の実力の高さを物語っていた。



俺が距離を取って体勢を立て直そうとする間に、男は静かに剣を下ろした。そして、何事もなかったように一歩後退する。


(……?)


一瞬だけ違和感を覚えたが、次の瞬間、その理由が分かった。彼の口がゆっくりと呪文を紡ぎ始めていた。


「さあ……もう一度!」


男が剣を掲げると同時に、その周囲に炎の渦が巻き起こる。そして、彼の刃先が赤く輝き、熱風が周囲に広がった。


「《バーストフレア》!」


男が放った炎系の高位魔法が、一気に俺を襲った。空間全体が熱で歪むほどの威力を持つ炎が一直線に迫ってくる。


「くっ……!」


足を動かそうとしたが、間に合わない。


しかし!!


「……この時を待っていた!!」


俺は素早くマジックバッグを開き、中から盾を取り出した。


【金剛の盾】

種別:防具/盾

ランク:A

説明:古代の魔導士が作り上げた防御の名品。同ランク以下の魔法攻撃を完全に無力化する力を持つ。

【付与効果】魔法無効化、耐久性+200%


(これが……城戸との戦いで使った盾だ。元々はひび割れたジャンク品だったものを、俺の《過去視》で進化させたんだ)


炎の波動が盾に直撃し、その全てを吸い込むように消し去った。


「なっ……!?」


男の表情が驚愕に歪む。


「そんなバカな……!」


彼の呟きが耳に届く中、俺は盾を構え直して立ち上がった。


「今だ!!」


盾を下ろし、蒼狼の戦靴の力を使って一気に間合いを詰める。男の懐に飛び込むと同時に、俺は天狼の槍を振りかざした。


「いっけえええええ!」


槍の刃が彼の肩口に直撃する。その瞬間、槍の追加効果が発動し、衝撃波が彼の体を貫いた。


【天狼の槍】


種別:武器/槍

ランク:A

説明:鋭い刃と高い攻撃力を持つ武器。スキル発動時に追加ダメージを与える能力を持つ。

【付与効果】物理ダメージ+40%、スキル発動時追加ダメージ


「ぐああっ……!」


男がダメージを受け、そのまま膝をついて倒れ込む。そして、完全に動きを止めた。


「やった……」


俺は槍を下ろし、息を整えながらその場に立ち尽くした。観客たちは一瞬の静寂の後、ざわめきを上げる。


「……マジかよ」

「ランクDが、あの模擬試験官を……?」


そんな中、リナの歓喜の声が響く。


「天城くん、やったじゃん!! すごい! さいっこうだよ!!」


彼女が大声で騒ぎながらエリアに駆け寄ってきた。



「すごすぎるよ、天城くん!」


リナが勢いよく俺に抱きついてきた。その瞬間、何か柔らかい感触が胸に当たる。


「ちょ、ちょっと……!」


「嬉しすぎて我慢できないもん!」


彼女の明るい笑顔に、俺はどうにも言葉が出なかった。周囲の視線も感じる中、俺は顔を真っ赤にしながら視線を逸らした。


「……柔らかい……当たってる……!!」


「ん? 何か言った?」


くっついたまま、キョトンとするリナ。


距離が近すぎて、彼女の甘い香りも匂ってくる。


「いや、なんでも……それより早く離れて!!」


「えー、いいじゃん。けち」


リナが笑顔で離れると、俺はぐったりと肩を落とした。


「いったい……なんなんだよ」


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