第三十話 新たなA級アイテム
「しまった……!」
床の遅滞魔法で動きを封じられたまま、鋭い剣が俺の胸元を狙って突き出される。その一撃は容赦なく、あと数秒で俺の体を貫くだろう。
(どうする……!)
焦りが胸を支配し、思考が鈍くなる。目の前の鋭い刃がゆっくりと迫ってくるように感じられる中――
《アレを使え》
頭の中に、低く響くあの声が蘇った。
「!」
俺は無意識にマジックバッグを掴み、突き出される剣に向かってバッグを差し出した。
「うああああああっ!!」
「な、なにぃ!?」
目の前で起こった現象に、剣を持った男が驚愕の声を上げる。彼の剣の刀身が、マジックバッグに吸い込まれていったのだ。
(とっさに掲げたバッグが、剣を吸い込んだ!?)
俺は驚きながらも、その隙を見逃さなかった。剣を失い、呆然とした男に対し、無我夢中で槍を構え直した。
「ぐはっ!」
目の前のみぞおちに槍を突き入れる。鋭い刃が突き刺さり、男が苦痛の叫びを上げる。同時に、槍の追加効果が発動した。
【天狼の槍】
種別:武器/槍
ランク:A
説明:鋭い刃と高い攻撃力を持つ武器。スキル発動時に追加ダメージを与える能力を持つ。
【付与効果】物理ダメージ+40%、スキル発動時追加ダメージ
槍を突き刺された男の周囲に衝撃波が広がり、隣で斧を構えていた男もその勢いで吹き飛ばされた。
「ぐああっ!」
壁に叩きつけられ、斧を落とす男。その姿を見た杖を持った男が、明らかに焦りを浮かべながら叫ぶ。
「い、いったい何が起こったんだ!?」
少し距離を取っていた彼は、内情を理解できずに混乱しているようだった。
「よし……今だ!」
俺は素早くマジックバッグを開き、先ほど吸い込んだ剣を確認する時間もなく、新たな武器を取り出した。
【聖剣エクレール】
種別:武器/剣
ランク:A
説明:光属性の魔法を込めた剣。攻撃範囲が広く、魔法を併用した高威力の一撃を繰り出すことが可能。
【付与効果】光属性ダメージ+60%、追加範囲攻撃
「『聖剣エクレール』! そうだ! この剣なら……!」
俺は聖剣を力強く握りしめ、再び杖を構えた男を睨む。しかし、足元の遅滞魔法は依然として俺の動きを封じている。
「へえ、いい剣持ってるじゃねえか。でも、その足元じゃ意味ねえよな!」
杖を持った男が、余裕たっぷりの笑みを浮かべながら挑発してきた。
「関係ない!」
俺は叫びながら、聖剣を構え直した。足元の粘着性は依然として俺の動きを制限しているが、それでも振り切る覚悟を固める。
「きっとこの剣は、振りぬくだけでお前に届く……!」
覚悟を決めた俺は、全力で聖剣を振り抜いた。その瞬間、剣から放たれた光の波動が音を立てながら通路を突き抜けた。
「なっ……!」
杖を持った男は何が起きたのか理解する間もなく、その波動に包まれた。光の力が彼を飲み込み、激しい衝撃で彼の体を弾き飛ばす。
「ぐはっ……!」
壁に叩きつけられ、杖を落とす男。その姿を見て、俺は聖剣を握りしめながら息を整えた。
「これで終わりじゃない……!」
俺は周囲を見渡しながら再び聖剣を構え直した。3人の男たちはまだ完全には戦闘不能になっていない。だが、彼らの動きが鈍くなっているのを感じる。
「さあ、反撃の時間だ!」
再び戦闘態勢を整え、俺は目の前の敵に向けて意識を集中させた。
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二作目の新作も連載を開始させていただきました。
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異世界どうぶつのもり ~魔物とショップ機能とDIYでゆるく過ごす楽園スローライフ。転移直後に背負わされた借金三十億円を返すのなんか楽勝です~
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