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第二十九話 悪党との決死の攻防


ブラッククロウズの3人が一斉に動き出した。鋭い剣が光を反射し、大きな斧が瓦礫を砕きながら迫ってくる。さらに、杖を構えた男が呪文を詠唱し始めた。


「くっ……!」


俺は右手の杖と左手の槍を構え直し、迎撃態勢を取る。まずは斧を持った男が突進してきた。その一撃を蒼狼の戦靴の俊敏性でかわしつつ、左手の槍で剣を振り下ろしてきた男の刃を受け止める。


「重い……!」


剣の一撃を受け流すだけでも腕に響く衝撃が伝わってきた。その隙を突くように、呪文を詠唱していた杖使いが魔法を発動させる。


「《アイススパイク》!」


足元から鋭い氷柱が突き上がり、俺は間一髪で横に飛び退いた。


「へえ、低ランクのくせにやるじゃないか!」



剣を持った男が再び間合いを詰めてくる。それに合わせるように、斧を振り回す男が瓦礫を粉砕しながら突っ込んでくる。俺は槍を振るいながら必死に距離を保とうとした。


(連携が取れてる……!)


彼らの動きは明らかに訓練されたものだった。一人一人の攻撃力も高いが、それ以上にチームとしての動きが洗練されている。



「ぐっ……!」


俺は蒼狼の戦靴の俊敏性をフル活用し、一瞬の隙を突いて後方に飛び退いた。その動きが彼らの間合いからかろうじて抜け出す。


「これで……!」


安全な距離を確保した俺は、右手の蒼炎の古杖を構え直し、炎の力を込めようとした。


「《フレイムバースト》!」


だが――何も起きない。


「なっ……!?」


何度も魔法を発動しようとするが、杖は沈黙したままだ。


(魔力が……切れた!?)


俺は愕然とした。この世界では、魔法には二つの種類がある。杖などに込められた魔力を使用して発動するタイプと、使用者自身の魔力(MP)を練って発動するタイプだ。


杖を使うタイプは、使用者のMP消費を抑えられるが、使える魔法はあらかじめ杖に込められたものだけ。一方、自身のMPを練るタイプは、習得した魔法を自由に使えるが、消費が激しい。


俺の場合、もともとFランクのストレンジャーで魔力はほぼゼロ。これまでの魔法は、すべて杖に込められた力で発動していた。


(その杖の魔力が……今、尽きたのか……!)


焦りが胸を支配する。杖が使えない以上、俺の攻撃手段は槍だけだ。


「さっきまで威勢が良かったのになぁ!」


剣を持った男が嘲笑しながら再び間合いを詰めてきた。俺は槍を振り回しながら応戦するが、同時に杖使いが再び呪文を詠唱する。


「《ストーンボルト》!」


飛来する石弾が俺の腕を直撃する。


「ぐあっ!」


その衝撃でバランスを崩し、斧を持った男の横薙ぎをまともに受けて吹き飛ばされた。


「くそっ……!」


壁に叩きつけられた俺の体に鈍い痛みが広がる。指輪の自動回復効果が少しずつ体力を戻してくれるが、その回復速度は追撃のダメージに追いつかない。


(このままじゃ……)


槍を握り直しながら、俺は焦りを覚えた。この状況を打開するには、マジックバッグで他のアイテムに切り替えるしかない。


(だけど、そんな隙は……!)


「《スロウフィールド》!」


杖使いが新たに魔法を発動した。床がどろどろに変化し、その粘着性が足の動きを封じていく。


「しまった……!」


蒼狼の戦靴の俊敏性も、足場が奪われては発揮できない。体が重くなったような感覚に、さらなる焦りが広がる。


「とどめだ!!」


剣を持った男が雄叫びを上げ、鋭い刃を突き出してきた。突き込まれた剣先が俺の胸元を狙い、わずかな余裕もなく迫ってくる。


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