第二十四話 ダンジョンボス戦①
廃墟の迷宮の奥へ進むと、突然視界が開けた。狭い通路から一転して、広大な空間が目の前に広がっている。瓦礫が散らばり、天井は高く、部屋には不気味な赤い光を放つオブジェがうっすらと見えていた。
(……あれがダンジョンコアか)
コアの位置は、部屋のさらに奥。だが、そこに向かう道は、巨体の影によって完全に塞がれていた。
「……ここがボス部屋か」
そう呟くと、手に汗が滲むのを感じた。この迷宮を支配するボス――ゴーレムがその存在感を誇示するように立ちはだかっている。
(ここを乗り越えなきゃ、次には進めない……)
自分に言い聞かせるように深呼吸をし、足を進めた。
部屋の奥に潜んでいた影が動き出した。低い唸り声が響き、巨大な岩の体がゆっくりと姿を現す。その圧倒的な重量感と存在感が、部屋全体に緊張をもたらしていた。
「デカい……」
目の前に立つゴーレムは、全身が岩で構成された巨体。その目には赤い光が宿り、こちらをじっと睨んでいる。一歩踏み出すたびに足元の床が揺れ、瓦礫が音を立てて崩れる。
【巨大ゴーレム】
種別:ボスモンスター
ランク:C
HP:150/150
攻撃力:30
説明:廃墟の迷宮を守護するボスモンスター。圧倒的な防御力と耐久力を持ち、熱耐性も備えている。
【スキル】
1.岩砕き:拳を振り下ろし、広範囲にダメージを与える
2.耐熱装甲:炎属性ダメージを軽減する
ゴーレムが拳を握りしめ、唸り声を上げた。その巨体が動くたび、地鳴りのような振動が体に伝わってくる。
「ここを越えなきゃ……!」
俺は右手に構えた蒼炎の古杖を掲げ、炎の力を込めた。
【蒼炎の古杖】
種別:武器/杖
ランク:A
説明:古代の魔導士が用いた伝説の杖。時間と共に朽ち果てたが、本来の姿を取り戻せば強大な力を発揮する。
【付与属性】過去を呼び覚ます力、炎魔法ダメージ+50%
「《フレイムバースト》!」
放たれた火柱がゴーレムの胸部を直撃する。だが――
「効かない……!?」
炎はゴーレムの表面で弾けるだけで、ほとんどダメージを与えられない。ゴーレムの表面は岩盤のように硬く、さらに耐熱装甲の効果で炎の力を無効化しているのだ。
「なら……!」
左手の天狼の槍を振り上げ、勢いよく突き出す。鋭い一撃がゴーレムの胴体に直撃するが――
【天狼の槍】
種別:武器/槍
ランク:A
説明:鋭い刃と高い攻撃力を持つ武器。スキル発動時に追加ダメージを与える能力を持つ。
【付与効果】物理ダメージ+40%、スキル発動時追加ダメージ
「くそ、これもダメか!」
槍の攻撃も、ゴーレムの硬い装甲には通用しない。巨体は微動だにせず、その赤い目がさらに鋭さを増して俺を睨む。
「どうすれば……!」
焦る俺に向かって、ゴーレムが巨大な拳を振り下ろしてきた。その一撃は空気を震わせ、瓦礫を巻き上げながら床を砕く。
「くっ!」
俺は蒼狼の戦靴の力で後方に飛び退き、直撃を避ける。しかし、拳が床に叩きつけられた衝撃波が俺を吹き飛ばした。
「ぐっ……!」
背中を壁に叩きつけられ、息が詰まる。体中に鈍い痛みが広がり、動きが一瞬止まった。
「まだ……終わらない……!」
拳をつくようにして体を起こし、再びゴーレムを見据える。巨大な体は一歩一歩ゆっくりとこちらに迫ってくる。地面がその重みで沈むのが分かる。
「こうなったら……!」
俺は意を決し、マジックバッグに手を伸ばした。中にある新たなアイテムを掴み、それを手に取る。
「これで……突破する!」




