第二十二話 青ゴブリン殲滅
青ゴブリンの群れが牙を剥き、武器を振りかざしながら突進してくる。その数は50体ほど。狭い通路から一気に広がる部屋へと殺到し、その圧倒的な物量が俺を飲み込もうとしていた。
「うわあああっ……!」
耳を劈くような獣の叫び声が響き渡る。咆哮と共に響く金属音、ざらざらとした砂利を蹴り上げる音――化け物じみた動きが視界いっぱいに迫る。
(……ここだ!)
俺は右手の杖を高く掲げる。その先端が赤く輝き、炎の力が静かに渦を巻き始めた。
【蒼炎の古杖】
種別:武器/杖
ランク:A
説明:古代の魔導士が用いた伝説の杖。時間と共に朽ち果てたが、本来の姿を取り戻せば強大な力を発揮する。
【付与属性】過去を呼び覚ます力、炎魔法ダメージ+50%
「《フレイムバースト》!」
力強く呪文を唱えると同時に、杖から放たれた火柱が青ゴブリンたちの中心に直撃する。
「ギャアアアッ!!」
ゴブリンたちが獣のような断末魔の叫び声を上げながら吹き飛ばされる。火柱の爆発が部屋全体に響き渡り、熱風が俺の髪を揺らした。
直撃を受けた約20体のゴブリンが、その場で灰のように崩れ落ちる。
だが、それでも群れは崩れなかった。後ろに控えていた30体以上のゴブリンがなおも迫り来る。
「次だ!」
俺はさらに杖を振り翳し、連続で炎魔法を発動させる。
「《フレイムバースト》!」
爆炎が再びゴブリンたちの中心を貫き、周囲を一瞬で熱と光に包む。狭い通路では魔法の効果範囲が限られるが、広い部屋ならその力を最大限に発揮できる。
(これが作戦の狙いだ……!)
俺は内心で作戦を振り返る。
(狭い通路で戦えば、魔法の爆発は一部のゴブリンにしか当たらない。だが、広い部屋なら……)
主人公の視線は群れを飲み込む火柱に向けられる。
(一度に多くのゴブリンを巻き込める!)
「よし、もう一発!」
杖を掲げ、次々と魔法を放つ。部屋全体が炎の嵐に包まれる中、ゴブリンたちは次々と倒れていった。だが――
「くそっ!」
爆炎の中から、2~3体のゴブリンが生き残り、こちらへ向かって猛然と突進してきた。
青ゴブリンたちの目は血走り、よだれを垂らしながら武器を振りかざして迫ってくる。その勢いに、俺の喉が一瞬鳴る。
(ここで怯むわけにはいかない!)
俺は気合を入れ、左手に握っていた槍を構え直す。
【天狼の槍】
種別:武器/槍
ランク:A
説明:鋭い刃と高い攻撃力を持つ武器。スキル発動時に追加ダメージを与える能力を持つ。
【付与効果】物理ダメージ+40%、スキル発動時追加ダメージ
「来い……!」
最初のゴブリンが距離を詰める。俺はその瞬間、槍を突き出した。
「そこだ!」
鋭い一撃がゴブリンの胴体を貫き、その場で止めを刺す。だが、槍の力はそれだけでは終わらなかった。
突き刺されたゴブリンを中心に、衝撃波のようなエネルギーが広がり、その周囲にいたゴブリンたちも巻き込む。
バシュッ!
追加ダメージ効果が発動し、ゴブリンたちは吹き飛び、壁に叩きつけられて動かなくなった。
「……やったか?」
俺は槍を振り払い、血を落として深呼吸をする。
部屋の中は、静寂に包まれていた。先ほどまで響いていたゴブリンの咆哮や金属音が、すべて消え去っている。
「……ふう」
俺が肩の力を抜き、部屋を見渡すと、そこにはゴブリンの群れの残骸だけが残されていた。
(終わった……)
俺の耳元で、軽い電子音が響く。
【経験値獲得】
青ゴブリンを討伐しました:50体
350ポイント獲得しました。
ランクポイントを30獲得しました。
【アイテム獲得】
1.【ゴブリンの牙】×10
2.【錆びた短剣】×3
3.【小型ポーション】×2
【ランクアップ】
ランク:F → E
冒険者ギルドでの登録更新を推奨します。
ホロウィンドウに表示された文字を見た瞬間、俺の胸に充足感が広がった。
「やった……」
小さな声で呟きながら、俺は武器をしまい、マジックバッグにアイテムを収めた。そして、改めて装備しているA級アイテムたちを見つめる。
(ありがとう……)
杖、槍、靴――これらがなければ、今の戦いは到底乗り越えられなかった。
(俺を助けてくれたのは、このアイテムたちだ)
俺は静かに礼を言うように頭を下げた。




