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第二百十話 追撃戦のゆくえ

「絶対に逃がさない!」


エメラルド色に光るゴブリンが、信じられない速度でダンジョンの奥へと駆け抜けていった。


一瞬にしてマジックバッグを奪われ、ポーションや予備装備がすべて使えない状態。


こんな危機的状況では、戦闘する前から詰んでしまうかもしれない。


それでも諦めず、俺は全速力でゴブリンを追いかける。


(あの動き……A級モンスター並み、いや下手するともっと上の可能性もある)


エメラルドゴブリンはただの雑魚ではなさそうだ。


“青ゴブリンの呪い”という不穏なワードまで口にしていたし、あまり深く考える余裕はないが、追いついて倒すしかない。


ダンジョンを奥へ進むたびに、石壁が歪むような嫌な空気が身体にまとわりつく。


そんな中、頭上からギシギシと嫌な音が響き、次の瞬間——


「……っ! 危ねぇ!」


【トラップ:崩落する天井】

特定の区画を通ると、まるで罠が発動したかのように天井が崩落し、侵入者を押し潰す。


俺はとっさに後方へ跳んで巨大な岩の塊を回避する。


ドゴォンという轟音が床を揺らし、砂埃が舞い上がった。


「あと一瞬でも反応が遅れてたら終わってたな……」


胸をなで下ろしつつ、再びゴブリンの姿を探す。


視界の先には、わずかに緑色の背中が見えた。


まだ見失ってはいないようで一安心。


急いで走り始めるが、これで終わりとは思えない。


「……!」


先へ進むと、壁や床がぐにゃりと歪んで見える回廊に差しかかる。


見た目がそっくりな道が何本も並び、奥が霧でぼんやりしている。


下手に進めば出口が分からなくなり、永遠に迷い込む恐れすらある。


(こんなもの……一瞬で見破る!)


俺はすぐさま【S級スキル:過去視:極】を発動し、ゴブリンが数秒前にどう通り抜けたかを映像として読み取る。


視界の中に、薄い残像のようにゴブリンの足跡が浮かび上がり、一番左の道を突っ走っていたことが分かった。


「こっちだ」


俺はその残像を頼りに迷い道をあっさりと脱出する。


幻影が消え、普通の通路が続いていた。


「なんだ、この階段……」


崩れかけた石段が斜めに傾き、禍々しい文様がぼんやりと光っている。


そこに足を踏み出した途端、体がふわりと浮くような感覚が襲い、逆さ向きに引っ張られそうになった。


「うわっ……重力が反転してるのか……!」


【トラップ:呪われた階段】

踏み込むと重力が逆転し、最悪天井へ吸い込まれて落下死しかねない。


あわてて壁を蹴り、姿勢を立て直す。


(ここも安全策を探らないと……)


再度過去視:極を使い、数秒前にゴブリンがどう登ったのかを映像として追体験する。


正しい足取りをなぞれば重力は反転しないようだ。


その手順をトレースし、なんとか階段をクリアする。


「続けざまにトラップ攻勢ってわけか……」


通路の先は、両脇に石像が整然と並ぶエリア。


石像の目が青白く光った瞬間、【トラップ:石像の矢】が発動し、何十本もの魔力の矢が一斉に射出される。


「くっ……避けるしかない!」


ポーションや補助アイテムはすべてマジックバッグに入れていたため使用不可能。


だが、まだ装備している【アイテム:蒼狼の戦靴】だけは残っている。


靴に仕込まれた魔力を解放し、一気に素早さを高める。


「遅い!」


まるで疾風のように駆け抜け、矢の射線を紙一重でかわしていく。


かすり傷は覚悟していたが、うまく合間を縫ったおかげで無傷で突破できそうだ。


舌打ちしながらも、エメラルドゴブリンの姿を探す。


(“疾風のポーション”があればさらに楽なんだが……仕方ない)


しかし、視界の端でゴブリンの背中がまたチラついた。


今度こそ捕まえたい。


奥へ進む通路はさらに狭く曲がりくねり、床が崩れている箇所まである。


それでもあのゴブリンは苦もなく抜けていくようだ。


緑色の影が遠ざかりそうになるたび、焦りがこみ上げてくる。


人語を話し、異様な身体能力を持ち、A級モンスター以上の戦闘力。


ただのゴブリンという枠をはるかに逸脱している。


だが、そんなことを考えている暇はない。


「絶対に逃がさない……!」


身体にはすでに疲労が蓄積しているが、ここでゴブリンを逃せばすべてが台無しだ。


呼吸を荒げつつ、過去視:極を連発してゴブリンのルートを読み取りながら、さらに加速する。


足元の瓦礫を蹴り飛ばしながら、奥へと進んでいく。


やがてたどり着いたのは、天井がやたら高く、崩れかけた柱が並ぶ巨大な広間だった。


壁面には古代文字のような模様が刻まれ、どこか神秘的な雰囲気を漂わせているが、全体的に荒廃が進んでいる。


その広間の奥、石でできた玉座のような椅子に、例のゴブリンが余裕の表情で腰掛けていた。


俺のマジックバッグをからかうように弄んでいる姿が見える。


「……返せ!」


息を切らしながら叫ぶが、ゴブリンはニヤリと笑うだけだ。


「クク……」


嫌な笑い声に、背筋がぞわりとする。


そのとき——広間の中央が眩い光を放ち始めた。


「な、なんだ……!?」


光の中から巨大なシルエットが浮かび上がる。


禍々しい闇のオーラをまとった、筋肉の塊のような存在がこちらを睨んでいた。


【ボスモンスター:ゴブリンキング】

種別:敵モンスター

ランク:A

特徴:ゴブリンの王。知性を持ち、戦闘力が異常に高い。

スキル

王の号令:周囲のゴブリンを強化し、ステータスを上昇させる。

巨躯の威圧:体を巨大化させ、攻撃範囲を広げる。

剛拳衝撃:圧倒的な腕力で殴り飛ばし、大ダメージを与える。



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