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第百九十四話 過去に使用されたSSS級スキル


光の中に浮かぶのは、荒廃した都市のように見えるシーン。


炎が上がり、空は赤く染まり、地面が割れている。


そこを巨大な獣のような影がうごめいていて、人々が逃げ惑う様子が見える。


歪んだ景色が次々と切り替わり、神殿のような建物で謎の魔法陣が展開される様子や、幾人ものストレンジャーが結界を維持しているような場面も映し出される。


もしこの映像が、かつて世界を危機に陥れた“悪神”との交戦記録なら、これからの戦いにとって重要な意味を持つはずだ。


(これが……オーブが映し出す“過去の世界”……?)


遠方からはビルが崩壊する轟音、空には厚い煙と漆黒の雲が蔓延っていた。


まるで神話の最終戦争を思わせる破滅的な景色――そこには悲鳴や咆哮が入り混じり、人々の絶望が空気を汚染しているようだ。


しかも、よく見ると周囲には人間の兵士や魔法使いらしき者たちが倒れていて、ある者は塵と化し、ある者は血を流してうめいている。


その混沌の中心に、ただ一人立ち向かっている男がいた。


紫がかったローブをまとい、長く飾りのついた杖をしっかりと握り込んでいる。


その身体には無数の傷や切り裂いた痕があり、ボロボロで見るからに瀕死の状態だ。


しかし――


「貴様らの好きにはさせん……!」


鋭い眼光を向け、男はなおも闘志を失っていなかった。


敵を睨むその瞳には強い意志の炎が宿っている。


この男こそ、大魔導士スぺシリア。


伝承で聞いた名前――“世界を守る孤高の魔導士”。


圧倒的な魔力が彼の周囲の空気を震わせ、足元には輝く魔法陣が展開されていた。


その魔法陣は、過去に俺がどこかで見たような紋様に似ている。


もしかすると、ダンジョン内の遺跡に刻まれていた紋章と同じルーツかもしれない。


それほど古代の力を感じさせる幾何学模様だ。


スぺシリアが視線を上げる。


その先には黒い怪物のような影が覗いている。


その巨体は、普通の生物とは一線を画す“異質”な雰囲気を放っていた。


これが、悪神。


人類の常識では太刀打ちできない、彼方からやってきたとされる謎の超存在。


身体は黒い霧でできているのか、物理的な形を成していないようにも見える。


その周囲には光を歪ませるような結界が漂い、近づくだけで意識を奪われそうなほどの圧迫感がある。


一説によれば、世界を焼き尽くし、生命の循環を断つほどの力を持っているという。


いかなる武器や魔法も効かず、人類が総出で戦っても対抗できなかった――


「があああああっ……!」


悪神は鬱屈した咆哮とともに衝撃波を放つ。


その一撃で、地面が大きく裂けていく。


ここにいる多くの兵士たちも成す術なく吹き飛ばされ、命を散らしていく。


まさに圧倒的な絶望だ。


(こんなの……どうやって戦えばいいんだ?)


映像を見ているだけなのに、心が軋むほどの恐怖を感じる。


しかし、スぺシリアは飛び散る瓦礫を自前の魔力バリアで防ぎ、なおも悪神を睨み続けている。


彼の呼吸は荒く、もう限界が近いことは明白。それでも彼は立ち上がる意志を捨てない――


だが、事態はさらに最悪の方向へ傾く。


スぺシリアの背後から人間の兵士たちが武器を構え、彼を狙う姿が映った。


明らかに“味方”と思われる勢力だが、その目つきは狂気に染まっている。


「お前の戦いは無意味だ! 悪神の力を受け入れるんだ! 新たな秩序こそが正しい!」


「……なぜだ……お前たちまで……」


スぺシリアが苦悶に顔を歪める。


かつては共に戦ったはずの仲間――だが、圧倒的な悪神の力を目の当たりにして、彼らはその闇に魅了され、取り込まれてしまったのだ。


心が折れると、人は“強い力の側にいる方がマシ”と屈服してしまうのかもしれない。


まさに悪神の狙いどおりに。


「俺は……この世界を守るために戦ってきた。お前たちも……一緒だったじゃないか!」


声を震わせるスぺシリア。


しかし、裏切り者たちの瞳にはもう理性が残っていない。


彼らは冷笑を浮かべながら、悪神の尖兵のようにスぺシリアへ迫る。


(なんてことだ……人間同士で争っている場合じゃないのに……)


映像を見ている俺も、思わず歯ぎしりする。


しかし、この状況に猶予はない。遠くでは悪神が再び闇の渦を巻き起こし、戦場を一層闇へと覆い尽くそうとしている。


ここで足止めを食らえば、世界が完全に滅ぶのは時間の問題だ。


「……仕方ない……」


スぺシリアは悲しげな瞳を伏せ、反乱兵たちを一瞬で無力化する呪文を放つ。


彼らに止めを刺すことまではできないまま、しかし先へ進むためには行動が必要だった。


血反吐を吐くように息をつきながら、今度は悪神のほうへ視線を向ける。


「俺がやるしかない」


燃え盛る炎の中、スぺシリアが立ちすくむその姿は絶望的な状況そのものを背負っているようだ。


しかし、その言葉には覚悟が宿っている。


足元に再び魔法陣が輝き始め、周囲の空気がビリビリと雷鳴のように震える。


「……悪神よ……お前をここで食い止める」


口からほとばしる血を拭いつつ、スぺシリアが杖を天へ突き出す。


彼の声が戦場に響きわたり、空間が重く震える。


その呪文は、古代の禁断魔法――


【SSS級スキル:封印の刻印】

効果:悪神を1万年の間封じ込める究極の呪法。



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