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第百八十五話 覚醒者の圧倒的な力


霧竜王が何か吠えようとした瞬間、この波動が竜の鱗を軋ませ、硬質な鎧を剥がすように削り取っていく。


「グルルル……がっ……!?」


防御が無効化された竜の鱗が砕け散り、露わになった生身の表皮に傷が広がる。


竜は尻尾で岩肌を叩きつけ、必死に距離を取ろうと試みるが、杖を握り込んでいる俺の闇波動から逃れるのは困難だ。


「グオオオオ……!!」


息苦しそうに吠える彼に対して、俺は躊躇することなくさらに追撃のスキルを重ねる。


【S++級スキル:終焉の黒閃】

効果:超圧縮した闇の斬撃を繰り出し、対象を完全に破壊する。


闇のエネルギーが杖の先端で黒紫の刃を形成し、鋭く長い剣閃のように伸びる。


そのまま俺は渾身の力で振り下ろし、霧竜王の胸を一気に斬り裂いた。


「グガァァァァ!!」


竜の絶叫がダンジョンにこだまする。


身体を何度も震わせながら、血混じりの霧をまき散らし、巨体が崩れ落ちていく。


しかし。


ダンジョンの床に横たわっていた竜が、かすれた笑い声を上げた。


「ククク……まさか、ここまで追い詰められるとは。だが、お前の本気は見せてもらった」


「……なに?」


竜の身体からひび割れのような光が走り、鱗がまるで殻を破るように剥離していく。


「……!?」


【S+級スキル:真なる変貌】

効果:霧竜王が真の姿へと進化し、すべての能力を大幅に強化する。


霧竜王の姿が激しく光を放ち、巨大な竜形態がばりばりと脱皮するように崩れ落ちていく。


そこから姿を現したのは――人間に近いフォルム。


銀色の髪と金色の瞳を持ち、竜の角や爪はそのままだが、全身が引き締まった筋肉で形作られ、背に翼を残している。


その身から溢れるオーラは先ほどの比ではなく、ダンジョン情報表示がこう示している。


【ボスモンスター:霧竜王・最終形態 ランク:S++】


「ほう……」


「今度は、お前が苦しむ番だ」


霧竜王――もはや竜人のような姿になったボスが笑みを浮かべるや否や、急激に間合いを詰めてくる。


一瞬で視界から消え、気づけば目の前にその鋭い爪が迫っていた。


【S++級スキル:極限雷爪】

効果:高速での接近攻撃と雷の爪による連続斬撃。


すさまじい衝撃が轟き、爪が雷光を伴ってこちらを切り裂く――はずが、俺は闇の障壁で容易に受け止める。


黒い膜が雷の刃を全部吸収し、ショックが腕を小さく震わせるだけで終わった。


「なっ……どうして……?」


竜人化した霧竜王が眉をひそめる。


先ほどまでであれば、その攻撃は一撃で冒険者を何十人も消し去るレベルの破壊力だろう。


それを、覚醒状態の俺があっさり防いだのだ。


逆に俺は彼を睨みつけ、覚醒の力を制御しながら微かな余裕さえ感じている。


「あなたが最後の切り札を出したのであれば、俺も全力で相手をするだけだ」


そう言って杖を振りかざすと、暗黒のオーラが一気に吹き上がる。


杖から漆黒の刃が生まれ、そこに神聖な光が同居するような奇妙な色合いで輝く。


闇のオーラと光の粒子が合わさり、剣の形を作る。


まさに“闇と光の融合”がここに具現化したかのよう。


「やらせるかぁ!」


竜王は最後の意地で雷の爪を繰り出し、その攻撃が空間を震わすが、俺はもう読んでいる。


未来視でもなく、《過去視:極》から得た戦闘経験で最適行動を瞬時に導き出し、最小限の動きでかわした。


「ぐっ……!」


一瞬、竜王がバランスを崩す。


その隙を逃さず、俺は断罪剣を勢いよく振り下ろし、竜王の胸に深々と斬り込んだ。


「グアァァァ……ッ!」


ランクS++にも及ぶ防御を誇るはずの竜王ですら、このスキルには抗えない。


痛恨の一撃を浴びた霧竜王は、その場で膝を突き、血を吐くように絶叫。


「ば、バカな……どうしてここまで……」


呟きながら、竜の人型姿が霧のごとく崩れていく。


近寄れば雷電を浴びせられるはずだったが、今はもう力が失われ、ただの霧と化して消え去ろうとしている。


「……終わりました」


息を荒らげながら、俺は杖を握りしめたまま、ゆっくりと闇のオーラを収束させていく。


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