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第十七話 再びの《ジャンク商店》



放課後、俺は学校を出るといつもの道を外れ、街外れにあるジャンク商店へと向かった。目的地が見えてくる頃には、あの錆びた鉄製の看板と薄汚れた建物が妙に親しみ深く感じるようになっていた。


扉を押して中に入ると、店内には独特の油と金属の匂いが充満している。相変わらず埃っぽい空気にむせ返りそうになるが、今ではそれすら気にならなくなっていた。


「おっ、坊主か。また来たのか」


カウンターの奥で腕を組んでいたマッチョ店員が俺に気づき、声をかけてくる。


「今日はどれくらい持って帰るつもりだ?」


「できるだけ持ち帰ります」


そう答えると、店員はニヤリと笑った。


「ほんと物好きな坊主だな……お前、そんなにガラクタが好きなら、昔の俺みたいになれるかもな」


「昔の……ですか?」


「おう、俺も昔は一流のストレンジャーだったんだぜ。そりゃあ、どんなダンジョンだって攻略してきたし、最高ランクの装備も揃えてた」


店員は腕を組み直し、どこか懐かしむような表情で話し続ける。その姿に、俺は軽く愛想笑いを浮かべながら相槌を打った。


「すごいですね」


「だろ? まあ、怪我で引退してからこうして商売してるがな。いつか俺みたいになりたいなら、もっとちゃんとした装備を手に入れるこった」


「はあ……考えます」


倉庫に入ると、以前と同じようにガラクタが山積みになっていた。今日はできるだけ持ち帰るつもりで、大きな袋を手に取る。盾、宝石、槍の残骸――ガラクタを次々と袋に詰めていく。


「おい、そんなに持てるわけないだろ」


店員が呆れたように声をかけてくる。


「いえ、大丈夫です」


俺はマジックバッグを取り出し、笑みを浮かべながら袋をそっとバッグの中へと入れていった。


「なっ……それ、マジックバッグか?」


店員が目を見開く中、俺は何食わぬ顔でガラクタを次々と収納する。膨れ上がっていた袋はあっという間に空になった。


「お前……どこでそんな高級品を……?」


「まあ、いろいろありまして」


そう答えて頭を下げる。


「保管料と合わせて、このアイテム代は必ず返しますので、もう少しだけ待ってください」


「……まあ、構わんよ。約束は守れよな」


「ありがとうございます」


頭を下げた後、俺は少しおずおずとした様子で店員に尋ねた。


「あの、このお店のアイテムはいつもどこから仕入れてるんですか?」


「ん? 客が売りに来るのがほとんどだな。まあ、それ以外だと……」


店員は少し考え込んでから言った。


「俺がよく行くダンジョンだな」


「ダンジョン?」


「ああ、D級なんだが、廃墟エリアが多くてな。そこにいっぱい武器やアイテムが落ちてるもんで、いらないけど回収してるんだ」


「どこにあるんですか、そのダンジョン!」


思わず身を乗り出す俺に、店員は少し驚いたような顔をしながらも答えた。


「教えてやるよ。だが、D級でも危険はあるからな、死ぬんじゃねえぞ」


「ありがとうございます!」


そう言って店を後にした俺の心は、新たな可能性への期待で少しだけ高揚していた。



家に帰り着くと、すぐに机の上にマジックバッグを広げ、中に詰めたガラクタを一つずつ取り出した。


「さて、どれからいくかな」


昨晩に引き続き、スキル《過去視》でアイテムを掘り起こそうと意気込む。だが、椅子に座った瞬間、全身の力が一気に抜けた。


(……眠い……)


昼の模擬戦と、夜更かし続きの疲労が一気に襲ってきた。気づけば俺は机に突っ伏し、そのまま意識を失っていた。



気がつくと、そこは小学校の運動会の会場だった。トラックを走る自分の姿が見える。運動が苦手だった俺が、必死に足を動かしてゴールを目指している。


「蓮、頑張れー!」


スタンドから母と姉の声が響く。二人とも笑顔で手を振りながら、全力で応援してくれていた。


「蓮ならできるよ! そのまま!」


俺はその声に励まされ、最後の直線を走り抜ける。そして――無事に一等でゴールした。


「やったな、蓮!」


母と姉が駆け寄ってきて、俺を抱きしめてくれる。その温かさを感じた瞬間、目の前が徐々にぼやけていった。




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― 新着の感想 ―
なんで店主はダンジョンでも集めてきてんだよ? 買うというだけで正気か疑うようなゴミなんだから環境汚染やし置いとく土地代やら処理代がかさむだけやん てっきり新人応援したくて買い取る優しい人思ったのに訳分…
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