第百六十話 激突!大刀 鋼VS王天龍
広大な滑走路の中央に立ち、俺――大刀 鋼は大剣を肩に担いだまま、相手を睨みつけていた。
対峙するは、中国S級ストレンジャーの一人、王天龍。
遥か後方に並ぶ戦闘機やヘリコプターを背景に、その巨体はまるで一頭の獣のような威圧感を放ち、滑走路全体を掌握しているかのようだった。
「行くぞ!」
俺は低く意気込むように叫び、両脚に力を込める。
風が吹き抜け、コンクリートの地面にブワリと砂埃が舞い上がった。
「おう、楽しませてくれよ!」
王天龍がごつい棍を構え、バチンッと地面を叩く。
その重い衝撃音が滑走路を振動させ、観衆たちの視線を一瞬で二人に集中させる。
周囲では、人民軍の兵士や仲間たちが固唾を呑んで見守っている。
イザナ、霧島、白石、それに天城……みんなが俺の勝利を信じているはずだ。
(俺が負けるわけにはいかねえ。日本を代表するS級ストレンジャーとして、ここで倒れるわけにはいかねえ)
胸の内には揺るぎない自信が燃えている。
この大剣の破壊力は、そう簡単に止められない。
そう――信じていた。
互いの構えが固まった瞬間、俺は先に仕掛けた。
「ふんっ!」
大剣を豪快に振り上げ、真っ向から斬り込む。
風を切る音がビュンと鳴り、周囲の兵士がざわめいた。
「おお、悪くないな!」
王天龍は棍を水平に構え、一撃を軽々と受け止める。
金属同士が派手な火花を散らし、甲高い衝突音が滑走路にこだまする。
(こいつ、相当な腕力……!)
腕が痺れるほどの衝撃に驚きつつも、俺はさらに連続攻撃を繰り出す。
上段から下段へ、一拍置かずに斬り下ろし、薙ぎ払う。
通常なら防ぎきれない嵐のような猛攻――しかし、王天龍はまるで余裕をもってそれを捌き続ける。
「この程度か?」
彼が不敵に笑いながら言い放つ。
悔しいが、その笑みには明らかな余裕が見えた。
俺は歯を食いしばり、さらに強い力で大剣を叩き込む。
「俺の力、見せてやるよ!」
一旦後退した俺は、大剣を高々と掲げて魔力を込める。
周囲の空気がビリビリと震え、剣身に青白い雷光が走った。
【スキル:蒼雷斬】
効果:雷属性を纏った斬撃で敵の防御を無視してダメージを与える
稲妻が散るような閃光とともに、大剣が唸りを上げて王天龍へ斬り下ろされる。
観衆からは「おおっ……!」というどよめきが起こり、胸が高揚感に満ちる。
「ほう、なかなかだ!」
しかし、王天龍は笑みを浮かべながら、棍を頭上に構えて防御を固めていた。
鋭い雷撃が衝突し、凄まじいスパークが弧を描く。
近くにいた兵士たちが思わず後ずさるほどの迫力――にもかかわらず、王天龍の体勢は揺らがない。
「なっ、そんな……俺のスキルは、敵の防御を貫く技だぞ!?」
「ははは……! S級同士では、スキルとスキル、そして込めた魔力同士で優劣がきまる! つまり、今の衝突は俺のほうが一枚上手だったということだ!!」
王天龍が高らかに宣言する。
「くそっ!」
一旦距離を取った俺は、すかさず背後へ回り込む。
雷光をまとったままの大剣を、今度は王天龍の側面から叩き込もうとした。
「喰らえ!」
身体を捻り、剣の一撃に重心を乗せて放つ。
衝撃が腕に返ってきた瞬間、俺の斬撃は完全に弾かれた。まるで鋼鉄の壁を殴ったかのような手応え――いや、何も通じないまま零れ落ちる感触だ。
「そんな……ありえねえ!!」
「いまの打撃も、俺の価値(勝ち)のようだな」
気づけば、王天龍が何やらスキルを発動していたことに気づく。
【スキル:鋼身】
効果:全身を鋼のように硬化させ、物理攻撃を無効化する。
「なっ……!」
「わかったか。貴様のS級スキルより、俺のS級スキルが一枚上手だったのだ!」
王天龍は待ってましたとばかりに、棍を正面から突き出す。
次の瞬間、鋭い衝撃が俺の腹部を襲った。
「ぐあっ!!」
重厚な一撃で俺の身体は宙を舞う。
視界が一瞬で反転し、背中から地面へ叩きつけられたとき、周囲の音が遠のく。
「大刀くん!」
仲間たちの叫び声が耳に入るが、痛みで意識がぼんやりする。
コンクリートの地面はやたら固くて、息を整えるのも難しい。
「くっ、まだ終わりじゃねえよ!」
歯を食いしばりながら、俺は大剣を杖代わりにして立ち上がる。
額には汗がにじみ、身体のあちこちが悲鳴を上げているが、闘志だけは消えていない。
(奴のスキル……【鋼身】といったか……なんてえ防御力だ……)
今は亡き、藤堂の姿を思い浮かべる。あいつのS級スキル【フォートレスシールド】と同等……いや、それ以上かもしれない。
「ほう、まだ来るのか。いいぜ、相手になってやる」
王天龍が棍を肩に担ぎ、余裕の笑みを浮かべる。
その余裕こそが、俺の怒りの火に油を注いだ。
「おおおおおお!」
再び雷光を纏って突進。今度はフェイントを混ぜながら横から回り込み、一撃を叩き込もうと狙う。
しかし、王天龍の鋼身スキルは依然として健在だ。
鋼鉄のボディに剣先が当たっても、金属を弾く鈍い衝撃音が響くだけで、まるで通用しない。
「無駄だ!」
ガンッ、と棍が容赦なく俺の脇腹を打ちつける。
衝撃で呼吸が乱れ、再び地面を転がる羽目になった。
「どうした? もう終わりか?」
「まだ……終わらねえよ!」
とは言ったものの、身体の震えが止まらない。
雷スキルを連発して魔力を消耗し、鋼身スキルに対する打開策が見つからず、焦りが増す一方だ。
(どうする……どうすればあいつを倒せる!? 今のままじゃ歯が立たねえ……!)




