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第百四十一話 古代ダンジョンのS+級モンスター

視界の先に姿を現したのは、氷の毛並みを纏った巨大熊――氷牙の(Frostfang)グリズリー(Grizzly)


凍てついた牙が鈍く青白い光を帯び、その体格は人間を二、三人飲み込みそうなほどに巨大だ。


しかも、数は三体。


冷たい殺気に満ちた真紅の瞳が、こちらをじっと睨み据えている。


【モンスター:氷牙のグリズリー】

ランク:S

特徴:冷気を操る巨大な熊型モンスター。鋭い爪と牙で物理的に攻撃し、周囲の温度を急激に下げて相手の動きを鈍らせる。


【スキル】

冷気の咆哮:広範囲に冷気を放ち、敵を凍らせる。

氷刃の爪:鋭い爪で敵を切り裂きながら冷気を付加する。



「でかいな……。だが、やるしかない!」


大刀が大剣をガッと握り込み、先陣を切る。


【スキル:蒼雷斬】

効果:雷属性を纏った一撃で敵を圧倒する。


バチバチッと青白い電撃が大剣に宿り、唸りを上げながらグリズリーの一体に叩きつけられた。


轟音と閃光が交差し、怪物の分厚い毛皮の一部が砕ける。


「俺も行く!」


霧島が双剣を構え、一瞬で消えるように動き出す。


【スキル:シャドウステップ】

効果:目にも止まらぬ速さで敵を翻弄しながら連続攻撃。


シュッ、シュッという音とともに、霧島の双剣がグリズリーの巨体に何度も斬撃を刻み込む。


鮮やかなステップワークで背後を取ろうとするが、敵も巨体に似合わない素早さで鋭い爪を振り回してくる。


「甘いな……まだまだこれからだ!」


霧島が闇色の残像を描きながら、さらなるスキルを解き放つ。


【スキル:影斬り】

効果:敵の背後を取るような高速移動と、鋭い一撃で防御を崩す。


まるで影が伸びるように一瞬で背後に回り込み、双剣を振り抜く。


グリズリーの動きが鈍り始めたのを見て、大刀が追撃のスキルを放った。


【スキル:雷光連撃】

効果:雷属性の連続斬撃で敵を圧倒。


「うおおお……!」


バリバリッと雷鳴のような音が響き、大剣からほとばしる閃光が連撃を浴びせる。


驚異的なタフネスを誇るグリズリーも、さすがにダメージを負ったように後退した。


「危ない!」


突然、もう一体のグリズリーが咆哮し、凍てつく爪をこちらに振りかざす。


ガキンッという衝撃音とともに、藤堂が掲げた盾に氷の破片が飛び散った。


【フォートレスウォール】

効果:広範囲に防御壁を展開。


冷気に染まった爪が防御壁を削りながらも、なんとか俺たちへの直撃を防ぐことに成功。


すかさず白石が両手を前に出して眩い魔力を放った。


【光の閃光】

効果:眩い光で敵の視界を奪う。


グリズリーが一瞬目をくらまされ、動きが鈍った隙を逃さず、イザナが重力魔法を放つ。


【グラビティプレス】

効果:重力を一点に集中させ、敵を押し潰す。


ズシリ……と空気が歪むような圧がかかり、グリズリーたちの巨体が地面に押し付けられるように崩れ落ちる。


その隙に大刀と霧島が追撃を加え、ついに三体全てが動かなくなった。


「ふぅ……なんとか倒せたな」


霧島が双剣をしまいながら、安堵の声を漏らす。


戦闘はあっという間だったが、グリズリーの圧力は相当なものだ。


「だが、これはまだ序盤だろうな」


冷静な面持ちでイザナが呟いた。


その言葉に、全員が緊張した面持ちで頷く。


(ここから先、どんな怪物が潜んでいるんだ……。でも、この場所を踏破しないと目的は達成できない。絶対に引き返すわけにはいかない)


大刀が肩をぐるりと回し、思い切り雪を蹴り上げる。


霧島は再び周囲を警戒し、藤堂と白石も次の魔法に備える。


俺は心臓の鼓動を落ち着かせようとしながら、最後にもう一度、灼熱のオーブを確かめるように握りしめた。


「行こう。私たちなら、絶対に突破できる」


イザナは言葉に力を込め、足を進める。


パリッ、パリッと凍りついた通路が、その行く末にさらなる試練が待っていることを予感させるように軋んでいた。


※ ※ ※


氷の虚無ダンジョン、その新たな空間に足を踏み入れた瞬間、ザクッと嫌な感触が伝わってきた。


ここは広大な氷の間――天井からは無数のつららが鋭く突き出し、床には逆さまの棘のような氷がびっしりと並んでいる。


うかつに踏み込めば足を突き刺されそうだし、上から落ちてきても即死レベルだろう。


「なんだよ、ここ……こんな部屋で、一体何が」


大刀が低く呻くようにつぶやく。


俺は慎重に足を進めながら、視線をめぐらせた。

天井に目をやると、鋭い氷の刃が今にも落ちてきそうなほどせり出している。


凍てつく空気が全身を覆い、吐く息が白く染まった。


(嫌な感じがする。ここは、ただの部屋じゃない…確実に何かが潜んでいる)


警戒する俺たちをあざ笑うように、突然ゴゴゴッと空気が揺れ、耳をつんざくような轟音が響き渡った。思わず身構え、振り返ろうとした瞬間、視界の端に巨大な影が映り込む。


「!!」


そこにいたのは、空中に浮遊する巨大なシャチ――しかし、普通の海洋生物とはかけ離れた姿をしていた。


全身は青白い氷の鎧に覆われ、鋭利な背びれがこちらを睨みつけるようにせり出している。


黒い瞳の代わりに、凍てついた冷光がその目に宿り、何か禍々しいものを感じさせた。


【モンスター:氷獄の(FrostAbyss)シャチ(Orca)

ランク:S+

特徴:氷と冷気を自在に操る空中浮遊型モンスター。吸引能力を持ち、周囲の空間を操作する。


【スキル】

氷霧の吐息:広範囲に冷気を放ち、敵の視界を奪う。

極寒の渦:空間を回転させ、対象を吸引する。

冷撃衝突:高速で突進し、大規模な衝撃を与える。


「S+級……!」


白石が目を見開いたままかすれ声で呟く。


「油断するな!!」


イザナが息をのみつつ、低い調子で警告する。


呼吸音が妙にはっきりと耳に響き、心臓がドクドクとうるさいほど鼓動している。


(まずい……こいつ、さっきのグリズリーなんかとは比較にならない。すごい威圧感だ……)




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