第百十九話 妖精を追え!
壁に刻まれた古代文字が、目の前で流れるように意味を成していく。
「これは……なんでだ……急に、頭が理解し始めた……」
俺は自分が古代文字を読めていることに驚きを隠せなかった。
その内容が自然と頭の中に浮かび上がり、意味を成していく。
「天城くん、それ……本当に読めるの?」
白石が不思議そうに尋ねる。
「はい……間違いない。俺にはこの文字が読めます。けど……なんでだ……」
他のメンバーも困惑した表情を浮かべている。
だが、イザナがその場を静かに仕切った。
「その理由は後にしよう。今大切なのは、この壁に書かれた謎を解いて先に進むことだ」
その言葉に促され、俺は文字を読み進めながら、その内容を全員に伝えた。
「どうやら、特定の迷路ルートを辿って、ここにもう一度辿り着けば次に進む扉が開く……そんな内容みたいです」
「特定のルートって、どこだ?」
大刀が腕を組みながら尋ねる。
俺もさらに文字を読み解こうとしたその時――
ピョコン!!
突然、明るい光が弾け、小さな妖精が空中に現れた。
その体は透明感のある輝きに包まれ、大きな瞳がこちらを見つめている。
「キャハハハハ!!」
甲高い笑い声を上げた妖精は、くるりと空中で回転すると、そのまま迷路の奥へと逃げていった。
「待って!」
俺はハッとして叫んだ。
「あの妖精を追うんです! おそらく、あの妖精が進む道が特定のルートです!」
「何!?」
「おい、急ぐぞ!」
「おう!」
全員が一斉に動き出し、妖精の姿を追って迷路を駆け抜けていく。
しかし、その道中は甘くなかった。
最初に現れたのは、鋭い爪を持つ大型の獣型モンスター。
【シャドウフェング】
種別:猛獣
ランク:S
特殊能力:連続攻撃、影潜行
「こいつは俺がやる!」
大刀がすぐに前に出て、必殺スキルを発動させる。
【スキル:蒼雷斬(Azure Thunder Slash)】
彼の大剣が雷光をまとい、稲妻とともに振り下ろされる。その衝撃がモンスターを直撃し、爆発的な雷の力が獣型モンスターを吹き飛ばした。
「次、行くぞ!」
その間に霧島が双剣を振り、次の敵を斬り裂いていく。
【スキル:シャドウステップ(Shadow Step)】
目にも止まらぬ速さで敵を翻弄しながら連続攻撃を繰り出し、モンスターを次々と仕留める。
「さっさと片付けるぞ!」
イザナも手を掲げ、重力魔法を発動させる。
【グラビティクラッシュ】
圧倒的な重力の力で周囲のモンスターが一斉に押し潰される。その威力に、周囲の空気が震えた。
「よし、倒した! このまま追いかけるんだ!」
指揮を取るイザナの声に応え、俺たちはさらに奥へと進んだ。
※ ※ ※
「キャハハハハハハ!!」
妖精の笑い声が響く。
その先に現れたのは、巨大なゴーレムのようなモンスターだった。
【アイアンコロッサス】
種別:守護者
ランク:S
特殊能力:超耐久、自己修復
「これは……やばいよ! これに手間取っていると見失っちゃう!!」
白石が焦った声を上げる。
「俺がやります!」
俺はすぐに断罪剣を抜き、スキルを発動した。
【スキル:光刃剥奪】
効果:光の波動で敵を切り付けることで、敵の装備や能力をレベルダウンさせる。
剣先が淡く光り、ゴーレムの防御ランクを強制的に下げる。その瞬間、硬そうだった体が軋む音を立てた。
「今です!」
「おう!」
大刀が一気に踏み込み、大剣を振り下ろす。
「覚悟しろっ!」
一刀両断されたゴーレムが崩れ落ち、粉々になる。
「やるねぇ……僕たち、コンビネーションもようやくできてきたんじゃない?」
藤堂が軽く笑みを浮かべた。
俺たちは次々と変化する迷宮を進み、妖精を追いかけた。
※ ※ ※
ついに妖精が、元の古代文字が並ぶ壁に戻ってきた。
「元の場所に、戻ってきた?」
「キャハハハハ!!」
妖精が、壁に再び消えていく。
すると……
「ゴゴゴゴ……」
壁が低く唸る音を立てながら動き始め、そこに扉が出現した。
「どうやら、次に進めるようだな。行こう」
イザナが静かに言い、俺たちはその扉を開けた。
※ ※ ※
扉の先に広がっていたのは、巨大な空間。
そして、その中央には異形のモンスターが待ち構えていた。
【ヘルヴァルキュリア】
種別:暗黒の戦乙女
ランク:S+
特殊能力:飛行、魔力吸収、召喚
その黒い翼を広げ、不気味な目で俺たちを見下ろしている。
「ついにS+……!」
白石が小声で呟く。その言葉に、全員の緊張が一気に高まった。
「これまでのS級モンスターとは訳が違う。気を抜くな!」
イザナが周囲に視線を送り、全員が頷く。藤堂は盾を構え直し、大刀は大剣をしっかりと握り込んだ。




