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第百十八話 無限迷宮


迷宮の中、視界の端から姿を現したのは、巨大な異形のモンスターだった。


その体長は五メートルを超え、鋭い牙と黒い鱗に覆われたその姿は、圧倒的な威圧感を放っていた。


【ダークドラゴノイド】

種別:魔獣

ランク:S

特殊能力:暗闇生成、毒牙、再生能力


「これは……厄介だな」


イザナが低く呟く中、大刀が一歩前に出た。


「俺が行く。みんな、俺を援護しろ!」


彼は大剣を構えると、モンスターの正面に立ち塞がった。


大刀の足元に小さな砂煙が舞い上がる。


「霧島、お前もこい!」


「了解だ」


霧島はすぐに双剣を抜き、モンスターの側面へと駆けた。


第一撃は、大刀の大剣から放たれた。


重々しい一撃がモンスターの頭部を目指す。


「くらえっ!」


だが、モンスターは素早く頭を動かし、大剣を紙一重で避けると、その鋭い牙を剥き出しにして反撃を繰り出してきた。


「おっと、危ねえな!」


大刀はすぐに後退し、体勢を整える。


一方、霧島が背後から切り込んだ。


「隙だらけだ」


双剣が黒い鱗を斬り裂く。


だが、モンスターの防御力は高く、傷口からはわずかな血しか滲まない。


「この硬さ、厄介だな……」


霧島が小さく舌打ちをする。


その瞬間、モンスターが尻尾を振り回し、霧島を弾き飛ばした。


「くっ!」


霧島が後退する間、大刀が再び前に出る。


「なら、俺が叩き潰すだけだ!」


大刀の渾身の一撃がモンスターの脇腹に直撃する。


鈍い音とともに鱗が砕け、モンスターが苦悶の声を上げた。


それを皮切りに、モンスターの反撃はさらに激しくなる。


暗闇を生み出す特殊能力で周囲を覆い、牙と爪で襲いかかってきた。


「油断するな!」


イザナの声が響く。


霧島は再び立ち上がり、双剣を握り直す。


「大刀、もう一発いけるか?」


「当たり前だ!」


二人の連携攻撃が始まる。


霧島が素早い動きでモンスターの注意を引きつけ、その隙に大刀が重い一撃を叩き込む。


「これで終わりだあっ!」


最後の一撃がモンスターの首に命中し、その巨体が地面に崩れ落ちた。


「ふう……倒したか」


大刀が肩で息をしながら剣を地面に突き立てた。


「やるじゃないか、大刀」


霧島が軽く笑みを浮かべながら、剣を収めた。


モンスターの巨体を見下ろしながら、イザナが静かに口を開いた。


「古代ダンジョンに油断は禁物だが、モンスターの強さは同じランクSでも、アメリカの死の大渓谷ダンジョンに比べれば戦いやすい」


「どういうことだ?」


藤堂が眉をひそめる。


イザナは壁に手をつきながら続けた。


「このドイツの無限迷宮ダンジョンで最も警戒すべきは、このダンジョン自体の形状だ。進むべき道が突然消えたり、迷路そのものが敵として機能する。それが最大の脅威だ」


その言葉に、全員が改めて周囲を見渡す。


次の行動に移ろうとしたその時、迷路の形状が突然変化し始めた。


壁が動き、先ほどまで進むべき道が完全に閉ざされる。


「なによこれ……? どこが先なのかわからない!」


白石が困惑した声を上げる。


藤堂も周囲を見渡しながら、盾を構え直した。


「霧島、何か手はあるか?」


イザナが霧島に視線を向ける。


霧島は一瞬目を閉じると、頷いた。


「俺に任せてください。《エニグマ・スキャン》を使います」


霧島が淡々と説明を加えた。


「これはアメリカダンジョンで使用した《ウィークポイントスキャン》の空間応用版です。本来は敵の弱点を解析する魔法ですが、周囲の空間や構造物に応用することで進むべき道を浮かび上がらせることができます」


呪文を唱え始めると、双剣が淡い光を放ち始めた。


その光が周囲に広がり、複雑な迷路の中から一筋の光の道が浮かび上がる。


【エニグマ・スキャン】

種別:解析魔法

ランク:A+

効果:対象となる空間の構造や特性を解析し、進むべき道や安全なルートを浮かび上がらせる。


「これだ……進むべき道が見えた!」


「よし、前に進むぞ!」


イザナの合図で、俺たちはその光の道をたどり始めた。


※ ※  ※


しばらく進むと、目の前に巨大な壁が立ちはだかった。


その壁には古代語でびっしりと文章が刻まれている。


「これは……古代語か」


イザナが壁を見上げながら呟く。


霧島が解析魔法を試みるが、首を振った。


「俺の魔法でもこれは解読不可能です」


「どうするんだ……」


白石が不安げな表情で呟く中、俺はふとしたことに気づいた。


「あ……」


「どうした、天城くん?」


イザナが振り返る。


俺は意を決して言葉を発した。


「イザナさん、俺、ちょっとスキルを使ってみてもいいでしょうか?」


「ああ、構わないが……」


俺は静かに《過去視》を発動した。


その瞬間、壁に刻まれた古代語が流れるように頭の中に入り込んできた。


「!! 読める!! 俺はこの文字が読めるぞ!?」


「なんだと……?」


イザナが驚きの表情を見せる中、俺は壁の文章を読み進めていった。


「一体、どうして……」


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