第百九話 ピンクのオーブと緑のオーブ
「こういう魔法を使える人はいますか?」
俺の言葉に、全員が目を見合わせる。
「ああ、それなら俺が……」
藤堂が頷く。
「この魔法は?」
俺が次の提案をする。
「あたしがやれるわ」
白石が冷静に返答する。
「ならこれを……」
次の一手を示すと――。
「私が担おう」
イザナが力強く答えた。
俺が考えた『作戦』の詳細を確認した後、すべてのパーツがそろっていたことを確認した。
さすが、みんなS級ストレンジャーだ。
こんな高度な要求も、すべて満たしてくれる。
俺の提案に全員が頷き、それぞれの役割を引き受けていく。
「いちかばちかだが……やるしかない!」
作戦会議が終わり、全員の意志が一つに固まる。
「みなさん、力をかしてください!」
俺の声が響き渡る。
「「「「おう!!」」」」
全員が一斉に返事をし、準備を整えた。
その時、巨人が不気味に笑い声を上げた。
「つまらぬ。歯応えのない相手であった。そろそろ終わりにしよう」
巨人が腕を広げると、上空に巨大な炎の塊が現れた。
それは徐々に大きさを増し、まるで天を覆うような隕石へと変貌していく。
「……あれが落ちてきたら、終わりだ」
白石が呟く声に、全員の顔が引き締まる。
「いいぞ! あいつは時間のかかる大技にシフトした!」
俺がそう言うと、イザナが頷いた。
「今がチャンスだ!! 作戦開始です!!」
「「「「おう!!」」」」
全員が各自の位置に散り、作戦を実行に移す。
俺は両手に氷刃の双剣を構えながら、巨人に向かって突進した。
武器情報
名称:氷刃の双剣(Frozen Edge Dual Blades)
ランク:A級武器
効果:冷気属性の連撃攻撃、敵の動きを鈍らせる追加効果
「行くぞ……!」
巨人が隕石を作り続けながらも、足を持ち上げ、俺を踏み潰そうとする。
(ここだ……これをかわし切るんだ……!)
俺は足元の飛び石を蹴りながら、巨人の足を回避する。
だが、巨人の動きで溶岩が飛び散り、その余波でダメージを受けた。
「ぐっ……!」
熱が全身に広がる痛みに耐えながら、俺は再び立ち上がる。
「天城、大丈夫か!」
藤堂が遠くから叫ぶ。
「平気です……まだやれます!」
俺は力強く両手の双剣を構え直し、巨人の目を見据えた。
空気は熱気で歪み、足元の飛び石が灼熱に耐えきれず、時折崩れ落ちる音が響く。
巨人が隕石を形成するたびに、周囲の溶岩が煮えたぎり、赤黒い光が周囲を照らしていた。
俺は勢いよく両手の氷刃の双剣を振りかざし、巨人めがけて投擲した。
「くらえええええ!!」
双剣が空中を裂きながら巨人に向かって飛んでいく。
その軌道は真っ直ぐに巨人の足部分を目指していた。
「くくく……」
巨人は微かに笑い声を漏らした。
「そんな矮小な剣2本、我に効くと思うのか?」
その言葉に、俺はニヤリと微笑んだ。
(効くかどうか……試してみろ!)
俺の投擲した氷刃の双剣が巨人の足に突き刺さった。
ザクッという音と共に、冷気がわずかに広がる。
「ふん、こざかしい。なんのダメージにもなっておらんわ」
巨人が余裕の笑みを浮かべながら俺を見下ろす。
その手はまだ空中に掲げられ、巨大な炎の隕石を徐々に形成していた。
隕石はますます大きさを増し、赤黒い光を放ちながら空間を覆い始めている。
「今だ!」
俺は再びマジックバッグに手を入れ、もうひと対の双剣を取り出した。
武器情報
名称:氷刃の双剣(Frozen Edge Dual Blades)
ランク:A級武器
効果:冷気属性の連撃攻撃、敵の動きを鈍らせる追加効果
「むう……同じ剣を2対?」
巨人が疑問の声を漏らしたその瞬間、俺はその双剣も勢いよく投擲した。
ザクッ!
3,4本目の双剣が巨人の脚に深々と突き刺さる。
「どんどんいくぞ!」
さらに俺は次々と双剣を取り出し、巨人の体に向かって投げ続けた。
ザクッ、ザクッ……!
巨人の脚や腕、胴体の至るところに双剣が突き刺さり、冷気が蓄積していく。
「これは……一体どういうことだ!」
巨人の声が揺れる。
冷気属性ダメージが徐々にその炎を弱らせていくのが明らかだった。
しかし、その手を止めることなく、隕石はさらに大きくなっていく。
「天城! 早くしないと、あれが完成するぞ!」
霧島が声を張り上げた。
「分かってる!」
俺は双剣を増殖しながら投擲を続けた。
(少し前に取り出していたピンク色のオーブと緑色のオーブ――これが俺の秘密兵器だ)
アイテム情報
名称:分裂のオーブ(Pink Orb)
ランク:S級アイテム
効果:使用した武器やアイテムを複製する
名称:使用回数増加のオーブ(Green Orb)
ランク:S級アイテム
効果:一度しか使用できないアイテムの使用回数を増加させる
(本来、一つでも手に入れるのが珍しいこれらのS級アイテムを、《過去視:改》のおかげで二つとも手に入れることができた)
俺は分裂のオーブを使用回数増加のオーブで強化し、双剣を無制限に増殖させていた。もちろん、効果には時間制限がある。
(だが、それで十分だ。このボスを倒せるなら――!)
双剣が巨人の体に突き刺さり、楔のようにその動きを鈍らせていく。
巨人の動きが鈍るたびに、隕石の形成がわずかに遅れる。
「むうう……!」
巨人が呻き声を上げながら手を上げ続ける。
「あいつの隕石を完成させるな!」
イザナが冷静に指示を飛ばす。
「分かっています!」
俺はさらに双剣を投擲し、巨人の胴体や両腕に命中させた。
「よし、準備はできた……藤堂さん!」
藤堂が頷き、物質巨大化の魔法を発動する。
名称:エンラージメント(Enlargement)
効果:対象の装備品を巨大化させる
双剣が次々と巨大化し、巨人の体に深く突き刺さる。
「むうう……!」
巨人の動きがさらに鈍くなる。
「白石さん!」
「オッケー!」
白石が杖を振り上げ、氷属性ブーストの魔法を発動した。
名称:アイスブースト(Ice Boost)
効果:氷属性の攻撃力を増幅する
双剣がさらに強力な冷気を放ち、巨人の炎を押さえ込む。
隕石の形成速度が明らかに遅くなっている。
「次だ! 霧島さん!」
「まかせろ」
霧島が解析魔法を発動し、巨人の弱点を見抜く。
名称:ウィークポイントスキャン(Weak Point Scan)
効果:対象の弱点を解析し、詳細な情報を得る
「胸の中央――そこにコアがある!」
霧島が指を指しながら叫んだ。
本来、この解析魔法は時間がかかるため、戦闘には不向き。迅速な行動が要求されるボス戦ならなおさらだ。しかし、巨人が硬直している今なら、問題ない。
「ありがとうございます!!」
目指す先を見出した俺は、ドラゴンスレイヤー《エクレール・アルファ》を構え、巨人の胸のコアに向かって跳び上がった。
スキル情報
名称:光裂十六閃(Radiant Sixteen Slash)
効果:1撃で16回の斬撃を繰り出す。クリティカル率大幅上昇、光属性ダメージ追加、ドラゴン系特攻ダメージ適用
「くらえええええ!!!」
16連撃が巨人の胸元に炸裂し、そのコアを破壊する。
「グアアアアアッ!」
「どうだ!!」
本作をお読みいただきありがとうございます。
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