第百八話 古代ダンジョンボス、灼炎巨人
扉を抜けた瞬間、目の前には再び広大な火山エリアが広がっていた。
灼熱の空間には溶岩が流れ、天井には黒い噴煙が渦巻いている。
「……これが、ボス部屋か」
俺たちは足を止め、緊張した面持ちでその中央に君臨する巨人を見上げた。
全身が燃え盛る炎で覆われ、その威圧感だけで足元が揺れるように感じた。
【ボスモンスター情報】
名称:灼炎巨人(Infernal Titan)
ランク:S級ボスモンスター
特徴:全身を覆う炎と火山の力を操る能力を持つ巨人
スキル:
•フレイムアームスラッシュ:炎を纏った腕で広範囲を薙ぎ払う
•マグマクレスト:足元に溶岩を噴出させて敵を封じ込める
巨人はその赤く輝く瞳をゆっくりと動かし、俺たちを見据えた。そして――。
「汝らか。我の邪魔をするのは」
その重々しい声が響くと、空間全体が震えるようだった。
「愚かな人類よ。古代より汝らは滅ぶべき運命なのだ。
じきに我が地上に出て、人類を我が炎で焼き尽くしてやろう」
巨人は腕をゆっくりと動かし、溶岩を操るように見せながら続けた。
「だからそれまではじっとしておれ。わざわざ死期を早めることもあるまい」
「……暗獄竜ゼルガルムと同じ……!」
俺は思わず呟いた。イザナも険しい表情で頷く。
「言葉を解する知能を持つボス……これまでのモンスターとは違うぞ!」
「やってみせよ。人類。我と力と力のぶつかり合い也」
巨人が両腕を持ち上げ、その巨大な炎の腕がゴオッと燃え上がる。
「来るぞ、フォーメーションを組め!」
イザナの指示で全員が配置についた瞬間――。
「ゴオオオオ!!」
巨人の腕が振り下ろされ、炎の波がストレンジャーたちを薙ぎ払った。
「うわあああああっ!」
全員が吹っ飛ばされ、飛び石の上を転がるように倒れ込む。
「藤堂、大丈夫か!?」
「くっ……どうにか……!」
「溶岩に飲み込まれるな!」
イザナが咄嗟にグラビティグリップを発動し、全員を溶岩から引き戻した。
名称:グラビティグリップ(Gravity Grip)
効果:重力を操り、対象を静止または移動させる
「助かった……でも、なにこの力……」
白石が額の汗を拭いながら呟く。その視線の先では、巨人が再び腕を振り上げていた。
「くそおおおおお!!」
大刀が大剣を構え、スキルを発動させながら巨人に向かって突進した。
スキル情報
名称:蒼雷斬(Azure Thunder Slash)
効果:雷属性を纏った斬撃で敵の防御を無視してダメージを与える
「くらえええええっ!」
雷の力を纏った大剣が巨人の腕に直撃した――が。
「ぬるいぞ、人類」
巨人はその一撃を片手で受け止めると、大刀の体を掴み上げた。
「うわあああああっ!」
巨人の炎が大刀の体を包み込み、そのまま真っ黒こげにしてしまう。
「大刀!!」
霧島と白石が叫ぶ。藤堂が駆け寄り、すぐさま回復魔法を発動させる。
巨人の攻撃はさらに続く。
次の瞬間、霧島が双剣を握りしめながら飛び石の端に倒れ込んだ。
彼の腕や足は真っ赤に焼けただれ、動ける状態ではなかった。
「霧島!」
白石が駆け寄ろうとするが、次の炎の爆風が彼女を襲う。
「きゃあっ!」
白石の体が宙を舞い、飛び石に激しく叩きつけられた。全身に火傷を負い、彼女もまた動けなくなっていた。
「くそっ……!」
大刀に続き、霧島と白石までもが巨人の攻撃に倒されていく。
藤堂が駆け寄り、必死に回復魔法を発動する。
名称:ヒーリングオーラ(Healing Aura)
効果:範囲内の味方のHPを回復し、火傷状態を軽減
「ダメだ……! 僕の魔法じゃ間に合わない!」
藤堂の声に、全員の表情が青ざめた。
「『ハイ・エリクサー』!」
俺は再びマジックバッグからS級アイテムを取り出し、それを霧島と白石に使った。
アイテム情報
名称:ハイ・エリクサー(High Elixir)
ランク:S級アイテム
効果:対象のHPと状態異常を完全回復する
「すまない……助かった……」
霧島が息を整えながら俺に感謝を伝える。
「ありがとう、天城くん……。あたし、もうダメかと思ったわ」
白石が弱々しく微笑む。
「どうする……」
大刀が悔しげに言った。
「巨人の力は想像以上だ。このままじゃ、俺たちは全滅する……!」
イザナも険しい顔で巨人を睨む。
俺は断罪剣を握りしめ、巨人に向かって放った。
スキル情報
名称:光刃剥奪
効果:光の波動で敵のランクをダウンさせる
断罪剣の光が巨人を包み込み、一瞬だけその炎が弱まる。
【ボスモンスター情報(ランクダウン時)】
名称:灼炎巨人(Infernal Titan)
ランク:A級ボスモンスター(ランクダウン中)
効果:攻撃力と防御力が一時的に低下
しかし――。
「……戻った!」
巨人の炎がすぐに元の勢いを取り戻し、その巨体がランクダウン前の威圧感を再び放つ。
(時間が短すぎる……! この技は使えない!)
(なら……俺が持つ全てのA級、そしてS級アイテム。そして俺自身の力を駆使して、この巨人を攻略するしかない!)
その時、頭の中である閃きが生まれた。
「これでどうだ――!!」
俺はマジックバッグに手を入れ、新たなアイテムを取り出した。
それは、鋭い冷気を放つ双剣と、淡いピンク色の輝きを放つオーブ、それに緑色のオーブだった。
武器情報
名称:氷刃の双剣(Frozen Edge Dual Blades)
ランク:A級武器
効果:冷気属性の連撃攻撃、敵の動きを鈍らせる追加効果
アイテム情報
名称:ピンクオーブ(Pink Orb)
ランク:S級アイテム
名称:グリーンオーブ(Green Orb)
ランク:S級アイテム
「どうするつもりだ、天城くん!」
イザナが叫ぶ中、俺は二つのアイテムを構え直し、全員を見渡した。
「お願いです、みなさん、俺の言うとおりにしてくれますか?」




