第百四話 《過去視》以外のスキル
「いくら武器を出し直したところで、俺の武器破壊は何度でもお前の獲物を破壊する!!」
アランが再び戦鎚を振り上げ、俺に突進してきた。
その一撃が地面を叩きつけ、土埃が舞い上がる。
「……そうですか」
俺は静かに断罪剣を構えた。そして、その刃に光が宿り始める。
「なら、こちらも!」
次の瞬間、断罪剣が輝きを放ち、その力がアランの戦鎚を包み込んだ。
【スキル情報】
名称:光刃剥奪
効果:光の波動で敵の武器やアイテムをランクダウンさせる
「なっ……!?」
【武器情報】
名称:崩れた戦鎚(Shattered Warhammer)
ランク:F級武器
効果:大幅な攻撃力低下、耐久力なし
「そんな……俺の戦鎚がランクダウンだと!?」
驚愕の表情を浮かべるアラン。
その手にある戦鎚は、かつての圧倒的な威力を失い、まるで別物のようになっていた。
「いまだ!」
俺がその隙を逃さず、断罪剣を振りかざしてアランの懐に飛び込む。
「ぐあっ!!」
断罪剣がアランの胸元を捉え、彼の体が後方に大きく揺れる。
その衝撃で足元がぐらつく。
「く、くそっ!」
とっさに崩れた戦鎚を振り上げ、防御の構えを取ろうとするアラン。
しかし――。
「はあああああっ!」
俺の断罪剣がアランの防御を強引にこじあける。
S級武器の威力に、F級武器が叶うはずもなく、戦鎚はあっさり弾き飛ばされる。
「!!」
俺の追撃が容赦なく続く。
断罪剣が光の刃を放ち、アランの体を押し込むように切り裂いていく。
「うおおおおおおおっ!!!」
ガキィン!
最後の一撃が決まり、アランの体が宙を舞う。
「がっ……!」
アランの体が中庭の噴水に直撃する。
そのまま倒れ込み、頭から噴水の水を浴びてびしょ濡れになる。
「……これで、勝負アリ、です」
俺が断罪剣を構えたまま静かに言い放つ。
静かに剣を下ろす。
「……これが、俺のスキルです」
観客の中から驚きの声が漏れる。
「まさかランクBが、アランを倒すなんて……!」
「このスキル……どれだけ強力なんだ……」
一方で、日本団のメンバーたちは特に動じた様子もなく、静かに俺を見つめていた。
「すっげぇな、天城!」
大刀が大声で称賛する。
「冷静だったな。お前ならもっといける!」
「……ランクBがこれかよ」
霧島が苦笑しながら呟く。
「マジで、どこまで行くんだ、こいつ」
戦いが終わり、俺は静かに断罪剣を下ろしながら考えた。
(アランの《武器破壊》と俺のランクダウンスキル……全く別物だ)
アランの《武器破壊》は、実際に武器に打撃を与えなければ効果が発動しない。
つまり、警戒されたり距離を取られたりすれば不向きな技だ。
ただし、恒久的な破壊が可能な分、その威力は脅威的だった。
(それに比べて、俺のランクダウンスキルは――)
自分のスキルを振り返る。
ランクダウンは遠距離からでも狙うことができ、さらに武器以外にも応用が可能なはずだ。
アイテムやモンスターの装備、あるいはダンジョンの仕掛けにも……。
(ただし、制限時間がある)
一定時間が経てば、ランクダウンした武器やアイテムは元に戻る。
これはスキルの弱点と言えた。
(でも、このスキルは俺に合っている)
その特性を理解するほど、このスキルが自分にフィットしていることを感じていた。
(断罪剣……かなり使える。俺の戦い方にぴったりだ)
その手に宿る剣の感触に、自分の成長と新たな可能性を感じる。
(ありがとう、レイモンドさん。それに……エドガーも)
「やったじゃないか、天城くん!」
中庭に駆け寄ってきたのは日本団のメンバーだった。
大刀が大声で称賛し、霧島が少しだけ驚いた表情で呟く。
「お前、そこまでやるとはな……」
「本当にすごい! 天城くん、すっかり頼りになるね」
白石が笑顔で手を差し出し、俺がそれに応じる。
「いや、皆さんが見ていてくれたからです。俺一人では……」
謙遜する俺に、藤堂が軽く肩を叩いた。
「お前はもっと胸を張っていい」
その場にエリックが駆け寄ってきた。険しい顔をしていた彼だが、俺に向き直ると深々と頭を下げた。
「申し訳ない! アランが勝手な真似を……日本のストレンジャーたちに迷惑をかけてしまった」
「いえ、気にしていません。結果的には、良い経験になりました」
俺が柔らかく答えると、エリックはさらに感謝の言葉を口にした。
「何でもする。言ってくれたまえ」
俺は少し考えた後、静かに口を開いた。
「では、カリフォルニアの死の大渓谷ダンジョンについて、できる限りの情報を教えてください」
「もちろんだ」
エリックが力強く頷く。
「探索できているところまでのマッピングデータ、それにボス情報など、あらゆるサポートを約束しよう」
その言葉に、日本団のメンバーたちが顔を見合わせて頷いた。
「さあ、パーティの続きをしようじゃないか」
エリックが手を広げて会場を見渡した。




