第百三話 S級ストレンジャー、アランのスキル
ライトに照らされた中庭は、パーティの喧騒とは対照的に静けさが漂っていた。
夜空には星が瞬き、その下で俺とアランが向かい合っている。
「おい、アラン!」
調査官のエリックが険しい顔で声を上げる。
「やめないか! こんな場所で騒ぎを起こすなんて、歓迎会の意味が台無しになる!」
しかし、アランは肩をすくめながら笑う。
「いつものアメリカ式なら、こういうのも日常茶飯事だろ? それに相手もOKみたいだぜ」
アランの目が俺を捉える。
その視線に、俺は静かに頷いた。
「天城くん、本当に構わないんだね?」
イザナが最後の確認をする。その声には少しだけ不安が滲んでいた。
「ええ、大丈夫です。日本団のことをけなされて、黙っているわけにはいきませんから」
その言葉に、イザナは静かに頷き、後ろに下がる。
俺はマジックバッグに手を入れ、取り出したのは一本の槍だった。
その槍は光を反射し、アランの目に映る。
【武器情報】
名称:天狼の槍(Sky Wolf Spear)
ランク:A級武器
効果:物理ダメージ+40%、追加攻撃時にダメージ増幅
「ほう……良い槍じゃねえか」
アランがニヤリと笑う。
「ま、でも俺にはかなわねえけどな!」
周囲の観客がざわつき、誰かの会話が聞こえる。
「アメリカのS級ストレンジャーで、難易度の高いダンジョンをいくつも踏破してきた無頼漢よ」
「かわいそうに、Bランクのジャパンのストレンジャーは相手にならないわね」
その言葉に、俺は少しだけ槍を握る手に力を込めた。
「じゃあ、いくぜええ!!」
アランが巨大な戦鎚を振り上げ、俺に向かって突進してきた。
地面を踏みつけるたびに土が舞い上がり、その迫力に息を呑む。
ゴッ!
戦鎚が振り下ろされると同時に、俺は槍を構えて防御する。
その衝撃で体が押され、後ろに数歩下がった。
「ほらほら、どうしたぁ! お前、こんなんじゃ俺には勝てねえぞ!」
アランが煽る声が響く。
俺は槍を握り直し、再び間合いを詰める。
アランの戦鎚が横薙ぎに振られるのをギリギリで避け、槍を振り上げて反撃に出た。
「チッ、なかなかやるじゃねえか!」
アランが戦鎚で槍を受け止め、火花が散る。
そのまま力で押し返され、俺はまた距離を取った。
「もっとこいよ!」
アランが再び突進してくる。そのスピードに、俺は靴の効果で回避し、攻撃を防ぐ。
【アイテム情報】
名称:蒼狼の戦靴(Azure Wolf Boots)
ランク:A級アイテム
効果:移動速度+20%、ジャンプ力+30%
「すばしっこいやつだ!!」
俊敏性を補ってくれる装備のありがたさを感じながら、俺は槍を握り直した。
「ランクBのくせに……やるじゃねえか!」
アランが一歩後退しながら笑った。
アランが戦鎚を構え直し、低い声で呟く。
「いくぜ……俺のスキル!!」
その言葉と同時に、戦鎚を振り下ろす。
「《武器破壊》!!」
その戦鎚を、とっさに俺は槍で受けてしまう。
すると、槍は激しい音を立てて砕け散った。
「なっ……!?」
手元で砕けた槍を見下ろし、俺は息を飲む。
「おおっ! アランの必殺スキルだ!」
「武器破壊……これであの少年も終わりだわ」
周囲の観客が声を上げる。
「くくく……どうする、ボーイ」
挑発するアランだったが、なぜか日本団のメンバーたちは特に慌てた様子もなく、静かに俺を見守っていた。
「なんだ……? お仲間がピンチなんだぜ?」
その様子に、アランがいぶかしげな表情を浮かべる。
「どうだ、降参するか?」
アランが肩越しに笑みを浮かべて言った。
俺は砕けた槍を見下ろし、一瞬だけ息を吐く。
「いいえ、しません」
その言葉に、アランが目を細めた。
俺はマジックバッグに手を入れ、静かに次の武器を取り出した。
それは、ライトに反射して神々しい輝きを放つ剣だった。
【武器情報】
名称:聖域の断罪剣(Sanctum Judicator)
ランク:S級武器
効果:光属性ダメージ+80%、追加範囲攻撃、自己回復スキル付与
その剣を握りしめた俺が、一歩前に踏み出す。
「これが……俺の次の一手です」
アランが戦鎚を構え直し、俺を見据えた。
その目には、わずかに興味と警戒が混ざり合っていた。
「いいぜ……続きをやろうじゃねえか!」




