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巡り巡る呪い 真と偽の境界に立つ  作者: 雪の都
第一章 目覚めた呪い
7/8

7.休めない時間

命からがら逃げてきた一行。

ネオンが目を覚ますとそこには、クロティス、レイ、フレイの姿があったが、ルナの姿はなかった。

それにより、ちゃんとした説明もできず、4人はすれ違ってしまうことになるのだった。

「ん...ここは?」

ネオンはベッドの上で目を覚ました。

「フレイ王国だ。」

クロティスがそう言うと、ネオンは安心していた。

「大丈夫...だったの?」

「なんとかね...」

ネオンの言葉にレイが反応する。隣はフレイが眠っていて、レイがそれを看病していた。しかし、ルナの姿が見当たらない。

「あれ...ルーちゃんは...?一緒に行ったはずでしょ...?」

ネオンが不安そうに聞くが、返答はなし。二人の顔は暗くなっていた。

「まさか...見捨てたの...?」

「別に...見捨てたわけじゃないんだよネオン、ただ...」

レイがそういい出す前にネオンは声を上げる。

「新しい仲間としてやっていくって決めたのに、見捨てて、それで言い訳?!大事な仲間を見捨てるなんて信じられないよ!」

ネオンは声を上げたことで腕の傷が開いてしまった。当てられていた包帯が赤くにじみ始める。しかし、ネオンは決して口を止めようとはしなかった。

「どうして...答えてよ!なんで何も喋らないの!答えてよ!大事な仲間だったのに...」

ネオンの体は疲労で限界だった。ネオンは泣きながら意識を失った。

「ネオン...お前の気持ちもよくわかる...だけど...仕方なかったんだ...」

クロティスの目にも涙が浮かんでいた。

「クロティス...あんまり自分を責めないでよ...こっちまで辛くなってくるから。」

レイが誰かの前でここまで不安げな表情を現したのは珍しい。それほど、ルナという仲間を失うことが大きかったのだ。

クロティスは三人の元から離れた。ネオンが目覚めたのは朝だったが、外はもう日が沈み始める時間になっていた。

「...どうか生きててくれ...」

祈りが届くことは決して無い。けれども、今はもうそうするしか無いのだ。


「目の前が暗くなっていく中で、みんな気づいていなかったけど...ルナちゃんが...なにかに苦しんでいるような...そんな表情をしてた...その後のことも気づいてた。フルーフの中に...入っていってしまったこと...クロティスが平然としているけど、ルナちゃんの攻撃で重傷だってことも...」

ネオンが目を覚ましてから外へ行ってしまい...フレイはレイと二人で部屋にいた。ネオンの前で言ってもよかったかもしれないが、仲間を失って心身ともにボロボロなネオンに対しての、気遣いだった。

「そうか...原因はもしかしたら......ありがとうフレイ...少しだけ違和感が無くなったような気がする...」

レイがそう言うと、フレイは体を起こした。

「...クロティスのもとへ連れてって...一番傷ついているのはクロティスだから...」

「それはダメ!...フレイは一番重傷だから...今は安静に...」

レイは一瞬強い口調で言ったが、すぐになだめるように続けた。

「私が重傷なら...クロティスだって重傷よ...」

「そうだけど...」

「レイがダメって言うなら...自分で行く...」

フレイが立とうとするが、体へのダメージはまだ治っておらず...立っていることも難しい。

「フレイ!ダメだよ、寝てて。僕が行ってくるよ。」

フレイが倒れそうになったところをレイが支え、ベッドへと座らせる。

「ありが...とう...」

レイはすぐにクロティスの元へと向かった。

レイはクロティスの居場所をわかっていた。

「やっぱりここにいたんだ...」

「レイか...フレイは...?」

「...結構な傷だろうね...しばらくは動けなさそうだし。」

「しばらくは...ここで療養かもな...今動けるのは二人だけ...守るだけで精一杯になる...」

「提案があるんだ。あと伝言も。」

「提案...?」

「あの侵食はもう止められない。なら少しでも犠牲を減らすために、二人を連れて北へ逃げよう。もちろんこの国の国民も全員連れて行く。」

「...レイだけでやってくれ...俺にはできない...」

「...とりあえず今は二人が回復するのを待つよ。避難はその後で...」

クロティスはレイの方を向こうとはしなかった。

「あと...フレイの伝言だけど...推測するにクロティスの思ったとおりだよ。やっぱり、何かの原因であの子は意識を乗っ取られてる。」

「...やはり...あの侵食はニ年前から進化している...のか...」

「そうみたいだね。」

「...すまないなわざわざ伝言まで...」

「いいんだよ...とりあえず僕は戻るから。何かあったら呼んでよ。」

レイの口調は終始優しかった。しかしそれは現状がどれだけ深刻なものであるかを示唆していた。

「そうだ...ネオンがどこにいるか知っているかい?」

「フレイと一緒じゃないのか...?」

「クロティスが行った後、ネオンもどこかに行ったみたいで...」

「...あいつ...寝とけって言ったのに...」

クロティスはそう言ってすぐに走ってどこかへ行った。レイはその場に座った。

「はぁ...君たちはなんでそんなに...いや良いことなのかもしれないけど...」

レイが一人でつぶやいていると、後ろから聞こえるはずのない声が聞こえた。

「似た者同士ってことでしょ...」

後ろに立っていたのはフレイだった。

「フレイ...安静にしておかないと...」

「大丈夫...一人で動けるよ...」

フレイはレイの隣に座った。本来は動けなくなるほどの痛みであるのに、フレイは平然としていた。

レイは心配するが、フレイは気にせず、続けて話した。

「行ったんでしょ...? ネオンちゃんのところに。」

「うん...」

「いっつも喧嘩してるけど...結局クロティスは心配なんだよ...ネオンちゃんのこと、妹みたいに思ってるから...」

「...」

レイはただ聞いていた。なにか言うこともなく、うなずくこともなく、ただ、ただ耳を傾けていた。

「クロティスは意外と短気なのに...ネオンちゃんの前では滅多に怒らない....よほど大事にしてるんだよ...」

「二年前の...あのときからじゃないかな。」

「二年前?」

レイはフレイにある話をした。

「フレイと会う前かな...ネオンがまだ一人前になっていなかった時があったんだ。旅のはじめのほんの少しだけどね。ネオンって昔は勝手にいなくなるぐらい活発だったから....あのときは大変だったなぁ...」

「確かに...前はもっと明るくて楽しそうだった...今はすこしだけそれが抜けて...冷静さがついてるかな。」

「心に深く残ったんだろうね...」

少し含みを持たせた言葉でレイは話を終わり、立ち上がった。

「怪我もまだ治ってないし、戻ろっか」

「う、うん」

フレイは少し戸惑いながらも立ち上がった。

レイはフレイをそっと支えながら戻った。いつもマイペースなレイでもフレイのこととなると心配になるみたいだ。


フレイがレイのもとへ来たタイミングとちょうど同じ頃、クロティスが足を止めた。目の前には地面に横たわるネオンがいた。クロティスの顔には焦りが見えていた。

「ネオン!」

クロティスが急いで駆け寄ると、ネオンは眠っていた。とても幸せそうに。クロティスが初めて見た寝顔だった。

「大丈夫そうだな....」

ネオンの寝顔を眺めつつ、クロティスは横に座った。ネオンが起きるまで、ずっと、待ち続けた。

何時間も待って、待ち続けて。日が沈み始めたころ...

「ん...えっ!?クロティス!?」

ネオンが飛び起きる。目が覚めて自分のすぐ横にケンカしたはずの人間がいるのだから、無理もない。

「お、起きた?」

「なんでここにいるの!?」

「どうせここにいると思ったら本当にいたから」

「意味がわからないよ...」

困惑したネオンをよそ目にクロティスは崖の端へと歩いていく。

「夜が近いな...」

「....(気まずい...)」

2人の間に少しの間、静寂が訪れる。

「....帰るか、ネオン。」

「.....うん。」

結局2人は街の方へと歩いていった。

日が落ちるほんの少し前に、ネオンはもとの部屋へと戻ってきた。

ベッドの上に座り、レイと話すフレイ。

少し気まずくて、部屋に入る勇気が出ない。

なにしろ皆の前で怒って飛び出していったのだから。

部屋の前で座り込んで、中には入らず、ずっと待っていた。

クロティスはその場にいない。

「どうしよう…」

その場でネオンが呟く。

とても小さな声だったけれど、部屋の中に聞こえるには十分だったらしい。

「ネーオンちゃん♪」

レイが気づき、ネオンにバレないように扉を開けて名前を呼んだ。

「うわぁっ!?」

「驚いた?」

「うん...ていうか!ちゃん付けやめてよ!」

「ごめんごめん。」

「今度からはやめてよ...恥ずかしいから...」

「わかったわかった、とりあえず入りなよ。」

レイに促され、そのまま部屋へと入る。

「ネオン...ちゃん....」

「フレイ...その...怪我は大丈夫?」

「うん、だいぶ良くなった。」

「よ、よかった...安静にしてね...」

「なんでそんな気まずそうにしてるの?」

「...だって...さっきのこと...あるし...」

ネオンはとても気まずそうにしているが、そんなことも気にせずフレイは優しく語りかける。

「私たちが、レイが説明しなかったのが悪いんだから、気にしてないよ。」

「なんで僕のせいになってるんだ...」

「事実でしょ?」

「はい...」

流れ弾を受けたレイが小さくなる。

「あの...その...ごめんなさい。」

謝るネオンに二人が同時に返す。

「謝らなくてもいいよ、悪いのはネオンじゃない。」

「そう、ネオンが謝ることじゃない。」

「まぁ話すことはいろいろあるけど...」

「とりあえず...」

「「おかえり」」

ネオンは表情を変え、笑顔で言った。

「ただいま。」


一度崩れた関係は直すことはできない。しかし、共通した想いがあれば、崩れた関係は再構築される。

「ルーシャを助けたい」

その想いが皆の心を一つに繋ぎ止めた。


「ところで、クロティスは?」

「途中で街に寄ってから帰るって別れたから...どうだろう、わかんない。」

そう、この場にクロティスはいない。気まずい状態のまま別れたので、この部屋での気まずい雰囲気をなくすことができても、クロティスとネオンの間の関係は修復されていない。つまりどういうことか。

「ただいま、ってネオンもいたのか。」

「あっ、クロティス...おかえり...」

「先に帰ってたんだな。」

「うん...(気まずい...)」

こうなるということ。ただ、フレイとレイがいる。だからこそ関係の修復は容易だった。

「とりあえず、僕が説明するよ。いろいろとね。そこの2人なんか気まずそうだし...」

レイがプレイから聞いたこと。これからどうするか。そしてすれ違いがあったこと。すべてを話した。すべてを聞いたあとのネオンは申し訳なさそうな顔をして言った。

「私が勝手に勘違いして....迷惑かけて...」

「後悔先立たず」

クロティスがネオンの言葉を遮った。そしてクロティスが続ける。

「たしかにネオンが思い込みで突っ走ったのも、怒ったのも正しくはなかったかもしれない。けど、説明をしていなかった俺等も悪い。説明することでネオンに辛い思いをさせるかもしれないと思った、そしてそれだけを考えて、別の場合を想定していなかった。」

「クロティスがいろいろ言ってるけど、結局...僕らは....自分勝手なんだよ。自分が考えたことがすべてだと信じて、行動してしまう。良くも悪くも、自分中心なんだよ。」

「レイなのに良いこといってる...まさか...」

「あの、フレイさん?偽物じゃないですよ?」

「ふふっ」

レイとフレイが話している中で、ネオンが笑う。

心の底から幸せそうな、嬉しそうな笑顔を見せていた。

「なんだ、元気じゃないか。落ち込んでると思ったのに。」

「ちょっと...面白くて...フフ」

「お楽しみのところ悪いけど、時間はあんまり残されてないんだから、レイの提案をどうするか決めないと。」

フレイの一言で皆が少しだけ真剣な表情になる。

「少しまじめにやらなきゃね...僕の提案についてもう一度説明しよう。」

レイの提案、すべての人々を救う計画。

まず、フレイ王国の国民を連れ、北側のシュメルツ王国へと避難する。

そのうえで、精鋭の騎士団と彼ら4人のみを王国に残し、避難が終わるまで待機する。状況を見ながら、西側のヘルツ王国へと向かい現状の確認と、その北側のメル王国まで向かう準備をする。場合によってはヘルツ王国から侵食の核心地域であるルナ王国へと向かう必要もあるかもしれない。レイが考えた計画はいわば一か八か。ギャンブルのように想定から外れれば最悪のパターンになる。

「一応覚悟して欲しい。ヘルツ王国の状態が最悪であった場合、犠牲が出ないとは断言できない。ルーシャがどこにいるか分からない以上、危険はつきものだろう。」

「問題ない。何かあればすべて俺が責任を請け負う。」

「抱え込みはだめって言ってるでしょう。皆で対応すればいいだけよ。ここには世界最高の戦闘者が集まっているのだから。」

「確かにな。」

「そうだね。」

「それ言ってて恥ずかしくならないの?」

レイだけは空気が読めないようだ。

「事実よ。」

「それはそうだね。」

話は一度一段落ついた。外はもう夜が更け、人が動いていた通りも暗くなり始めていた。

「あとは明日以降どうにかしよう。今日はもう寝よう。」

「じゃ、おつかれ〜」

「また明日。」

「おやすみなさ〜い」

レイとクロティスか自分の部屋へと戻り、ネオンとフレイの部屋は暗くなって、月の光のみが部屋をほんの少し明るくした。

「ネオンちゃん。一つだけ聞いてもいい?」

「うん。」

「ネオンちゃんってさ、クロティスのこと、好きでしよ。」

「へっ?なんで?なんでわかるの?....あっ」

「わかるよ。ネオンちゃんがクロティスとの間で気まずそうにしているとき、ほんの少し緊張しているから。気まずさとは違う、恋情から来る緊張だよ。」

「うぅ...誰にも言わないようにしてたのに....」

「でもなんで、告白しないのよ。クロティスなんてネオンちゃんのこととても大切にしてるのに。」

フレイの問いにネオンがゆっくり答えた。

「約束したんだ。」


話は少し前に遡る。ちょうど侵食_フルーフが動き始めて、ネオンがルナ王国へ行った時。

「ルーちゃん、もしかして、クロティスのこと好きなの?」

「ふえっ!?そ、そ、そんなことないです!!」

「ありゃあ...これは図星だねぇ...」

「からかわないでくださいよ!恥ずかしいんですから...」

「いいじゃん。私もクロティスのこと大好きだし。」

「それは、仲間としてのですか?それとも...?」

ネオンが顔を赤らめる。ネオンも図星だったようだ。

「そうでしたら私たち、ライバルですね!」

「いやぁ、ルーちゃんに譲るよ。私は今の関係が一番幸せだから。」

「う、わかりました。」


ネオンはルナと約束していた。今の関係が壊れないように。そしてルナが幸せになるように。

「ルーちゃんはいつも優しかった。だから私なんかより絶対いいと思った。今はもう生きているかも分からない。けれど、生きているかもしれないという可能性がある限り、私はこの約束を守りたい。」

「なるほどねぇ...(自分よりも友を優先したってわけかぁ...きっと今の関係がいいっていうのもネオンちゃんなりの気遣いなんだろうね。)」

「それでルナちゃんが帰ってきたらあなたはどうするつもり?」

.フレイが少し待ったが、返答は返ってこなかった。

なぜなら、一瞬の間にネオンは眠りについてしまったから。

「寝るの早いねぇ...違うようてとっても似ている...面白い3人だよねぇ。」

天井を見つめながらそうつぶやく。

その後、少し経ってフレイも眠りについた。

平和な夜がゆっくりと更けていった。

いつまでこの平和が続くのだろうか....

久しぶりです。新しい生活楽しいです。大変だけど。

パソコンが返ってきたので今までよりも頑張って活動したいと想います。よろしく。

追記:投稿で少しミスりまして、再投稿いたしました。

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