5.新パーティー結成
ネオーナが朝起きると、隣にクロティスはおらず、ネオーナは驚きを隠せない。
しかし、ネオーナはすぐにクロティスを追いかけることを決め、王国を発つ。
途中、クロティスがゆっくりと進んでいたおかげで合流することに成功し、
クロティス、レイ、ネオーナの元の仲間たちのうちの3人と新しくルナを加えた4人のチームが
冒険する。
一方、ヘルツ王国はついに侵食の影響を受けて...
「うーん...クロティス...?起きてる〜?あれ、クロティス?どこ?」
ネオンは朝早くから、クロティスがいないことに驚き、ルナの部屋へと向かう。
コンコンコン
「どうしたんだい?」
部屋から出てきたのはルナではなくその父の国王だった。
「朝起きたんですけど、クロティスがいなくて...」
「クロティスなら、もう出発したよ。」
「え‼?」
ネオンがびっくりすると、奥からルナが出てくる。
「ネオンちゃん、怪我してるでしょ?だからクロティスが無理させたくないって言って、先に行ったのよ。」
「確かに、今の私は歩けないし...足手まといになるだけかも...そっか。ごめんなさいわざわざ朝から。」
「いいんだよ。今はゆっくり休みなさい。」
ネオンは悲しそうに部屋へと戻っていった。
一人部屋に残されたネオンはベッドに入ると、自然と涙が流れた。クロティスと長く旅をしてきたのに、怪我をして取り残されてしまったことが悔しいのだ。それからネオンは声を出さずにずっと涙を流し続けていた。
すると、部屋にルナがやってきた。
「ネオンちゃん...?起きてる...?」
ネオンはルナの今の気持ちを気にして、涙をふいてからルナの方を向いた。
「起きてるよ。どうしたの?」
ネオンが反応するとルナは部屋に入って、ネオンの前に座った。
「ネオンちゃん、今つらいでしょ?怪我じゃなくて心が。」
ネオンは平生を装い、答えた。
「別につらくないよ。私がついていったところで足手まといになるのはわかってたことだし。」
「ネオンちゃん、正直に答えて良いんだよ。」
「...つらいよ。ずっといっしょに冒険してたから。でも、ルーちゃんのほうがもっとつらいでしょ...?私はただ置いてかれただけ、ルーちゃんは故郷を失ったんだから。」
ネオンが本心とともに、ルナへの心配を伝える。ただ、ルナが返した言葉はとても前向きな言葉だった。
「私はつらくないよ。いつかはわからないけど、きっとクロティス様はあの侵食を止めてくれる。そうすれば、王国だって戻って来る。私はだからこそ、クロティス様や、ネオンちゃんを信頼してる。」
「ルーちゃん...」
ネオンはルナの優しい言葉につい、泣いてしまった。少しの間、ネオンは泣いていたが、すぐに涙を拭いてルナに話をした。
「ルーちゃん、私行くよ。足だって痛いけど、まったく歩けないわけじゃない。それにクロティスのほうが疲れているだろうから。私が頑張らなきゃ。」
「ネオンちゃん...それなら、私も行く。まだ返さなきゃいけない恩がいっぱいあるから。」
「行くと決めたら早く行かないと、クロティスがどんどん先に行っちゃう!」
ネオンが急ぐのとは逆にクロティスはレイとゆっくり歩いていた。
「あー、なんか寒い。どっかで噂でもされてるのかな...」
「大丈夫?ネオンにでも噂されてるんじゃない?」
「まぁ、あり得るな。何も言わずに置いてきたし...本当は連れていきたいんだが、ネオンの体調が一番大事だからな...」
クロティスはネオンの心配をするが、ネオンは怪我を気にせず、クロティスを追いかけるために準備していた。
コンコンコン(ノックする音)
「すまない、すこしいいか。」
部屋にやってきたのはヘルツ国王だった。
「どうしたんですか?」
「話を盗み聞きしてしまってな、クロティスを追いかけるんだろう?」
「はい。足が動きそうなので。」
「なら、話が早い。馬を貸そう。そのかわりといってはなんだが、クロティスに伝言を伝えてほしい。」
「伝言...?」
「いつまた侵食が来るかはわからないらしいからな。我々は残り数日間で北のメル王国まで移動する。だから、もし東のフレイ王国へ行くのなら、そのままメル王国へと向かってほしいと伝えてくれ。」
「わかった。伝えるよ。馬ってそのままメル王国まで連れていけば良い?」
「ああ。自由に使ってくれて良い。」
「はーい。」
ネオンとルナはクロティスが出発してから約2時間たって、馬二匹に乗って王国を発った。
そのころクロティスとレイは遥か遠くにいた。
「やはり大陸を横断するってのは長い道のりだな。」
「私は普段から色んな場所へ行ってるが、クロティスは二年ぶりだからね。しょうがないんじゃない?」
「そうかもな〜。体力がなくなったわ。」
二人がゆっくりと歩いている。二人が残り半分というところまで差し掛かったところで、遠くに走っている何かが見える。
「あれ、なんだ?見る限り、馬か何かか?」
「もしかすると盗賊かもしれんな。気をつけるとしよう。」
クロティスとレイが警戒しながら歩いていると、遠くから声がする。はっきりとは聞き取れず、二人の警戒心はもっと強まる。しかし、近づくにつれて声がはっきり聞き取れるようになると、二人の警戒心は解けた。その馬はネオンとルナの馬だったのだ。
「クロティス様ー!」
「クロティスー!」
二人の呼ぶ声が聞こえて、クロティスはネオンが来たことに驚き、レイはネオンと知らない誰かが来たことに困惑していた。
「ネオン!?」
「クロティス!なんで置いていったの?!私、ついていくって言ったのに。私の怪我なんてどうでもいいよ!二度と離れたりしないから!」
「ネオン...怪我は大丈夫なのか?」
「まだ痛いけど、昨日よりは全然痛くない!」
「そういえば、ネオンちゃんは獣人だから、治癒能力が高いのかもしれませんね。ところでその方、誰ですか?」
ルナとレイは初対面であったため、ルナはレイのことを知らなかった。
「あ、はじめまして。」
「はじめまして。」
二人はなんとも気まずい感じだったが、ネオンとクロティスがそれぞれ説明をした。
「ルーちゃん、この人はレイって言ってね、昔仲間だったんだけど、弓矢の達人なの。」
「レイ、こいつはルーシャ。ルナ王国の王女だ。」
それぞれの説明にそれぞれが納得したようで、反応する。
「なるほど。よろしくなルーシャ。」
「こちらこそよろしくお願いします、レイ様」
「レイでいいよ。僕は壁は作りたくないから。」
「わかりました。レイくんって呼びますね!」
「オッケー。」
四人になって、少し騒がしくなったようだが、平和である。
四人は話しながら、東のフレイ王国へと向かう。
道中で、クロティスはネオンとルナに、侵食の詳しい情報と、2つの王国の話を共有した。
「さっきレイには伝えたんだが、二人にはまだ言ってなかったことがあった。ネオンは気づいていたと思うが、侵食は新たな能力を持ってる。おそらく、地下の一定の深さで侵食を進めて行く能力だ。」
「あれって、空気かなにかから地面に侵食が移ったんじゃないの?」
「そう考えると、矛盾することがあるんだ。大陸の南側はつねに西風が吹いてる。だから、空気によるものなら、侵食が始まったときから、少なからず東へ向かうはずなんだ。でも、侵食はどんどん西へと進んできて、今はたぶん北へと向かってる。だから、たぶん侵食は風の影響を受けてない。」
「でも、地下に侵食が広がっているっていう証拠はあるの?それを突き止めないと、結局わからずじまいになっちゃうよ?」
「ある。確定とまではいかないが。ネオンが怪我をした時、あのとき、侵食が道の両サイドで広がっていってた。詳しくそれを見ていたら、侵食が地面から明らかに私とネオンを囲むように広がっていったんだ。だからおそらく侵食は生物を認識している。それが人間かはわからないが。そしてそれを攻撃するために、地下から急に侵食を起こすんだと思う。」
「な、なるほど?半分くらいわかんなかったような気もするけど、とりあえず侵食の進み方がやばいのはわかった。」
ネオンにはすこし難しかったらしい。そこにレイが口を挟む。
「一つだけ聞いてもいいか?」
「いいけど、どうしたの?」
「なんで、俺ら急いで歩いてるんだ?」
「馬の速度に合わせるためだな。」
「なんか少しずつ早くなってる気がするんだが...」
クロティスとレイは女子二人から地味に嫌がらせを受けていた。ネオンに至っては笑いながら、速度を上げる始末だ...
「ネオ〜ン?速度上げてるよな?明らかに上がってるよな?」
「上がってないよ〜!」
そんなこんなで日が落ち始める時間になると、四人はすでに遠くにフレイ王国が見える場所まで来ていた。
「あともうちょっとなのに〜もう夜になっちゃうよ〜」
「クロティスは今日は焚き火でもしたらどうだい?」
「いいな、すこし疲れを癒やすのも大事だろう。」
四人は寝るためのスペースを確保したあと、木を集めて火を起こした。
パチパチパチ...木が燃える音が四人をリラックスさせる。
「やっぱ焚き火っていいね〜」
「心が癒やされます!」
「疲れが溜まってる時にはちょうどいいな。」
「僕は毎日やってるからあんまり何も感じないかも。でも複数人で一緒にってのは久しぶりだね。」
「さて...一応伝えておくことがある。」
クロティスが話を切り出す。
「もうちょっと早く伝えておくべきだったかもしれないが、まあ今でも十分間に合うことだ。」
クロティスは全員を驚かせる一言を発する。
「私は再びチームで侵食を討伐する。」
「「えぇ!?」」
レイとネオンが同時に驚きの声を発する。ルナは驚いてはいたが、心配そうであった。
「あの侵食を討伐だなんて...できるんですか?」
「おそらく、前回と同じように討伐すれば問題ないはずだ。」
「ちょっとまって!クロティス、てことはフレイ王国に行く目的って...」
「もちろん、騎士を探しに行くんだ。あとは山を越えて、故郷の王国にもいかなくちゃいけないな。」
「クロティス、無理だよ!前は侵食がほとんど大地の裂け目にしか広がってなかったからできたけど、今回は王国は侵食されて滅んでる!その中からどうやってあの書物を探すっていうんだよ!」
レイは強く反対した。それもそのはず。前回の侵食討伐の時、クロティスは討伐のために、王国へと戻り、そこで侵食について書かれた書物を見つけ、その書物によって討伐できた。今回はその王国が滅亡しているため、難易度は遥かに高い。また、その書物が見つからなかったら、無駄になる。レイが止めるのも無理はないのである。
「だが、これ以上方法はない。それに、侵食は今、東に移動している。それのおかげで侵食の中心は少しずつ東にずれているはずだ。だからこそ、今なら王国へ行けるはずだ。」
「確かに...それなら行けるかもしれないね。」
「やってみるしかないんじゃないですか?結局これ以上方法はないでしょう。」
「やってみることはいいが、それが成功しなければ、我々は大陸から追い出されることになるんじゃないか?」
レイの言うことは理にかなっている。侵食がこのまま勢いを止めずに侵食を続ければ、ヘルツ王国が滅亡というだけではすまず、大陸全体が滅亡する可能性が高いのである。
「とりあえず今は探しに行くしかないんじゃない?フレイを。」
「フレイ?フレイってあの王国の王様なんですか?」
クロティスとネオン以外のメンバーを知らないルナが問いかける。
「フレイは、あいつは確か...次女だったはずだ。姉が次の女王で、あいつは騎士になったんだよ。それで仲間になったんだ。」
フレイはフレイ王国の現王の二人の娘の妹の方である。フレイ王国は王様が男女関係なく立っている数少ない国家である。それにより、次期女王候補が決められた時、フレイは姉に譲り、騎士となった。最初の頃はまだまだ初心者であったが、クロティスやレイの指導によって、今はフレイ王国の騎士団を指揮する側になっているという話が、レイやクロティスには伝わっていた。
「そうなんですか...会ってみたいです!」
「ルーちゃんとフレちゃんなら、気が合うんじゃない?ちょっとPONなところとか、間違うと焦るところとか。」
「いっとくけど、ネオン。君も例外じゃないからね。」
ネオンがルナを少し煽ると、レイからカウンターが飛んでくる。
「もう困ったもんだ...ネオンとルーシャとフレイだけで行動させると、なにか間違うたびに色々起きてそうだからな。」
「それってただ悪口じゃないの...?」
「いやいや、悪口じゃない。ただ思っただけだよ。」
「悪口じゃん!一応言うけどクロティスだって例外じゃないよ!クロティスはPONではないけどすぐ人をからかうんだから!」
「それって、単純にネオンがすぐ恥ずかしがるだけなんじゃ...」
レイが小声で本音をいうが、しっかりとネオンに聞こえていた。
「うるさい!私は恥ずかしがり屋じゃないもん!」
ネオンはからかわれすぎて小学生のようになっていた。
「とりあえず...寝ましょうよ。こんな話してたら体力回復できませんよ。」
「確かにそうだね。今日はもう寝よっか。まだもうちょっとフレイ王国までかかるし、続きはそこで。」
「たしかにな。」
ルナの一声によって皆眠りについた。
夜が更けていく中、ヘルツ王国では侵食が王国へと侵入し、大惨事となっていた。
「国民の皆さんは大至急北に避難してください!落ち着いてください!」
騎士団の指示によって避難が進んでいたものの混乱によって怪我をする人が続出し、対応に追われていた。そんな中国王が国民の前に立ち、避難を促す。
「全員、落ち着いて!すぐに避難するためにまずは落ち着いて!混乱はけが人を招きます!」
国王の言葉で混乱がすぐに収まり、けが人はでなくなった。
「ユーベル。私に何かできることがあったら言ってくれ。私も手伝う。」
「私はお前の命を狙ったのに...協力してくれるなんてな。」
「確かにお前に命が狙われたが...それ以前にオレとお前は兄弟だ。頼むぞ。兄上。」
「任せろ!」
ヘルツ王国騎士団長ユーベル・ヘルツ、ヘルツ王国現国王ネーベル・ヘルツ。
この二人によってヘルツ王国は死者を出すことなく、北のメル王国へと避難が進んでいった。
途中で女子っていう単語が出てくるんですけど、ネオーナとルナって実は20歳超えてないんですね。
まあネオーナはまずまず獣人なので年齢は20歳なんだけど人間的にはまだ14歳くらいっていう。
まあ未成年を連れ回してる時点でたぶんアウトになるんですが、小説の中の世界なので許してくださいな。