4.二年ぶりの再会
王国が滅亡し、ネオーナは足に怪我を負った。クロティスはネオーナを連れてヘルツ王国へと向かう。
ヘルツ王国では歓迎され、ルナ王国の国民も無事に避難していた。
クロティスは夜になって、二人の国王のもとへと行き、話を聞いた。
結局、クロティスは次の日になって国を出るのだが、ネオーナはどうなるだろうか。
「よし、ここまで来れば大丈夫だろう。ネオン、傷の手当をしないと。」
王国を出て、少しした場所に小さな小屋があり、二人はそこへと入った。
ネオンの足は一部が青くなっていた。
「捻挫か...歩けるか?」
手当をしながらクロティスが聞くが、ネオンから反応は返ってこない。ネオンはその場で熟睡していた。どうやら恥ずかしさが限界を突破したことによって、気絶し、そのまま眠りについたらしい。
「ネオ〜ン、ネオ〜ン。」
クロティスが呼びかけるが、ネオンは目を覚まさない。
「大人しく、連れて行くか。」
長い時間がたって、ネオンが目を覚ますと周りは暗く、夜になっていた。
「あれ...?さっきはまだ日が落ちてなかったはずなんだけど...」
「うん...?ネオン...起きた?」
その声に反応したのかクロティスが目を覚ました。
「今起きたけど...ここどこ...?」
「ヘルツ王国のすこし南の場所....途中で日が暮れたからさぁ~。」
ヘルツ王国とは北の王国の正式名称である。
「ヘルツ王国っていきなり言われるとどこかわからなくなるんだけど...」
「あぁ...ごめん...忘れてたわ。北の王国ね。」
そんな会話をした後、二人は眠りについた。特にクロティスは疲労が溜まり、次の日の朝になっても起きなかった。
「クロティス~!起きて~!」
なかなか起きないので、ネオンがクロティスに耳打ちをする。
「早く起きないと...いたずらしちゃうぞっ。」
その言葉に反応して、クロティスは目を覚ました。
「あっ、起きた~!」
「起きるに決まってるよ....最初にそれ言われたとき、目覚ましたら目の前に蛇がいたんだから....」
そう、クロティスは蛇が苦手なのである。まぁそんなクロティスにいたずらをかけているネオンもネオンだが。
「次は蛇じゃなくて、とかげだったかもよ?」
「心臓に悪いからやめてくれ....」
二人は準備をして、再び北の王国へと向かう。
つい昨日通ったこともあり、昼にはもう王国へとついた。もちろん、ネオンは背負われている。
「クロティス様!」
王国にはいると、そこにはルナがいた。
「ルーシャ。大丈夫だったか?普段あんなに歩くことないだろ?」
「普段、外にいることが多いのでそこまで疲れはないです!..それよりネオンちゃんどうしたんですか?」
ルナの質問に顔を伏せていたネオンが顔をあげて答える。
「足痛めちゃった!」
「なんだ、起きてたのか。」
「今起きた。」
クロティスがそのままネオンを背負って歩いていると、楽観的なネオンと心配性なルナのやり取りが永遠に行われていた。
「ネオン、お前元気だな?」
「体は元気じゃないけど、心は元気だから!セーフ!」
「何がセーフなのかわからんわ!」
三人は結局王国の中心部へと足を運んだ。
中心部には騎士団と国王が待っていた。
「あのときの旅人か。待っていたよ。」
「わざわざお出迎えありがとうございます。というか動けるんですか?」
「ああ。なんとか少しなら動ける。」
騎士団はクロティスに関わろうとはしなかったが、国王は優しく出迎えてくれた。国王に案内されながら、三人は仲良く話し、国王同士は別に会話していた。
「国民だけじゃなく、私達も歓迎してくれるなんて、感謝するよ。」
「いえいえ、あなたからの恩を返すときが来ただけです。ただ、当たり前のことをしただけですよ。」
「いい国王だ。私が才能を見込んだ甲斐があった。」
「一ついいですか?お父様と国王様ってどんな関係なんですか?」
二人の会話にルナが首を突っ込む。
「私が20歳くらいのときかな。私は体が弱くてね、国王の座は私の弟に譲られることになっていたんだよ。私は反対したんだけどね。そうしたら国王が私をヘルツ王国の国王にするよう、私の父に掛け合ってくださったんだ。」
「いやいや、私は大したことをしていないよ。君に国王の素質があっただけだよ。」
「そんな関係だったんですね!でも、そうしたらなんで戦争がずっと続いていたんですか?」
「それは、あとで説明しよう。とりあえず部屋に案内するよ。」
ヘルツ王国国王の案内で、2つの部屋に着いた。片方はルナとルナ王国国王、もう片方はクロティスとネオンの部屋であった。
「じゃあ、今日はもう休むとしよう。」
クロティスとネオンは一緒に部屋に入ると、そこには綺麗なベッドが二つあり、内装はとても豪華だった。
二人が部屋に戻ると、外はもう真っ暗になり、月が綺麗に見える位置へ上がっていた。
「ちょうどこの部屋、ベランダあるし、一緒に月でも見ながら、どう?」
ネオンがそう言うと、クロティスは部屋からベランダへと出てきた。ネオンが先に用意しておいた紅茶を飲みながら、二人は月を眺める。
「この世界は徐々に滅び始めているのに、月はただ綺麗に光っている。月という存在が羨ましく感じるよ。」
「ふーん...変なの。疲れてるんじゃない?」
ネオンが言葉のナイフをクロティスに思いっきり投げつける。
「疲れてはいないよ。目の前に月と同じくらい綺麗な人間がいるのだから。」
「え‼?...あ、ありがとう...」
クロティスの不意打ちにネオンが恥ずかしがる。
「...もう私、先に寝るから!おやすみ!」
「...おやすみ。」
ネオンはクロティスのことも気にせず、先にベッドに入った。
「この月を見られるのもあとほんの数十回になるかもしれないな...そういえば国王は起きているだろうか...」
クロティスはネオンを起こさないよう、静かに部屋を出ていった。
コンコンコン(ノックの音)
「ヘルツ国王、起きていらっしゃいますか。」
「うん?クロティスか。どうしたんだ?」
「お話をお聞きしたくて。」
「いいぞ。とりあえず座れ。」
「お邪魔いたします。」
部屋の中に入ると、二人共起きていた。
「あれ、クロティスだったのか。」
「聞きたいことがあるらしくてな。」
クロティスが来ることを予想していたのか、部屋にはベランダ合わせて3つの椅子があった。クロティスは椅子に腰掛け、話を始めた。
「先ほど、ここに来た時に言っていた話です。なぜルナ王国とヘルツ王国は対立していたのですか?」
「なるほど、それの話か。うーん...何から話すべきか...」
「それならルナ王国の歴史から話そう。」
ヘルツ国王の代わりに、ルナ王国国王が話し始めた。
「ルナ王国の歴史書にはこう書いてある。数百年前、ルナ王国の初代国王とヘルツ王国の国王は兄弟であった、と。」
「それはヘルツ王国にも伝わっている。ただ、どちらの王国が先にあったのかは定かではないがな。」
「いや、先にあったのはヘルツ王国だよ。ルナ王国はできたのが約500年前、ヘルツ王国は約700年前と書かれているからね。」
「そうなのか。ヘルツ王国の歴史書には書かれていなかったな...ヘルツ王国の歴史書を書いたのは当時の国王だから、情報が正確じゃないんだろう。」
二人の国王が2つの国の歴史について語っている中、クロティスが本題について話す。
「私も歴史書はたくさんの王国で見たことありますが、ルナ王国という単語が出てきたことはあまりないですね。」
「クロティスはこの大陸の南西側の話をあまり知らないんじゃないか?」
「南西側に何かあるんですか?」
「この南西側は大陸の中でも戦争が終わらない場所だったんだ。その原因の一つが国家の対立だったようだね。あとは、私達の数代前は徹底的に圧政をしていたようだから、それのせいもあるだろう。」
「我がヘルツ王国もそうだが、平和になったのは最近なんだ。」
500年前はルナ王国が建国されてすぐであり、国内は比較的平和であったが、二国家での戦争は絶えなかった。その後150年が経過すると、二国家の対立は弱まった。しかし、国内の反乱が増え、現在に至る。
「クロティスだってわかるだろう。王国は国王のやり方次第で変わるんだよ。」
「確かに、私が冒険家を目指そうとしていたときも、戦争というより内乱が多かったですね。」
「確かに、あの時は一番ひどい時期だったよ。今はもう滅亡してしまったからね。二度とないだろうけど。」
「ブラックジョークにもほどがあるだろう。まあ間違ってはいないがな。」
「あはは...国王の集まりでしか言えないブラックジョークですね。」
「確かにそうだな。まあ、こんなところじゃないか。話の中で言わなかったが、未だにルナ王国とヘルツ王国が対立した理由はわかっていない。」
「でも、国王が兄弟だった時に、対立したんじゃないんですか?」
「それがわからんのだよ。詳しくはわからないけど、当時の兄弟の仲はそこまで悪くなかったらしいんだ...。」
「それなら、なおさら対立の原因はわかりませんね。」
最終的に対立の原因が解明されることはなかった。
「もう寝たらどうだ。明日にはここを発つんだろう?」
「ええ。まだやることはいっぱいありますから。」
自分の部屋に戻ろうとしていたクロティスにルナ王国国王が問いかける。
「その前に一つだけ聞いてもいいかね?」
「何についてですか?」
「君が戻ってきた時、ルナがネオンと呼んでいた子が怪我をしていたが、一体何があったんだ?」
「そのことですか。えっと全て説明すると...」
クロティスは新しく見つかった侵食の能力とそれを攻撃手段として、生物への攻撃を行っていること、なんとか逃げてきたもののネオンが怪我をしてしまったことを話した。
「明日からは東のフレイ王国まで行こうと思っていたのですが...ネオンがあの調子な以上、様子を見ながら行くしかないですね。」
「それなら、これはどうだい?」
ルナ王国国王がある提案をし、クロティスがそれに賛同する。
「わざわざありがとうございます。」
「良いんだよ。君は私を助けてくれたんだからね。」
「どうやらここには、クロティスに恩を感じているやつしかいないようだな。」
それから1時間、三人がいる部屋は話が盛り上がり、すっかり夜は明け始めていた。
「わざわざクロティスに寝たらどうだって言ったのに、結局夜が明けてしまったな。もうすこし長く休んだほうがいいかもな。」
「完全に夜が明けたら私はもう行きますよ。話を聞いて本当によかった、あとはあの侵食を止める方法を見つけるだけです。」
「本当に諦めが悪いんだな。まあ、それが何よりも信頼できる証だが。」
「そうですよ...諦めたくても、自分がそれを許してくれないんですよ...何より、王国が滅んだときから...諦めるという言葉はもう、浮かばなくなりました。」
「無理だけはするんじゃないよ。でも、やりたいことがあるなら精一杯頑張っておいで。」
二人の国王はクロティスを尊敬し、言葉をかけた。
結局、夜は明け、クロティスは特に眠ることもせず、王国を出ていった。ネオンは王国にそのまま置いていかれ、ルナが面倒を見ることになった。
クロティスが歩いていると、遠くに岩場が見えた。クロティスはそこで一度休憩することにして、座れそうな岩に腰掛けた。
「ネオンがいないと、寂しいな。騒がしいやつはいると厄介なんだが、いなくても厄介なんだよなぁ...」
結局、ネオンを置いてきたことに後悔しているクロティスである。
そんなクロティスが腰掛けて空を眺めていると、遠くから矢のようなものが飛んできた。クロティスに当たることはなく、クロティスの周りを回ってから遠くへとまた飛んでいった。クロティスはその矢を見て、すぐに矢の飛んでいった方向へと向かった。クロティスが急いで走ると、少しずつ人の影が見えてくる。クロティスは思わず、大きな声で名前を呼んだ。
「レイ!」
レイはクロティスとの再会に笑顔で応えた。
「久しぶりだなクロティス。元気だったか?」
「もちろん。あの時はレイがいてくれて本当に助かったよ!」
「たまたまヘルツ王国の周りで生活していてな、ちょうどよくクロティスが見えたから、加勢したんだ。」
「さすがレイの能力だな!」
クロティスはいつもより嬉しそうだった。レイはクロティスの仲間のうちの一人であり、クロティスが最も信頼している仲間でもある。その理由はレイの能力だ。レイは弓矢の達人でありながら、魔法とはまた違う能力である、遠い場所でも仲間を認識できる能力がある。
「この能力を使えるようにしたのはクロティスだよ。クロティスに感謝されるようなものじゃない。」
「それでも、使いこなしてるのはレイなんだから。」
しばらくそんな話が続きながら、途中でレイはクロティスについていくことになった。
「ていうか今、何してるんだ?ネオンもいなければ、冒険に行くようなことも起きてないし、命を狙われることもないだろう?」
「そうか、レイにはまだ伝えてなかったな。説明するよ。」
そうしてクロティスが持っている情報全てをレイに伝えた。レイはもちろんフルーフのことを知っているので、理解は早かった。
「なるほど、新たな能力を手に入れたか。わかった。クロティスについていこう。今日からネオンの代わりになってやるよ。」
「ありがとう!レイがいるのは心強い!遠距離戦をしてくれるのは本当に助かるよ!」
「ああ。もちろん。遠距離なら確実に命中させてやるよ。」
ネオンが怪我で離脱したものの元の仲間が合流したことによって旅は続いていく...
ふと気づいたんですね。あれ?風呂入ってなくね?と。
なので補足しておきます、入ってます!つい気になってしまったんです。
今回は5000文字超えてますね。
このような感じでどんどん投稿しますのでお待ち下さいね!1月中にたくさん書いていきますよー!