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巡り巡る呪い 真と偽の境界に立つ  作者: 雪の都
第一章 目覚めた呪い
1/8

1.大地の裂け目

世界一大きなルノフルーフ大陸。ある日大陸にて揺れが起き、その揺れは大陸全体で観測される。揺れの原因を解明すべく元冒険家クロティスが動き出す。

同時に、クロティスの住む王国は謎のなにかに呑み込まれそれによって悲劇は始まる。

いったい何が王国を呑み込んだのか、そして何故、突如としてそれは動き出したのか。

クロティスの長き冒険が再び始まる。

ある日の朝、突如として大きな縦揺れが起きる。その揺れは人々にはっきりとわかるほど大きかった。

ある王国に住むクロティスは揺れが収まった時、何かを確認するためかすぐに高台へと登った。

「やっぱりか...」

クロティスが見た大地の裂け目には大きな瘴気が渦巻いていた。それも人々の目には見えぬ特殊な瘴気だった。その瘴気は王国へと向かい始めた。

「まずい...瘴気が動き出している...」

クロティスは王国の城に戻ったが、すでに王国は半分侵食されていた。

「クロティス!」

遠くからクロティスを呼ぶ声がする。クロティスはすぐに声の正体に気づく。

「ネオン!」

そこにいたのはクロティスの元仲間だったネオンだった。

「何が起きてるの!?」

「記録によれば...フルーフが再び動き出した。」

「ならすぐに行かないと..」

ネオンが侵食された場所を進もうとすると、侵食された地面から無数の棘が生え、ネオンを攻撃する。

「ネオン!」

ネオンは上手くかわす。

「なんとか大丈夫!」

対応しきれない量の攻撃にクロティスは諦めをつける。

「今のフルーフは止められない。ルナ王国に逃げよう。」

「でもこのままじゃルナ王国にいくのは難しいよ。」

「大丈夫だ。侵食を起こしている大地の裂け目はこの王国の真南にある。ルナ王国へならまだ間に合う。」

「なら早く行かないと!」

ネオンが先に走っていく。後にクロティスは続き、二人はルナ王国へと向かった。


二人がルナ王国へと向かう途中に後ろを振り返ると、そこには侵食によって崩壊した王国が見える。

「長い間栄えていたのに...」

「最初のときもこうだったのか...」

「侵食の速度が遅くなった...」

侵食の速度が遅くなり、最初の段階が終わる。次の段階になればいつルナ王国が呑み込まれるかわからない。二人は急いでルナ王国へと向かった。

ルナ王国までは2日もかからずに到着し、侵食もあまり進んでいなかった。クロティスはルナ王国につくとすぐに次の王国へ向かう準備を進めた。

ネオンは危機が迫っていることも考えず、呑気にご飯を食べていた。二人がルナ王国で時を過ごすなか、侵食は速度を早めて迫っていた。

夜になってから二人は星を眺めていた。

「この星空も二度と見れないかもしれないね...」

「ネガティブにならないほうがいい。気が滅入るぞ。」

ネオンは少し寂しげな顔をしていた。

「いつ死ぬかわからない状態になったらそうなるよ...。」

「...でも生きることができるかもしれないだろ?」

クロティスが励まそうとするが、ネオンの表情は変わらない。

「もう寝るよ。なんか疲れた。」

ネオンが寝たことを見届け、クロティスは侵食を見る。侵食はまだまだずっと遠くにあり、速度も遅く見えた。クロティスは安心し、ネオンのところに戻った。

「俺はネオンを守りきらなければならない。それが今の一番の使命かもな。」

クロティスがそういうとネオンが寝言を喋る。

「クロティス〜。待ってよ〜。」

ネオンの寝言を聞いたクロティスは微笑んでいた。

「この笑顔は守らなくちゃな。」

二人は眠りについた。ネオンに後ろから抱きつかれて驚いて眠れなくなったクロティスは寝不足かもしれないが....

次の日、クロティスはネオンに起こされる。ネオンはとても焦っている様子だった。

「クロティス!起きて!」

「どうしたんだ?」

クロティスが眠そうにしながらもネオンに聞く。

「侵食が来るよ!」

「昨日であれだけ遠かったんだから大丈夫だよ。」

「大丈夫じゃないよ!いいから見て!」

ネオンに引っ張られ、クロティスが侵食の方を見る。クロティスの視界がはっきりとすると、クロティスは言葉を失った。さっきまで眠そうにしていた顔がすぐに焦りの表情に変わる。

「昨日の夜はまだすこし見える程度だった。ここまで早いと...少なく見積もっても2日後。長くても4日後には来る。」

「なにそれ...めちゃくちゃまずいじゃん!早く逃げなきゃ!」

「とりあえず国の真ん中にいこう。あいつならどうにかできるはずだ。」

二人は人を探すために王国中心部へと向かった。

王国中心部はとても華やかで平和で、そしてきれいな場所だった。二人は人混みのなかをかき分け、城がある場所へと向かう。城の目の前までいくと、大きな庭園の端に少女を見つける。彼女はこちらに気づくなり、走って向かってきた。

「久しぶりだなルーシャ。」

クロティスが彼女に話しかけると彼女は目を輝かせた。

「クロティス様ですよね!また会えて嬉しいです!」

彼女の名前はルナ。二人が今いるルナ王国の王女であり、そして魔法使いでもある。

「ルーちゃん!久しぶり~!」

「ネオンちゃん!」

ネオンはルナに飛びついた。

「久しぶりだね〜2年ぶりくらい?」

「うん!」

「もう2年か。早いな。」

「2年でこの国も栄えました。昔はまだ小さい国でしたから。」

ルナは嬉しそうに話した。その一方でクロティスは話を切り出すタイミングを伺っていた。

「クロティス様が最初に来たときは街が静かでしたね。」

「あのなルーシャ。話の途中ですまないが...」

「どうしたんですか?なんでも言ってください!」

クロティスの代わりにネオンが話を切り出す。

「急いで国民を避難させてほしいの。ここはもうすぐ駄目になる。」

ルーシャの表情が変わる。ルーシャから焦りが見える。

「二人して、何の冗談ですか...?こんなにも平和なのに...」

ルーシャは不安げに尋ねるが、その返答は悲しいものだった。

「嘘じゃない。この国の東にある私が住んでいた王国は既に滅んだ。急がなければ直にここも滅ぶ。」

「そんな...なんでそんなことが...」

ルーシャが泣きそうなほどに怖がる。だが、ネオンはルーシャに寄り添ってルーシャの頭にそっと手を置いた。ネオンの方が背が低いが、それでも腕を伸ばして手を置いた。

「ルーシャ、泣かないで。」

「ネオンちゃん...」

二人の状態に少し困惑気味のクロティスだが、説明を始める。

「ルーシャ。すぐに国民を避難させなければならない。そうでなければ国が滅亡する。」

「しかし、北には何百年も対立している王国がありますし、東側は侵食で行けませんし...」

「船は使えないのか?」

「あるにはありますが、限りがあります。」

「そうか....それなら..」

クロティスがルナに耳打ちする。ルナの顔がぱっと明るくなる。

「それなら行けるかもしれません!お父様に相談してみます!」

ルナは走っていった。二人はルナを見送った。

「クロティス、ルーシャに何言ったの?」

「船を作れって言っただけだよ。」

「ふーん...」

クロティスの意味ありげな笑みにネオンは怪しさを感じたが、結局分からず、ネオンは諦めた。

2人は元の丘へと戻った。外はすでに夕日によって赤く染められていた。

「今日はもう寝るね。明日からいつ大変なことになるかわかんないし...」

「そうか、おやすみ。」

クロティスのどこか余裕のある感じにネオンは怒った。

「なんでクロティスはそんな危機感がないの?いつ侵食が来るかわからないのに。」

「いつ死ぬかわからないのなら、今をゆっくり過ごせばいい。そう思わないか?」

「うーん、あんまり。」

「そうか。まあ人それぞれの考え方がある。ネオンの万全の準備を整えようとするところ、俺は好きだよ。」

「えっ...あり、がとう?」

クロティスの不意打ちにネオンが恥ずかしがる。

「まあゆっくり寝な。おやすみ。」

「うん。おやすみ...」

まだネオンは困惑しているが大人しく眠りについた。クロティスが侵食を見るとまだ、ずっと遠くにある。クロティスはすこし安心して眠った。

夜いきなりネオンが怖がるような表情で目を覚ます。

「はぁ...夢...?」

「うん...?ネオンどうかしたのか...?」

「なんでも..ない。」

「ならいいが...」

ネオンは再び眠った。クロティスはネオンが寝てからも少し焦りを感じていた。ネオン本人が気づいていない、秘密があるからだ。ネオンが急に目を覚ました時、見ているのは未来だということを。正確に言えば未来ではない。それでも未来に近しいものが見える。

「もう一度だけ...見に行こう」

ネオンを置いて、クロティスは再び侵食を見に行くと、まだまだ遠い場所にあった。

「このまま何もない日々が続けば...私は...」

クロティスが眠りについたのはそれから数時間も後のことだった。

翌日、クロティスはいつもどおりの時間になっても寝ていたが、ネオンに起こされた。

「クロティス起きて!」

「ああ..おはようネオン...」

クロティスが目をこすりながら反応すると、ネオンは焦ったような口調で言った。

「そんな呑気にしてる場合じゃないよ!」

「なんかあったのか?どっちにせよ今日はまだ急がなくていいだろう。」

クロティスは眠気が冷めていないことでまだ判断力が戻っていない。ネオンはすぐにクロティスを連れ出し、丘の上へと出る。

「どうしたんだよそんなに急いで...侵食は昨日全然進んでなかったぞ?」

「さっき見たらもうすぐそこだよ!」

クロティスの視界にはすでに王国に迫る侵食の姿があった。

「もうすぐそこまで来ている...想定を上回る速度で動いている...」

「急がないとまた犠牲が出るよ!」

「すぐにここを出よう。今ならまだ間に合う。城に行ってルナに国民を避難させるように伝えてこなくては。」

クロティスはすぐに街へと向かい、それにネオンもついていった。

街の中は侵食が迫っていることで混乱が起きていた。人混みをかき分け、城へと向かうとそこにはルナとその父である国王が話している様子があった。

「あの侵食が国民に危害を及ぼす可能性があるといえど、この混乱状態では国民が避難できるとは思えんのだ。」

「でも、クロティス様の話では避難しないと犠牲が出るかもしれないんですよ?お父様、早く決めてください!」

「わかった。ルナが言うなら私も手伝おう。ただし、そのクロティスを連れて来い。じゃないと私達だけでは難しいだろう。」

「すぐ、呼んできます!」

二人が出る前にルナは走っていってしまった。

「あっ...行っちゃったよ...どうしよう...」

ネオンが困り顔のせいでクロティスは自分の世界に入っていきそうになったが、すぐにネオンに指示を出す。

「ネオン、ルーシャのとこに行ってきてくれないか?」

「ルーシャのとこに行くって、今行っちゃったよ?」

「連れ戻してくれ。今のあいつに侵食を見せるのは少し刺激が強い。」

「オッケー。急いで追いかけてくる!」

ネオンは走ってルナを追いかけていった。クロティスは城に戻ろうとしていた国王のもとへ行こうとすると、国王はそれに気づいて、クロティスに言った。

「おーいそこの男、お前がクロティスとやらか?」

「そうですよ。」

「ルナに行っていた侵食というやつは一体何だ?」

「説明しましょう...ですが少しだけ時間をいただきますよ。」

「構わん。この国の危機なのだから国王としてこれぐらいはやらねば。」

クロティスは国王に侵食について全て話した。

「侵食は東の国の近くにある大地の裂け目に昔から封印されているなにかです。」

「なにかはわからんのか?」

「未だにわかってません。2年前に見たときにもその正体はわかりませんでした。」

「そしてその侵食とやらで被害が出たというのは?」

「東の国は侵食が発生してからおそらく1日もたたずに滅亡しました。何人生きているかもわかりませんが、おそらく私達以外は...犠牲になったでしょうね。」

「そうか...信じよう。お主は嘘をついているようには見えない。今は、お主を頼る他無い。すぐに国民を避難させたいと言ったらできるか?」

「もちろん。そのためにルーシャ...ルナに伝えておいたのですよ。」

「じゃああれはお主の策か。なかなかに面白い考えだとは思ったが。」

「時間がない以上、あれ以外は時間がかかりますからね。」

「そうか、さすがは..」

「クロティス様!」

国王が話そうとした途中でルナがクロティスへ大声を出し、呼んだ。

「クロティス様、準備終わらせときました!あとは国民を避難させるだけですが....」

「ルナ、国民の避難は私がやっておくから、そのクロティスとやってきていいぞ。」

「お父様ありがとう!私行ってきます!」

「ルーシャ先に行ってくれ。最後に話だけしておきたいんだ。」

「わかりました...」

ルナはすこし疑問に思っていたものの再びネオンと走っていった。

「それで、さっき何を言おうと?」

「いや、何もない。お主、国が滅んだとき、何を思った?」

「どうでしょうね。悲しくはありましたが、今はこの現状を変えるために精一杯です。」

「そうか。さすがはクロティス様だな。」

「クロティス様だなんて呼び方、私にはいりませんよ。所詮私も負け犬ですから。では。」

クロティスは国王に背を向け、去っていった。

「自らが愛した国が滅んでもなお、世界のために動こうとするか。私もすこし考えなければならぬな....」

一話5000文字(予定)

色々あるので...気長にお待ちください。一話目ではまだ国は二つしか出ていません。次の話は...戦闘するかもしれませんね...

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