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もう長くは生きられないので好きに行動したら、大好きな公爵令息に溺愛されました  作者: Karamimi


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第36話:ユリアは渡さない~ブラック視点~

第2回貴族裁判から、早2週間。あの後極刑が決まった3人は、爵位をはく奪、伯爵家は取り潰されることになった。


今までは刑が確定していないという事で、監獄の中でも貴族が拘留されるそれなりの部屋を与えられ、それなりの食事をしてきた様だが、刑が確定し、さらに爵位をはく奪されたという事で、薄暗くて冷たい地下牢に移されたらしい。そして刑確定の翌日、早速魔術師たちの協力の元、早速3人に魔力提供をさせた。


魔術師たちが開発した、魔力を貯める特殊な石に治癒魔法を掛けさせるという方法で、魔力を回収するらしい。もちろん、治癒魔法を掛けさせるため、あの体を引きちぎられる様な激痛に襲われるのだ。


せっかくなので、俺もその様子を見守る。


「嫌よ、どうして私が治癒魔法なんて…」


必死で抵抗するカルディア。こいつはずっと、ユリアに酷い事をしていた女。スッと剣を抜き、女のどの元に突き付ける。


「ギャーギャー騒ぐな。お前、自分の立場を分かっているのか?」


無表情で冷たく呟くと、それ以上騒ぐのを止めた。ただ、ガタガタと震えている。元伯爵も夫人も、ガタガタと震えていた。さらに


「どうかお許しください…治癒魔法だなんて非道な事を、7年もだなんて…」


泣きながら訴える伯爵。


「その非道な事を、7年もの間何の罪もないユリアにして来たお前がそれを言える立場か?さっさとこいつらの魔力を回収してくれ!」


俺の言葉を聞いた騎士団員たちが、3人を取り押さえ、魔力を吸収する石を彼らにくっ付けている。


すると、魔力を無理やり奪われているのか、元伯爵はうめき声をあげ、元夫人とカルディアは泣き叫びながらもがいている。


きっと相当苦しいのだろう。俺もユリアに治癒魔法を掛けた時、本当に痛くて苦しかった。自分が実際に体験してみて、初めてユリアが受けていた苦しみを理解する事が出来たのだ。


あいつらも少しはユリアの苦しみが分かったか!でも…この苦しみはまだ始まりだ。これから7年間、こいつらには地獄を味わってもらうからな。


無理やり魔力を奪われ、ぐったりと倒れ込んでいる3人を、騎士団員たちが乱暴に地下牢に連れて行った。


正直ザマァ見ろと思うが、あいつらが苦しんだからと言ってユリアが目覚める訳ではない。ユリアが意識を失ってから、もう1ヶ月以上も経っているのだ。未だに全く目覚める気配はない。


そんなユリアの傍にずっと寄り添っていたい、そう思っていたのだが、両親から


“元伯爵家の断罪も終わった。ブラックもそろそろ貴族学院に通いなさい。極力普段通りの生活をした方が、ブラックの心も少しは軽くなるだろう。それにユリア嬢の意識が戻り、貴族学院に通う事になった時、色々とフォローもしてあげられるだろう。ユリア嬢は貴族学院が大好きだったのだろう?”


そう言われたのだ。その為俺は今、再び貴族学院に通っている。ただ…やはりユリアのいない貴族学院は、本当につまらない。心が軽くなるどころか、どんどん俺の心は重くなっていくのだ。


今日も授業が終わると、一目散に貴族学院から帰って来た。


「ユリア、ただいま。1人にさせてごめんね。寂しかったかい?」


真っ先にユリアの元に向かうが、やはり今日も瞼を閉じたままだ。


「ユリア、いい加減目覚めてくれ。やっぱり俺は、ユリアの笑顔が好きなんだ。ユリアの笑顔を見るだけで、俺は幸せな気持ちになれる。ねえ、ユリア…」


ギュッとユリアの手を握った。柔らかくて温かい。なんだか急に眠くなってきた…


ユリアの手を握りながら、そのまま眠りについてしまったのだった。



*****

…なんだか眩しい。


ゆっくり目を覚ますと、目の前には見た事のない金色の髪を腰まで伸ばした男性がユリアの頬を撫でていたのだ。一瞬で分かった。この男、人間ではない。


「何をしているのですか?まさか、ユリアを連れに来たのでは」


俺が声を掛けると、ゆっくりこちらを振り向いた男性。瞳の色まで金色だ。無意識にユリアの手をギュッと握った。


“君は私が見えるのかい?そうか、ユリアの体には君の魔力が入っているのだったね…そうだよ、私はユリアを連れに来たんだ。彼女はこの世界で十分すぎるほど苦しんだ。もう自由にしてあげてもいい頃だろう?ユリアは連れて行くよ。彼女の魂はとても美しい。天界で私と共に、永遠に生きるのだよ。痛みも苦しみもない世界でね”


「待って下さい!確かにユリアはこの世の地獄を味わってきました。だからこそ、ユリアにはこれからこの世界で、喜びや楽しみを目いっぱい味わってほしいのです。どうかお願いします。ユリアを連れて行かないで下さい!」


必死に頭を下げた。頼む、ユリアを連れて行かないでくれ。俺はもう、ユリアのいない人生なんて考えられない。


「もし連れて行くと言うのなら、どうか俺も連れて行ってください。ユリアは俺にとって、全てです。それにユリアは本当に天界に行く事を望んでいるのですか?望んでいないのに、無理やり連れて行く事こそ、ユリアにとって辛い事なのではありませんか?」


俺の必死の訴えに考え込む男性。


“君の気持ちは理解した。それじゃあ、ユリアに聞いてみよう。ユリアがこの世界で生きる事を望むなら、彼女をこの世界に戻そう。ただし、ユリアがもうこの世界は懲り懲り、天界で暮らしたいと言うのなら、彼女を連れて行く。それでもいいかい?”


「もちろんです!」


“それでは私はこれで失礼する”


「えっ、待ってくれ…」


一瞬にして姿を消した男性。もしかして今、ユリアに気持ちを聞きに行ったのか?


再びユリアの手をギュッと握った。ユリア、どうか戻って来てくれ。俺はユリアと共にこれからを生きたんだ。どんな事があっても、君を守るから。


ユリアを手を強く握り、必死に祈り続けたのだった。

次回からユリア視点に戻ります。

よろしくお願いします。

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