6.情報収集
教会の孤児院で世話になって半年が経過した。
全くと言っていいほど、有益な情報は入手できていなかった。
ステータスを久しぶりに確認してみる。
基本的な自身の力やスタミナ、素早さなどのステータスは前と比べたら確実に数字が増えていた。
しかし、平均的な人間よりも圧倒的に強いかといえば、まだまだ同年代よりもやや強いくらいだった。
転生者生存者数:1151
転生者送り出し人数:65678
魔王:復活前
勇者認定数:0
勇者候補:1171 (残存転生者数+転生者以外で素質があるもの)
今のところはまだ魔王は復活してないようだ。転生者生存者数がかなり増えている。分母が増えたのだから、実質生まれてから1年以内ということだな。
自由時間のため、小遣い握りしめて、屋台通りにきていた。ステータス画面は開いたままにしている。
鳥揚げ屋が見える。
「おいボウズ、今から生まれたてのひな鳥揚げるからな。今は100羽いるから選べるぜ。買って食うか?」
「それじゃ、3羽頼むかな」
「そんじゃあげる前だから好きな雛を選べ」
雛を選ぶために、目視でみる。
「食わないデー」と脳内にメッセージが直接送られてくる。
なんだこれは…周りを見るが、誰かのいたずらではなさそうだ。
屋台のおじさんは火をかけて油の準備を始めている。
雛に目線を向けると、次は罵声が脳内に響く。
原因はどうやらこの雛のようだ。
面倒なので、適当に3羽取り、屋台のおじさんに渡す。
いつもこんがりジューシーな骨まで食えるフライドチキンだ。
それを食べる。
ふとステータス画面をみる。
転生者生存者数:1148
転生者送り出し人数:65678
魔王:復活前
勇者認定数:0
勇者候補:1168 (残存転生者数+転生者以外で素質があるもの)
食べた数と同じ数だけ減っている。
もう一度雛のいる箱を見ると、1羽倒れていて、残りの雛も怯えていた。
取り合えず、屋台から離れて、屋台を観察してみる。
何故か油に投入された雛の数だけ、生存者数が減少している。
まさかあれが全部転生者なのか?
というか食用の鳥に転生とかあり得るのか?
このままだと自分よりももしかしたら戦力になりえる転生者がこの町の人らにくわれてしまうのでないのかと。
「おっちゃん、生きてる雛を買いたい」
「まぁいいが、さっきから動いてないから人気のない1羽しか残ってないぞ」
「それで構わない」
取り合えず、お金を払って雛を1羽ゲットした。
取り合えず、雛に水を掛けてみる。
目が覚めてたようで、脳内にメッセージが流れてくる。
「私の友達を返せ!この人殺し」
その後もヒステリックなことを連呼してくる。どうやらこの雛のスキルのようだ。
こんなスキルを持って知性が高いとなると、転生者なのは間違いない。
クロトは頭の中で
「お前は日本人か?」
と念じてみる。
雛は驚いているような仕草をする。
「そうよ。天使様に地震で死んだ人が大部屋で集められて、友達と離れたくないなら集団転生を薦められ、
転生したら鳥だったのよ」
「なるほど」
「てっきり大きな町の住人に転生すると思ったのよ。同時期に同じ場所にたくさん転生っていたら、都市部に集団転生しかないって誰かが自信たっぷりにいってたの」
「その発言の時に天使は不在で、戻ってきたら、スキル選択して転生したんだな」
「ええ」
そこからは天使と友達を食べたクロトへの恨みが語られていく。
雛は、人間だったころはミキという名だったそうだ。
スキルは「テレパシー」、「魔法攻撃無効」、「呪い無効」だった。
ミキの恨みの言葉は止まる気配がない。
「そんなにうるさいなら置いてくぞ」
「動物愛護法違反よ。やれるもんならやってみなさい」
言われた通りに離れていくと、次は置いてくなと脳内に連呼する。
戻って拾おうとしたらば、
猫がミキを咥えて走っていく。
猫を追いかけたが、途中で脳内に
助けろ、どうにかしろという声が響き渡っていたが、ぱたりと聞こえなくなる。
やっと猫を見つけたら、雛を子猫に与えていた。
子猫がミキを必死に貪っていた。